親族の汚部屋を掃除しなければならなくなった。
正直こっちも忙しいし勝手にやってろと思うのだが、かつて自分が使っていた部屋を汚されるのも気分が悪い。周囲もこれまで片付けるよう言っていたようだが、ガミガミ言いすぎて膠着状態になっていた。
とりあえず休日を潰して床が見えるところまでは片付いたので、後学のために記録しておきたい。
汚部屋の入り口
通された部屋の散らかりっぷりがすごい。居室につきダイニングは別にあるので食品関連のゴミが菓子の空き袋程度なのが救いだ。
とりあえず本人の片付けスキルを観察するために、雑然と積み上がった半畳くらいのエリアを掃除させてみる。服・本・ブランド紙袋・文具などがぐちゃぐちゃに折り重なっているものを一つ一つ拾い上げては逐一クローゼットに放り込み、本棚に積み上げ、紙束を適当な場所に重ね…を繰り返す。当然だがクローゼット等もそれぞれにひどい。
この作業だけでそれなりの時間を費やした結果、掃除を命じた空間には分類不能なアイテムの山が残った。「それじゃ残りは要らないものと言うことで」とゴミ袋を取り出すと、当人は「片付けられてないだけでまだ要る」と言い張る。
張り倒してやりたい衝動を抑えつつ、とりあえず転がってる段ボールの一つを「一時的な待避箱」にして分類不能なものを放り込ませる。この時点で棄てられたのは、紙くずや埃など明らかなゴミだけだ。
のっけから嫌な予感しかしない。
片付けられない人のパターン
片付けられない人には、いくつかのパターンがあると思っている。
「分別できない」は、さらにもう少し細分化される。
保存用を切り離せない
「保存用を切り離せない」とは、「現在使用中のアイテムに保存用が混ざる」という意味だ。たとえば、夏服と冬服が同列に突っ込まれたクローゼットなどがそれにあたる。
「定位置を決めろ」を忠実に守った結果、似た用途を持ちながら使用頻度が異なるアイテムであふれかえる。
近い例で言うと、買い足したボールペンをそのままペン立てに補充するパターン。使用中のペンと未使用のペンがごっちゃになって、どれを使って良いのか分からない。場合によっては全て使用中になっていることも多い。「書けないこともないが、かすれているペンばかりだ」という認識で新たなペンを買い足すため、「かすれているが書けないこともないペン」ばかりになる。
どうも「同じものでも状況に応じてステータスが変わる」「ステータスが変わったものは定位置も微妙に変わる」という部分が正しく認識できてない。
要不要が決められない
断捨離アドバイザー的な人に「煩悩は捨てろ」と諭されやすいアイテム群というのがある。「いま着てないけど高かった服」「やせたら着ようと思って買った服」「三日坊主で頓挫した教材・趣味グッズ」などなど。
「売ればそこそこの値段になるよ」などとそそのかして手放すうちはまだ良い方で、思い入れの大きさに応じて慣性が働くので難しい。
あと他人に出来るのは「そそのかし」までで、実際に棄てる判断を下すのは本人にやらせないと意味がない。勝手に決めつけて棄てたり売ったりするのは、たとえ同居家族でもNGだ。
ちなみに別件で実家に呼ばれたとき「この辺は全部要らない」と指示されたものをゴミ袋に詰めたところ、翌朝になったら全部元に戻されててブチ切れたことがある。一帯の荷物を雑に捨てようとしたわけではなく、経年劣化で明らかに使い物にならないものだけを選んだのだが、それでもダメだったので余計な手出しは無用であることを学習した。
世の中には「邪魔だ」と言いながら一切捨てるつもりがない者もいるので注意されたい。
分別奮闘記 / BUMP OF CHICKEN
いい歳した大人が夜中に聞くと泣くので注意。 |
4つ以上が数えられない
4以上が数えられないというか、4つ以上の選択肢に対応出来ない人がいる。
英語でものをグループ分けするとき、ひとつなら「one」、ふたつなら「one & another」、みっつ以上は何個だろうと「one, another & the others」とその他大勢でまとめられてしまうが、あれと同じだ。なんでも白黒はっきりつけたがる人は、状態を細分化することに耐えられない。
片付けの場合で言うと「要るものとゴミに分けて。迷ったもののうち『写真に記録したり売却できれば手放して良いもの』と、『もうしばらく保留にしておきたいもの』で分ける」などというと、理解が追いつかずに思考停止に陥る。
この感覚はゴミ捨ての際もブレーキとして働く。「ゴミには『燃やすゴミ』と『燃やさないゴミ』があり、『燃やさないゴミ』の一部は『資源ゴミ』になる。プラスチックは食品包装容器のみ○曜日、金属の場合は小型家電と電池で収集日が異なり…」などとやるとオーバーフローを起こすので、やっと捨てる決心がついても何ゴミに分類すれば良いのか分からずに溜め込む。
よくコンビニのゴミ箱に家庭ゴミを入れていく人が問題になるが、「ゴミを貯めたくない」とかいうのは表向きの言い訳に過ぎず、紙とかプラの分別を考えたくない人がそれなりに含まれるんじゃないかと思っている。
片付けチュートリアル
御託はともかく、片付けさせたい。
ジャンル別にいくつか箱を用意して、とりあえず分類させよう。最初から捨てる前提でガミガミ言うと心を閉ざすので、「捨てられないなら置いとくしかないんだから、せめて種類ごとにまとめろ」「サイズが揃えばコンパクトになるから」と言ったらそれなりにやる気を見せた。
どれに分類したらよいのか判らないものは機能的に一番近いものを選ばせる。このとき勇者を冒険に連れ出すRPGチュートリアルになった気持ちでいると心が穏やかに取り組めるのでオススメしたい。たとえ勇者リンクを導く王女ゼルダがハイラル最強の術者でも、魔王ガノンドルフはリンク自身の手でねじ伏せなければならないからだ。
「ちょっと直せば使えると思うんだけど…」などと言ってきたら、おおまかな修繕費を即答する。金額に驚いて自分で直すと言い出した場合は修繕工程の内訳を淡々と説明する。ダメ押しに「不器用な人がやると大抵ひどいことになる」と付け加えたら捨てる決心がついたようだ。
冒険を始めたばかりなのに足早に次のステージに行こうとするわがままボディには、先回りして高めの崖を配置しておいたほうがよさそうだ。
いくつか大物を捨てることにしたら気が大きくなってきたようで、「貰い物だから捨てられずにいたけど、自分では使ってなかった」などと捨て箱にポイポイ放り込むようになった。
ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド
チュートリアル大事。 |
蒐集家の場合
片付けられない性格で思い出したが、これにコレクター属性が重なると厄介だ。日用品と趣味のものが混在するので、生活空間にノイズが増える。
コレクターからの「ノイズこそ潤いだ!」という総スカンが聞こえてきそうだが、コレクター属性を糾弾するつもりはない。私自身もコレクターだからだ。しかしコレクターにおける潤いは、無関係な人間にとってノイズでしかないことは自覚しておきたい。
もっと言えば私も掃除が大嫌いだったりするのだが、自分の場合は出来るだけ完品のまま保存しておきたいタイプであることに自分自身が救われている。普段は奥にしまい込んでおいて、たまに引っ張り出しては「イヒヒ…」とか言っていればよい。
動線を分ける
その点、趣味のものを生活空間に飾りたい欲求がある人は大変だ。良くある模範解答は「飾り棚を作ってはみ出さないように管理する」なのだが、片付けられないタイプに飾り棚をあてがって成功した例を知らない。私は適切に管理できる自信がないので導入しないことにしている。
「新しいアイテムを飾るときは以前の品を片付けてからにすれば良いのに」と思っても、大抵「最初チョイ置きのつもりだったし後で片付けるつもりだった」などと言う。本人の感覚として、それぞれの使用期間に始点と終点の区切りがないのだろう。
とは言うものの、趣味スペースが生活スペースを浸食してくると様々な関係者に支障をきたす。この「関係者」に本人も含まれる場合は「どうしたら趣味空間と生活空間を切り離せるか」という視点で解決法を模索しなければならないし、自分以外の人間など知ったこっちゃない場合は、うるさい人間を切り離すか趣味部屋を別に借りるしかない。
ここまで書いてて不倫の悩み相談を受けてる気になってきたので、思うところがある人は趣味を「道ならぬ恋」に読み替えるのも一興だ。いずれにせよ日常のありがたみを噛みしめながらどちらかを選ぶか決めるのが吉だろう(何
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