次々お金が飲まれてく!科学技術館の「くるくるコイン」がスゴイ

募金をエンタメにする『くるくるコイン』を動画を交えてご紹介。投げ銭する行為自体を楽しむ新しい募金箱だと思いました。設置場所も載せてるので実際に確かめてみて下さい。

次々お金が飲まれてく!科学技術館の「くるくるコイン」がスゴイ

皇居に隣接する科学技術館で見かけた募金箱が、思わず散財してしまう素晴らしいエンターテインメントでした。

体験した人による動画やブログには軒並み「すごい」「楽しい」って書かれてるけど、これ物理勢から見ると宇宙っぽいアトラクションで、恐怖感すら味わえる代物じゃないかと思います。

【もくじ】
くるくるコインとは
  ‐ Spiral Wishing Well Coin Funnels
くるくるコインの見るべき物理特性
  - 最後なかなか落ちないところは人工衛星と同じ
  - 回転音の周波数が上がってる点にも注目
くるくるコインの理論としくみ
まとめ
くるくるコインの設置箇所(追記)

くるくるコインとは

くるくるコイン」とは、アメリカのDivnick International社が販売している体験型募金箱です。お金入れると美しい螺旋を描いて吸い込まれていくさまが非常にアーティスティック。

Spiral Wishing Well Coin Funnels

本家の商品名が『Spiral Wishing Well Coin Funnels』だそうで、これまた素敵な名前です。

直訳すると「コイン用の漏斗ろうと螺旋らせんの願い井戸」。

ウィッシングウェル / wishing well というのは、西洋に伝わる「コイン投げ込んだら願いが叶うと言われる井戸」のことです。神社仏閣で水場に小銭投げ込むのは世界共通認識かも。

元々どういう会社なのかと思ったら小型ボートやゴルフクラブ作ってるメーカーらしくて超納得しました。力学と体感型アトラクションって業界的に近いよね。

くるくるコインの見るべき物理特性

重力場と人工衛星
【GPB circling earth via NASA】PD

ちょっと正確な表現になってるか自信ないけど、この装置は地球の引力を使って重力場を再現してます。

ざっくり言うと、くるくるの盤面が宇宙空間で 穴が天体にあたります。

最後なかなか落ちないところは人工衛星と同じ

後半、「穴の縁でくるくる粘ってコインがなかなか落ちないところ」は「衛星が母星を回ってる」のと同じ状態です。ロケットの推進力が引力と釣り合うときの速度を「第一宇宙速度」と言いますから、さしずめこれは「第一くるくる速度」。

ノーマル状態のくるくるは宇宙から特定の重力場に捉えられた状態ですが、逆再生にすると地球から飛び出す探査衛星の雰囲気を再現できます。「第二くるくる速度によって重力を振り切った」状態ですね。

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弾道計算の話で思い出すのがトイストーリー。バズの「飛んでるんじゃない。格好良く落ちてるんだ。」ってところは彼精一杯の強がりであり栄光との決別でもあって好きなシーンです。

回転音の周波数が上がってる点にも注目

あと重力だけに目が行っちゃうともったいなくて、速度上昇に伴ってコインが出す音色まで変わってる点も要チェックです。コインが中心に近づくにつれ音が高くなってます。

「高音=周波数が高い=時間当たりの振動数が多い」なので、まさに音の変化が目に見えてると言えます。音といえば正弦波ですけど、元はと言えば円ですし。

で。可聴域から電磁波に及んで重力場の話に戻りつつ「ブラックホール怖い」ってところまでが1セットなので、興味ある人は物理勢を捕まえて解説して貰って下さい。

くるくるコインの理論としくみ

【2016/02/29:本章追記】公開当初「興味ある人は物理勢に解説して貰って下さい」ってところに「無責任だな」ってコメントついたので今さらですが追記。

くるくるコインは、位置エネルギーを長く安定的に運動エネルギーへと変換してます。早すぎれば円を飛び出してしまうし、遅ければすぐ穴に入ってしまうのですが、かなりの幅で安定的に動作させてる点が素晴らしい。コインが簡単に倒れてしまわないのは、回転することで自転車同様にジャイロ効果が生まれるからです。

次の図は y=-1/|x| というというグラフです。エネルギーは距離の二乗に反比例しているので、ひっくり返すと求心加速度が可視化される(はず)です。

y=-1/|x|のグラフ
y=-1/|x|のグラフ

このグラフを回転させると漏斗状になります。

Flamm's paraboloid
Gravity well – Wikipedia【CC-BY-SA3.0】

初稿で「穴に落ち込む直前に音が変わった」ことを指摘していますが、音そのものも非常に良く響いていることに気付くはずです。よく吸い込む形状は、よく吐き出す形状でもあるから。

マイクの配線をつなぎ替えるとスピーカーになるように、プリンタがスキャナになるように、入出力を入れ替えると成立する例はいろいろあります。管楽器なども同じような構造ですよね。音圧が安定します。

とにかく私のへたくそな説明よりメーカーの詳説を読んだ方が早いかも。特にPDFのほうは物理のかなり深いところまで突っ込んでて読み応えあります。

Spiral Wishing Wells
【PDF】INTRODUCTION TO GRAVITY-WELL MODELS OF CELESTIAL OBJECTS

まとめ

それにしても、このくるくるコイン素晴らしいです。複数枚投入してもバッティングしないし惚れ惚れするよ。

音や摩擦で逃げていくエネルギー損失のバランスと曲面の工作精度が良いのでしょう。硬貨の種類とか枚数変えてうっかり5回くらいやりました。

色々試して違いを比較したらちょっとしたレポートになるんじゃないでしょうかね。めっちゃ金が飲み込まれるけど夏休みの宿題に如何でしょう。

くるくるコイン

あと、アメリカのメーカーサイトによるとマクドナルドやウォルマートでの導入例も多いみたいで募金文化の底力を感じました。アメリカの寄付文化は決して純粋な善意でないことも多いんだけど、だからこそ社会的な透明性が高いと言えるでしょう。

おちさん別にメーカーの回し者じゃないけど、ほんと面白いんで見かけたら是非遊んでみて下さい。

くるくるコインの設置箇所

【本章追記 : 2014/08/12】ソーシャル経由のコメントで「やってみたい」って方が多数いたので、頂いたコメントなどから設置場所を書き出してみました。

今現在設置してるかどうか判らないものも含まれますが、ご参考まで!

  • 埼玉県:さいたま市宇宙劇場
  • 千葉県:柏の葉アーバンデザインセンター
  • 千葉県:航空科学博物館
  • 東京都:東京タワー
  • 神奈川県:理科ハウス(姉妹品の小さいタイプ)
  • 静岡県:道の駅富士川楽座
  • 静岡県:あわしまマリンパーク
  • 大阪府:大阪市立科学館
  • 大阪府:通天閣
  • 兵庫県:元町商店街
  • 石川県:サイエンスヒルズ
  • 熊本県:阿蘇火山博物館
  • 沖縄県:こどもの国ワンダーミュージアム

期間限定で24時間テレビのチャリティー協賛店に置いてあったというお話もありました。また、欧米だと設置場所多数のようですね。

仕組みを学びたいときは

神奈川県『はまぎんこども宇宙科学館』には同じ仕組みを使って重力圏を可視化した装置があります。ちょっとだけゲーム性があって妙に燃えるよ。

【 関連記事 】

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フィールドをもう少し広げて球でやると静止重力場でのスウィングバイっぽい感じになるます。

近所に同じものがなくても、お近くの科学館で似たような機能を持った装置を探しても良さそう。宇宙系の展示が置いてあるコーナーで

  • 角運動量保存則 / モーメント
  • スイングバイ / フライバイ

といったキーワードを中心に探してみて下さい。

おもしろ巨大募金箱 

【 更新履歴等 】

2014/08/10 初稿発表
2014/08/12 設置場所あれこれ追記
2015/03/18 設置場所に沖縄県:こどもの国ワンダーミュージアムを追加(岩海苔昆布さまより)
2016/02/29 「くるくるコインの理論としくみ」・設置場所追記
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