大きな災害があると「千羽鶴を送ろう!」と言う話が持ち上がるようです。
そしてGoogleで「千羽鶴」と検索すると「折り方」よりも先に「迷惑」という単語がサジェストされます。
そんな千羽鶴との縁も深い広島・原爆記念館には、重量にして毎年10トン近くの千羽鶴が送られるそうです。そしてその処分費用に年間1億円もの税金が投入されているのだとか。
一方、自然災害の爪痕を残す被災地の映像を見ると、各地から贈られたと思われる千羽鶴があちこちに映っています。
それが何を意味するのか、折り鶴が好きな一個人として自分なりに調べてみました。
千羽鶴の由来
千羽鶴がこんにち知られる形で平和の象徴として使われるようになったのは、広島が発祥だと言われています。
彼の地に生まれた少女・佐々木禎子が原爆の影響によって白血病を患い、病床で自らの健康回復を願って鶴を折り始めたのが最初だとか。
「鶴は千年」という長寿の言い伝えにならい、闘病中の禎子少女は患者仲間を募って熱心に鶴を折り続けました。その願いも叶わず、彼女は数ヶ月の闘病生活を経て12年の短い生涯を閉じたということです。
禎子の千羽鶴 |
千人力思想
禎子少女のエピソードは人々の感動を呼び、やがて健康を願って入院患者などへの贈り物として千羽鶴が作られるようになったといいます。
これは戦地へ赴く兵士に送られた千人針とも通じる思想なのかも知れません。
千人針とは、千人の女性から一針ずつ縫い目をつけてもらった布のことです。この寄せ書きのような布には女性たちによる生還への祈りが込められており、兵士の命を守るものと信じられていました。
この女性達のやりとりは戦争を題材にした作品で良く見かける光景です。
しかし千人針にしろ千羽鶴にしろ制作には莫大な手間がかかります。その手間のぶん、相手に暗黙の死期を突きつけているような気がしてなりません。
「原爆の子の像」に届く千羽鶴にかかる費用
平和記念公園の「原爆の子の像」には国内外から年間約1,000万羽、重さにして10トン以上の折り鶴が届くそうです。その焼却処分にあたって年間1億円もの公費が使われるのだとか。
広島には世界各地より平和を願う人々が折った折り鶴が送られてきます。たくさんの人々から毎年送られてくる折り鶴は年間約10トンという膨大な量です。これまで広島市は年4回一億円をかけて焼却しています。
平和を願う象徴の折り鶴が皮肉な事に結果的に環境問題としてのゴミを生み出しているという現実。
- おりづる再生プロジェクト(後述)より引用
お寺などであれば奉納費を一緒に預かる性質のものですが、それも市民公園ではなかなか難しいのでしょう。
20色グラデーションの千羽鶴 完成品メッセージカード付き
7,777円って…。Σ(´Д`;) |
千羽鶴に関する広島市の見解
大変なのは焼却費用に留まりません。どうやら元市長が千羽鶴の永久保存を訴えてたようで、任期の2002年から10年分・約100トンにも及ぶ折鶴が焼却もされず倉庫に山積みにされていました。
【PDF】折り鶴に関する広島市の取組の現状
広島市と折り鶴(2011年09月10日 朝日新聞朝刊)
広島市で被爆し、白血病で亡くなった佐々木禎子さん(当時12)をモデルにした原爆の子の像に、世界中から折り鶴が届く。秋葉忠利前市長が焼却をストップした2002年度以降、増え続けている。4月に初当選した松井一実市長は、秋葉前市長が打ち出した恒久的な保存施設は建設しない方針で、どのように扱うか検討している。
また、広島市では寄贈者の気持ちを尊重するため名前やメッセージ等を「折り鶴データベース」として記録しています。人件費も相当な額となるでしょう。
善意に端を発するとは言え、千羽鶴の存在が市政を圧迫していると言わざるを得ません。
広島市 – 折り鶴に託された思いを昇華させるための方策について(最終とりまとめ)
千羽鶴の再利用プロジェクト
秋葉氏の市長引退に伴って後続の松井氏が千羽鶴活用のアイディアを募り、授産施設による再利用プロジェクトなども立ち上がっているようです。
…とは言うものの、2011年に作られたサイトで未だに先着100名様のお試しキャンペーンが張られているあたり、とても心がざわつきます。(´・ω・`)
コンセプト | おりづる再生プロジェクト
本当に1億円なのか
【2016/04/19:本章追記】ところで、おりづる再生プロジェクトが言う「焼却費1億円」という額は本当なのでしょうか?
ここまで、送られて来る折り鶴が年間10トン前後である事は既に公式資料にて確認しています。(「折り鶴に関する広島市の取組の現状」参照のこと)
しかしお焚きあげを含む焼却費用については市の原典にあたることができませんでした。
また、10トンの紙を焼却する費用として1億円というのは少々高すぎる気もします。この額は、平成28年度事業予算における市のごみ処理事業費(特定財源・一般財源・その他合計)の1%に相当するためです。
そこで、平成28年度事業予算からそれらしい項目を拾ってみたところ、いくつか具体的な数字を得ました。
他にデータベースの管理費や人件費など、切り分けられない部分のコストもあると思います。正直なところ折り鶴にまつわる維持管理費の全容はよく判りません。しかし、少なくともかなりの額であることは確かなようです。
(この件についてはタイトルにも関わる内容なので、続報が判れば追記します。)
千羽鶴再利用の試案と市民の声
【2016/04/19:本章追記】「ソースが弱い」等のコメントありましたので追記します。本文中にも参照箇所増やしました。
うーん、広島に寄贈される折鶴が広島市政を圧迫していると言われるとなあ。平和行政は広島市政のかなめの1つと思っているので、うーん。被災地へは…は、賛同はするのだけれど。
id:koinobori さんのコメント
ご当地行政に県外から口を挟むのが筋違いなのは理解してます。ただ、寺院の写経などでは有償の専用紙を用意することで永続的な取り組みを確立してます。双方に負荷がかからないようなシステム作りは考えても良いんじゃないかと思いました。
また、市の折り鶴再生化の試案として挙げられていたのは「折り鶴を使った子ども達のモザイク画」と「再生紙づくり」です。
この「再生紙」は業者への古紙売却ではなく完全手作業による手漉き和紙です。洋紙からの再生では品質が落ちるため、牛乳パックを足していました。
…というか、写真で見る限りメインは牛乳パック繊維に見えます。折り鶴を減らす効果はほとんどないでしょう。【2016/04/20】配合比率が判りました。折り鶴5%だそうです。
平和折り鶴再生紙 厚口 A4判 50枚
収益の一部は広島市の平和貢献事業に寄付されます |
参考までに、こうした取り組みに対する市民のアンケート結果を抜粋します。(回答者は小学生から一般の男女90名、うち4割が成人女性)
寄贈者への気持ちを汲むという点で、人情に厚い土地柄であることが伝わります。
ちなみに寄せられた数ある感想の中で、運営コストに考慮した発言は1件だけでした。
膨大な量の折り鶴を限られた人と時間、場所でモザイクアートをつくるのは、大変な労力が必要であり、定期的に実施する必要はない。
支援とコスト意識
こうした前例を考えるに、地震などの自然災害で苦しむ自治体に千羽鶴を贈るべきではないのでしょう。
もちろん平和や健康を願う気持ちは貴いものです。しかし千羽鶴に関して言えば、鶴に祈りを捧げたのは他でもない禎子本人です。この事実は、千羽鶴というものを考える上で大原則としても良いのではないでしょうか。
紙代と送料と莫大な手間をかけて作った鶴が被災地の予算を食いつぶすとなると、お互い本意ではないでしょう。その分の現金を寄付した方がよほど生きた支援に繋がると思います。
あとは子ども達やお年寄りなど「被害に胸を痛めても現金を捻出しにくい人達」が、本質的に支援の輪に加われるしくみがあると良いですね。
そういう意味では、昔みたいに子ども達の手でベルマークなどを集計するんじゃダメなのかしら。協会を通じて遊具などを被災地の学校に寄付すれば良い社会勉強になると思うのですが。
【 更新履歴等 】
2016/04/18 初稿発表
2016/04/19 参照リンク増やしました。
タイトルの「処分に一億円」というのは公式のソースが見当たらないようなので、タイトルを編集するか記事自体を一度取り下げた方がよろしいのではないでしょうか。
他の記事を拝見するに真面目に記事を書かれているサイトだとお見受けしましたので、このタイトルのままなのは炎上商法のようで惜しい気がします。
あと障害者を雇用した再生事業は昨年にもきちんと行われているようです。
PDFなど参照リンクを辿りましたが、思っていた以上に広島の市政はよくやっていると感じました。
それとベルマーク運動は運営費が80%以上かかっており大変無駄な活動として有名ですので、折り鶴よりこちらを記事にしたら面白いのではないかと思います。
ご意見ありがとうございます。私も今回調べていく中で広島市の明朗な行政運営には感心しました。折り鶴関連事業と市の運営方針について一方的に批判する意図はありません。
多方面から検索すると、記事中で紹介したNPOの他にも折り鶴再生事業に多くの人が関わってると判ります。市職員の名刺に折り鶴再生紙が使われてるらしいこと、実務に当たる授産施設への補助金も計上した場合は相当額になるでしょう。
重ねて書く通り、それが悪いとは言いません。仮に市民の総意ならなおさらです。
金額については市が認可したNPOが言っている数字ですし、引き続き詳細を追っていきたいと思います。判断材料が出そろった上で誤報が確定すれば適正な表現に直します。