馬って漢字の成り立ちを見るたびに色々モヤモヤするんですけど

馬という漢字を使った馬の筆絵は年賀状などでもお馴染みですね。
もともと象形文字だから図案化の相性が良いのもわかるんですが、実際の成り立ちを見るたびにすごくモヤモヤします。

馬という漢字の成り立ち

【馬-oracle / 馬-bronze via Erin Silversmith】(PD)

古いものほど横倒しの構図だったのが、次第に本来の四つ足っぽい形に変化して現在の「馬」になっております。

…って、そもそも最初に向きを変えたの まるっと無駄だったのでは?

ところで甲骨文字は英語でOracle scriptと言うそうです

甲骨文字は亀甲獣骨文字などとも呼ばれる最古の漢字で、象形文字に近いタイプの書体ですね。亀の甲羅や骨に刻まれた状態で発見されたため その名がつきました。

「オラクル」とか「スクリプト」とか、ぱっと見ITっぽい香りが漂いますが、直訳すると「神託文字」になるとおり占いに使われた文字と考えられています。

漢字名称(東洋的な発想)だと「見た目の形状」を表現してるのに対し、西洋文化に翻訳されると「占い」って機能に注目されるのが面白いですよね。

甲骨文字は書く向きが定まってなかったらしい

初稿公開後、「甲骨文字を甲羅に書くとき上下はどうだったのか」というコメントを頂いたので調べた補足情報を追記。

動物から派生した象形文字には主に2パターンあるようです。
一つは牛や羊のように頭部の正面を捉えたタイプ、もう一つは馬や犬のように頭部を上にした全身タイプです。

正面顔はともかく、全身を写生するなら四つ足状態が自然ですよね。だから横倒しにしたのは何故なのかなと思って書いた話だったのですが、記述ルール全体についての指摘は確かに気になります。

そこで更に調べると、当時はそもそも文字の形が安定してなかった…という話を見つけました。

この時代の文字は、図(略)のように筆画(画数、筆画形)が定まっておらず、文字の向きも左右一定していない。現在の漢字が隠しもっている水平・垂直の字形構成原理もいまだ確立していなかった。これと同じように、「龍」という言葉の形像が鮮明であった当時は、文字はその形像の許容する範囲でさまざまな形をとりえた。文章の綴り方も右の行から左の行へと進んでいくだけではなく、左の行から右の行へと綴られていく縦書きも普通に行われていた。

『書と文字は面白い』 石川九楊

文字単体の鏡文字をはじめとして左から右への改行も行われていた…というのを見て色々と繋がった気がします。

不定形な骨の上に形の曖昧な字を書いたら、後から読む人が「どこからどの向きで書いてあるのか」わかりづらいですもんね。
「とにかく頭が上だから後は文脈でよろしく」…と言うのが最低限のルールだったのかも知れません。

追って記法が決まれば読む向きで悩むことはなくなりますから、本来の素直な字形に変化していったんじゃないでしょうか。
もちろん毛筆での書きやすさと言う意味で書体はカクカクしていくでしょうけど。

書と文字は面白い (新潮文庫) 石川九楊

象形文字とディスレクシア

あと、調べてる最中で見かけたサイトが興味深かったです。
甲骨文字がディスレクシアと関係があるのでは…という考察。

参考:243・「甲骨文字」とディスレクシア

ディスレクシアとは…
「難読症」や「識字障害」などと呼ばれる学習障害の一種です。
人によって程度の差はありますが、記号や文字を認識することが出来ません。
(反面、映像丸暗記や耳コピに突出した能力を持ってる人が多い。)

言われるまで気にしてませんでしたが、ちょっとこれは目ウロコでした。

文字が生まれる以前は全人類が文盲だったことを考えると
私にとって『古代文字を操っていたのは非常に識字能力の高い人』という認識でした。
ところが、ここでは『現代人から見ると当時の人はディスレクシアだ』と言っている。
だから鏡文字になったり字形が安定してないのだと。

視点をどこに据えるかで表現が違うってだけなんですけど、人類的な文化論以前に幼児が文字を獲得する過程にも落とし込めそうですよね。抽象記号を考える上で非常に示唆的な話だと思います。

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