仕事の合間にちょっと外を見たら環水平アークが広がっていて、ラッキー!…と思ってカメラの絞りを調整してるうちに消えました。
空を写真に収めるのは難しいですね!
環水平アーク(かんすいへいあーく)とは
環水平アークとは、上空の氷粒に太陽光が屈折して空の低い位置にほぼ水平な逆さ虹が見える気象現象です。
虹のように見える気象現象にはたくさんの種類があって、環水平アークもその一つ。環水平弧と言うことも(ほぼ言われない…というか実際に使われてるの見たことないけど)一応あります。アークは「弧」のこと。
【”circumhorizontal arc observed in Himeji, Japan” by Takeshi Ken Mori via wikipedia CC BY-SA3.0】
普通の虹が太陽を背にして発生するのと異なり太陽と同じ向きに現れるため、知らない人が見ると「あれ?」と思うかも知れませんね。
出現条件
透明感のある晴れ空や薄曇りの日に現れます。
普通の虹 | 環水平アーク | |
---|---|---|
出現位置 | 太陽を背にした反対側 | 太陽の下方半径46度付近 |
出現条件 | 雨上がりや滝の周辺など | 中~低緯度地域の夏期 |
形 | 真円の上半分 | ほぼ水平の逆さ虹 |
色 | 上(外)が赤 | 上(内)が赤 |
出現時期は主に初夏から秋
前表の通り太陽の下方約46度に出現します。つまり太陽が46度以上まで上がる場所・時期しか観測出来ません。
東京で言うと2月下旬から10月中旬くらいが出現期となりますが、実際は地表すれすれに出てもほとんど気付かれません。事実上の観測シーズンは4月中旬~9月中旬くらいになるかと思います。
緯度や観測地の見晴らしによって見えやすさが異なるので、地域によって観測可能な時期は多少ずれます。原理上、北にいくほど観測が難しくなります(北半球の場合)。
環水平アークと間違われやすい現象
太陽光と水分によって引き起こされる虹のような現象は多数あってそれぞれに名前がついています。
環水平アークもそのひとつで、他に間違われやすい現象がいくつかあります。代表的なのは次の三つでしょうか。
内暈
太陽の周りに見える虹っぽい現象のうち、最もポピュラーなのが内暈です。
環水平アークが出るとき高い確率で内暈も出現するのが混同されやすい理由です。両者の位置関係は決まっているので一度覚えれば間違えません。
【関連記事】
太陽のまわりに丸い虹が見えたら超ラッキー!変な虹の探し方
環水平アークだけじゃなくて、変わった虹には色んな種類があります。
彩雲
環水平アークは雲が色づいて見えることから「彩雲」と呼ばれることもあります。しかしそれぞれ別個の現象です。
環水平アークはアーチの上部が赤くなる「いわゆる虹色」をしてますが、彩雲の場合ははっきりとした色の帯が出来ません。彩雲のしくみはシャボン玉や油膜が虹色に見えるのと似ています(≒薄膜による干渉縞)。
環天頂アーク
名前が似ていることから勘違いされやすいのですが、こちらも相補的な現象なので一度覚えれば間違うことはないと思います。
出現条件としては環水平アークと入れ違いの現象なので、片方が見えたら時間をおいてもう片方が見える事も多いです。
地震と環水平アークの関係
元地学徒として地震虹などというものを教科書で見た覚えはないのですが、検索するとぞろぞろ出てくるので一応書いておきます。
ちょっと珍しい気象現象があるとすぐ地震と結びつける人がいて不安症な人って多いんでしょうね。不安なら敵の正体を知ったらいいと思います。
環水平アーク、やや珍しくはありますが空好きなら年に何度か目にする現象ですし。
地震の前触れを疑う前に、過去に見た虹やアークの回数を数えてみて下さい。普段から空を見慣れてる人なら、「ここ何年も見てない」というようなことはないはずです。
第一、観測時期が著しく偏る現象に地震の前触れもないでしょう。そしたら北国はどうなるんですか。(ある意味で高緯度地域だと大地震が起こりにくいと言えなくもないのですが、それとこれとも全く別の話です。)
気象現象は漫然と暮らしてると簡単に見逃しますけど、数え切れないほど見る人は「この天気ならあの現象が出そう」という勘が働くから出会う確率が高いんです。不確かな「前触れ」ではなく「狙って」見てます。
あと「虹の出た方向が震源地」って説もあるようですが、環水平アークは太陽の真下にしか出ません。つまり北国の方はダブルで安心ですね!(白目)
環水平アークは上空の氷晶により発生する現象
【本章追記】「地震 虹」での検索流入が想像以上の多いので改めて確認させて下さい。冒頭で述べた通り環水平アークは上空の氷粒が元になっています。
地震との関連を疑う人達は環水平アークの成因を「前駆地震により地中から出るガス」としているようですが、地中から出てきそうなガスはマイナス数十度ではまず結晶構造を作りません。
もし可能だと主張するなら根拠となる物理演算結果なりなんなり拝見したいです。私自身は素人ですけど、各方面の学者さんと連絡取れますから、きちんとした形で世界に向けて発表することを強くお勧めしたいと思います。
おわりに
ちなみに、これも環水平アークが写ってます。心眼でご覧下さい。発見時はそこそこ綺麗に色がついてたんですが2分もしないうちに消えちゃいました。こんなのも含めれば、割と頻繁に見えてます。
あと、科学者の言う「関連性が全くないとは言いきれない」は一般社会で言う「そんなん関係ねーよ」とほぼ同じ語感だと思って良いと思います。
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楽しい気象観察図鑑
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【 更新履歴等 】
2014/05/20 初稿発表
2015/06/07 関連記事を追加しました
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