ハイダイナミックレンジ(HDR)撮影の動画を普通のテレビで見る

話題の4Kテレビやハイダイナミックレンジ(HDR)撮影動画について紹介します。実例として国内初のHDR撮影作品となる「海に降る」を普通のハイビジョンテレビで見た感想中心に書きました。

ハイダイナミックレンジ(HDR)撮影の動画を普通のテレビで見る

日本初となるハイダイナミックレンジ(HDR)技術を使って撮影されたドラマ『海に降る』。この作品はHDR技術に加え、全編4Kで撮影されるとあって技術的にも注目を浴びていました。

実際の放送は通常のテレビ(SDR)用に現像されているのですが、普通のテレビで見てても随所に違いが見られて目を引きます。

…とはいうものの、通常画質で見ている分には誰の目にも判るような派手な演出はないし、現時点では本作がセル販売されるかどうか決まってないらしいんで忘れないうちにメモしておきます。

はじめに

これは「HDR&4Kで撮影」され、「SDR&FHD配信」されたドラマ「海に降る」を「SDR&FHD」で視聴した体験記です。

本稿で指摘している各論は、HDRや4Kや階調制御技術や機種間の性能差などがいろいろごっちゃになってるのでご注意下さい。

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ハイダイナミックレンジ(HDR)技術とは

ハイダイナミックレンジ合成(high dynamic range imaging)とは、暗がり・強光下で黒つぶれ・白飛びしがちな画像を自然な階調で表現するための映像技術です。

HDRは、動画に先駆けてスチルカメラの技術として広まりました。

スチルカメラにおけるHDR作品

ざっくり言うと、コントラストが強くて普通に撮ったら潰れそうな画像を良い感じに補正する技術です。

同じ場所をいろんな露出で撮影して合成します。アメリカの1人称シューティングに出てきそうな、ちょっとCGっぽい見た目が特徴。

high dynamic range (HDR)写真の例
正確に言うと「必ずCGっぽくなるわけじゃない」んですが、多少ゴシックホラー風にした方が好まれるようです。右下は比較的マイルドな例ですね。

動画におけるHDR作品

動画の場合、露出の異なる映像を交互に撮って合成します。仕上げ映像の倍コマ撮ってニコイチして、最終的な秒フレームに乗せる感じ。

作例はEOS 5D Mark IIによるものです。これは割とCG感ありますね。

コントラストに強い

HDR技術の一般化で、今後は室内から急に外に出るような表現が長尺で撮りやすくなるのかなって思いました。

黒潰れしない

「海に降る」では、カメラ(視聴者ビュー)が屋外にあって、室内をのぞきこんでるような表現が多々見られます。

スタジオセットならともかく、ロケだと難しい表現じゃないでしょうか。HDRならではの構図と言えそうです。

逆光に強い

あと整備場のシーン。巨大なプレハブ倉庫の奥にカメラがあって、人物が入口近くにいるという構図がしばしば見られます。

その状況でも俳優さん達の微妙な表情が自然な雰囲気で映ってるんですね。普通に撮ったら逆光でシルエットになっちゃいそう。「ごくせん」で仲間由紀恵さんが体育館にバーンって入って来るような感じを想像すれば良いと思います。

こういうシチュエーションだと「順光でいいから映ってればOK」とか「アップでどうにか」になりそうなものですけど、逆光でも引いて撮れるんですね。

この演出によって物陰から遠巻きに主人公達を見てる効果が出てます。たまたま居合わせて覗いちゃった感じがして結構ドキドキするよ。

ただ、シーンによってはISO感度上げすぎたようなザラザラ感が見えたり曇った感じになる場面もありました。これはHDRをSDRにする過程で彩度が落ちてるんだと思います。

ドラマ原作の朱野先生に伺ったところ、試写会で発表された本来のHDR映像は やはりクリアな空に見えたとのことでした。

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その他の技術

HDRとは関係ない部分で気付いた話も書いておきます。

被写界深度

まず初回放送の第一印象は「一眼で撮った動画っぽい」でした。
被写界深度が浅い写真

写真は私が撮ったものですが、これくらい極端にフォーカス変えてるシーンもあります。

登場人物二人が言い争いをするときに、奥の人から手前の人にワンカットで焦点変えたりするので焦燥感が伝わってきます。あ、焦点と焦りって同じ字ですね、何か納得。

あと私もデジカメで撮る動画が好きなんですよ。

真ん中くらいから始まるシーンの向かって左奥がぼけてるのわかるでしょうか。見せたいところだけ写せるので、ビデオ専用機とは違う使い方が出来ます。

プロの作品では、CMやPVなど短編中心に見かけます。

元データが4Kで遠くもくっきり

元が高画質なので、圧縮しても細部が非常に綺麗です。

鳥瞰する構図では地平線近くの構造物もくっきり撮れてます。空気遠近感が吹き飛ぶくらい湿度が低く見えますね。とても真夏の東京湾岸でロケしてたようには見えません。

パートカラー

モノクロのエンドロールに赤の差し色が入るのも写真っぽいなーと思った理由のひとつです。専用フィルタがあれば出来るんでしょうけど、このレトロ感は時間軸を行ったり来たりする本作の雰囲気に合ってる気がしました。

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JAMSTECが広い!

広角気味で撮ってるので実際のJAMSTEC(ロケ地)よりも広く見えるよ。(笑)

いずれにせよ「人の目で見たままの臨場感」を表現したいんだろうなって雰囲気が存分に伝わってきました。

タイトルバックとエンドロールは、合わせ技でマイケルの In The Closet と好対照かなって思ってます。

HDR&4K撮影された映像を普通のテレビで見た感想

当初「特殊技術で撮られてるって言っても、うちのテレビは普通のだしなぁ」と思ってたんですが、実際に視聴してみたら随所に違いが見られて興味深かったです。

とは言うものの、比較記事を書こうにも実際の放送のスクリーンショットを撮るわけにはいかない(放送権侵害になっちゃう)ので説明しきれないのがとても残念。

例によって間違ったこと書いてるかも知れないので、詳しくはWOWOW
本放送にてご確認下さいませ。

ちなみに本稿の目指すところはHDRのヨイショではなく、深海マニアを増やすのが目的です。(・∀・)