かはたれ

逢魔が時の物語(実話)

かはたれ

仕事終わりに駅前をブラブラしていたら、夜道と呼ぶには少し明るい雑踏から「かわたれ」という言葉が聞こえてきた。

かはたれ

「かわたれ / かはたれ」とは、「たそがれ」と対をなす古語のこと。一般に夜明けの時間帯を意味するが、転じて明けの明星を指すこともある。

漢字で「かはたれ」は「彼は誰」、「たそがれ」は元々「誰ぞ彼」と書く。薄暗い時間帯だと、遠くの相手が知り合いかどうか判然としないこともあるだろう。

あのひとはだぁれ?

そもそも人であったか、幻だったか。逢魔が時と呼ばれるゆえんだ。

時代が下るにつれて「かはたれ」が夜明け、「たそがれ」は夕刻と言葉の使い分けが進んだが、もともと両者の間に明確な区別などなかったと聞く。日暮れ時や宵の明星に「かはたれ」が使われることもあったようだ。

かわたれ

ともあれ、闇に溶けゆく群集の中から「かわたれ」という言葉が聞こえてきた。

一番星でも見つけただろうか。雅なことだ。

木星

思わず振り返った視線の先に、焼き鳥屋で会計をするおっさんが見えた。そう、焼き鳥を手にしたおっさんが。

しかし、彼は何も悪くないのだ。

判っている。このやるせない気持ちが、私の過大な期待に起因するのだということは。(冒頭からここまで約1秒)

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