問「バナナってどうやって増やすの?」
答「種をまいて育てるよ!」
…とは言うものの、これは半分正解で半分間違い。一般に知られているタネなしの食用バナナには、やっぱりタネがありません。
タネがないのにどうやって育ててるかというと、株分けによって増やしてます。
それとは別に、タネありバナナも存在するのでタネまいてみました。
種なしバナナの増やし方
その前に、食用として流通しているタネなしバナナについて、かんたんにおさらいします。
生き物には、まれに三倍体といってタネや子供を作らない(作れない)個体が生まれます。バナナの断面をよく見ると中央に小さなツブツブが見られますが、これがタネの名残です。
File:Acuminata – Wikimedia Commons
タネを作らない生き物は、ふつう一代限りで死んだらおしまいなのですが、植物は長生きしやすい上にバナナの仲間だと株分けでも増やせます。あらやだラッキー。
かくて、人類はタネなしバナナを安定的に供給することが出来ることになったのでした。
タネなしバナナの特徴
本来育つはずのタネが実に入らないと言うことは果実がショボくなる気もしますが、どっこい組織が肥大化する傾向にあります。
なぜかと言うと、三倍体は生殖に栄養が取られないため。つまりタネがない上に可食部が多いです。おまけに株分けはクローン増殖にあたるので、増やした子株は親株と全く同じ性質を持ってます。
もうこれはタネなしバナナを全力で保護するっきゃない!(๑•̀ㅂ•́)و
…ということで、バナナはタネを失ったのと引き替えに、圧倒的な勢力を手に入れたのでした。人間がタネなしバナナを利用していると言うよりは、バナナが人間をこき使って仲間を増やしてる…と言い換えることが出来るかも。
生態学だとこのような状態を「栽培共生(さいばいきょうせい)」と呼んでます。
流通量が多く、スーパーなどで良く見かけるのはキャベンディッシュ種 (Cavendish)。語感が面白いので良く復唱される子です。きゃべんでぃっしゅしゅ。
タネありバナナ
そんなわけで、突然変異を「起こさなかった」ノーマルバナナにはタネがあります。しかし前述の通り、タネで増えるタイプのバナナに商業作物としての価値はほとんどありません。
…とはいえ、一部の品種については園芸マニアのために細々と流通しております。
で。取り出しましたる原種系のベルチナバナナ。(学名 Musa velutina / 別名 あけびバナナ)
小さくてタネが多いことから食用には適さないのですが、矮性でピンク色の果皮がキレイなため観葉植物として出回ってます。
バナナ アケビバナナ |
種ありバナナのタネ感
ベルチナバナナの果肉とタネがこちら。スケールを写し込むのを忘れてしまったんですが、皮を剥いた中身は成人男性の親指くらいのサイズです。
ぱっと見モンキーバナナだけど、割ってみるとタネが多くて謎の物体感が満点ですね…。
南国フルーツをタネから育てるときは、腐敗やカビに気をつけましょう。特に、タネの周りにべったりついてる果肉をキレイに落とすと成功率が上がります。(๑•̀ㅂ•́)و
種まき
種蒔き用土にとりまきしたら、暖かい室内で管理すれば十日くらいで発芽します。
果実が夏から秋に採れるので、タネをまく時期が遅れると室温が下がって芽吹くのにかなり時間がかかるでしょう。秋のお彼岸を過ぎた場合は、春を待ってからまいた方が無難です。
単子葉植物らしく、すらりと伸びた葉っぱが印象的です。
基本の育て方
バナナ苗の管理はそんなに難しくないです。暖かくなったら外に出して良く日に当てて、寒くなったら室内に取り込んで日当たりの良いところに置いておくだけ。
育ってきたら適切なサイズの鉢に植え替えてれば2~3年で開花・結実を迎えます。目立つ病害虫もありません。
大株の管理
熱帯雨林の植物ですが、大株になると東京近郊でも屋外で越冬する場合があります。耐寒性は品種によってまちまちですが、根元を腐葉土で厚く覆うなどの防寒は必要です。
ここで紹介してるベルチナバナナは耐寒性が強く育てやすいのですが、希少種は屋内に取り込みましょう。大きすぎてどうにもならないようなら室内に入る高さでバッサリ切って下さい。
バナナは根っこが本体なので、かなり大胆に胴体で切り落としてもネギみたいに復活します。
うっかり霜に当てて地上部がデロデロになってしまったときも、根元を保護して春まで待ってみて下さい。
おわりに
そんなわけでタネありバナナの育て方でした。
ちなみに、収穫したタネありバナナは食べにくいけど完熟すると食べられます。
たまに「ベルチナは食べられない」という記述を見ますけど、食べることが可能かどうかで言えば可能です。果肉そのものは普通にバナナ味で美味しいですよ。
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