太陽の周りに白っぽい輪が見えたら不吉の前兆?いえいえ、それは氷と太陽が作るイリュージョンです!
この丸い虹(ハロ)が見えるようなら、他にも変わった種類の虹が出る可能性がありますよ。一日に何種類の虹が見えるのか、皆で空を見上げてみませんか?
虹とハロ・アークの違い
厳密なことを言うと、ここで言っている「虹」の多くは本当の虹ではありません。正確には氷晶による大気光象(気象光学現象、アイスハロ)などと言います。
「冬でもないのに空に氷があるの?」と思うかも知れませんが、空の高いところは真夏だろうと結構寒いです。そして氷の粒は水滴よりも形が複雑なため、光の跳ね返り方にもバラエティが生まれます。
そのバラエティが、まさにハロの多様性に繋がっているんです。
水滴によって作られる虹が「太陽を背にしてできる主虹」と「主虹の外側にうっすら見える副虹」くらいしかないのと比べて非常に対照的と言えるでしょう。
アイスハロは一日中見られることも
普通に知られている虹は、一般的に雨上がりのごくわずかな時間しか見られません。
しかしアイスハロの場合は違います。条件さえ整えば、日の出から日の入りまで、一日中ずっと観察できることさえああるんです。変わった虹を一日に何種類も見られるなんて、何だかワクワクしてきますよね!(・∀・)
巻雲が出てる時が狙い目
このアイスハロ、巻雲(けんうん)と呼ばれる薄雲が出てる時によく見られます。こんな雲が見える日は変わった虹が見られるチャンスですよ。
「えっ、こんな雲 珍しくも何ともないじゃん」と思ったあなた大正解。
短時間しか出ない日や淡いハロも数えれば、実はすごく頻繁に出てるんです。地域にもよりますが、慣れると週に複数回みられることも。(´ω`*)
太陽の回りの変わり虹いろいろ
例として、ある一日(2015年5月22日)の間に私が確認できた気象光学現象をまとめてみました。
出現条件など | |
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内暈(22度ハロ) | 太陽の周りの白い輪のうち一番目立つ白いの |
幻日 | 太陽の水平方向に見える光の塊 |
環天頂アーク | 太陽が低いとき真上に出る色つき逆さ虹(径小さめ) |
環水平アーク | 太陽が高いとき低い位置に出る水平虹(やや逆反り) |
上部ラテラルアーク | 外暈の近くにあり太陽を内側とする虹 |
下部ラテラルアーク | 外暈と環水平アークの間に出る不定形の虹 |
外接ハロ | 内暈の外側に出来る横に長い楕円虹 |
上部タンジェントアーク | 外接ハロが上下に分離した時の上側(形は色々) |
下部タンジェントアーク | 外接ハロが上下に分離した時の下側(形は色々) |
太陽柱 | 日の出・日の入りのとき太陽上部に見える光の柱 |
条件が合えば別のハロもありますけど、代表的なものはほぼ網羅できてると思います。
雨上がりの虹と雰囲気が違うことから「地震虹」などと呼ばれることもありますが、はっきり言って関係ないです。ハロは緯度や地域条件によって見えやすさが変わりますが、ハロの発生条件と地震の成因は全くメカニズムが違うので。
【 注意・訂正等 】
作図の都合で外暈も描いてますが、観察日に限って言えば見てません。
図でパリーアーク(sunvex Parry arc)としたものについて、現象としては存在するんですが観察日について言えば上部タンジェントアークが変形したものと考えた方が良さそうです。
まず内暈(ないうん・うちがさ)を探そう!
まずは入門編から。
太陽の周りに出来る虹のようなもののうち、一番ポピュラーなものを内暈(ないうん・うちがさ・22度ハロ)と言います。
ごく淡いものまで含めれば月に数度は見えているはずです。
この内暈がはっきり見えたら変わった虹を見るチャンスです。他の光学現象が見える確率が ぐんとアップしてますよ!
もし内暈しか見えてなくても、諦めずこまめに空を眺めて下さい。太陽の位置や大気の状態によって刻々と見える対象が変わってきます。
外暈もある
なお、太陽を中心として内暈の外側に倍くらいの直径の輪が見える事があります。外暈(がいうん・そとがさ・46度ハロ)と言います。しかし残念ながら今回は観察できませんでした。
太陽の左右に見える幻日
太陽からゆったりと横に視線を動かした時、局所的に明るく光ってる塊が幻日です。内暈との交点付近に見えるものが有名ですが、条件によっては左右120度(太陽を前方に観察したときの斜め後ろ)にも現れます。
幻日環
太陽と幻日を結ぶ曲線として「幻日環」が見える事もあります。
太陽が低いときに上に出る環天頂アーク
環天頂アークとは、太陽が低いところにあるとき ほぼ頭の真上に出る逆さ虹です。出るとしたら朝の早い時間、夕方、冬場など。後で紹介する「環水平アーク」と間違われやすいので注意です。
「天頂」と書く通り、ほとんど真上に出ます。半径は割と小さめ。
太陽が高いときに上に出る環水平アーク
環水平アークとは、太陽が高いところにあるとき ほぼ視界の高さに出る水平虹(やや逆さ気味)です。
出るとしたら暑い季節の昼近くが狙い目です。太陽の下方46度のところに出るので、かなり日が高いところにある時しか見えません。北海道など高緯度地域だと遭遇率が低いでしょう。
前項の「環天頂アーク」と間違われやすいので注意です。特に短い環水平アークはトリミングした写真だとそっくりなんですけど、両者は色順が違うので、区別できます。
ラテラルアーク
外暈の近くにある虹色の弧。条件によって形状が大きく変わります。
上部ラテラルアーク
ラテラルアークのうち、外暈の近くにあって虹色(分光)してたら上部ラテラルアークです。条件によって形が変わるので判定が難しいアークの一つ。
下部ラテラルアーク
外暈と環水平アークの間で虹色してたら下部ラテラルアーク。こちらも形状は条件によって様々です。
タンジェントアーク
内暈の外側かつ近傍に出来る虹色の弧。条件(太陽高度)によって楕円だったり上下に分かれたり大きく形が変わります。
外接ハロ
タンジェントアークのうち、左右に長い楕円形であるもの。
上部タンジェントアーク
タンジェントアークが上下に分割したときの上側。カモメが羽ばたくような形に左右対称で複雑な形になります。
下部タンジェントアーク
タンジェントアークが上下に分割した時の下側。太陽の高さによって複雑な形となるようですが、一般的には内暈の下部がはっきり虹色に染まってたらそこが下部タンジェントアークと考えて良さようです。飛行機に乗ってる時なら好条件で見えるかも。
太陽柱(サンピラー)
日の出や日の入りの際に、太陽の上下に延びる光の柱です。
まとめ
とにかくこの日は朝起きてから夕方まで、ずっと何かしらのハロが見えてました。もう本当にジャンジャンバリバリみたいな感じ。
…とはいうものの、ほぼ同規模の多種目ハロは2014年の10月にも観測してました。つまり珍しい現象ながらも1年に1度や2度は起きる程度の大フィーバーです。
冒頭でも書いた通り、22度ハロなら比較的頻繁に出ています。それを糸口に探せば芋づる式に見つけられるんじゃないでしょうか。
あとは、空を見るだけですね。(´ω`*)
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実はこの日たくさんハロが見られたのは、朝イチに池田さんとTwitterで「今日はいろいろ出そうですね」って話をしてたからなのでした。感謝!
いつも記事面白く拝読しております。
ちょっとスミマセン、
「太陽が高いときに上に出る環水平アーク」の項の、「環天頂アークとは、太陽が高いところにあるとき ほぼ視界の高さに出る水平虹(やや逆さ気味)」における環天頂アークとは、環水平アークの間違いでしょうか。
わ、お恥ずかしい。ご指摘ありがとうございます。(;・`д・´)