植物に向かって「早く大きくなってね」などと優しく声をかけながら撫でると、早く花が咲くといわれています。
あらやだロマンチック。
声をかける方はともかく、なでる方にはそれなりの科学的根拠もありますね。
植物ホルモンによる成長の調節
植物にも成長ホルモンと呼べるような物質が複数知られています。
植物の接触刺激とエチレンの働き
例えば植物に接触刺激を与えるとエチレンという物質を放出します。このエチレンは自分自身の成長を抑制します。
わざわざ自分の成長を止めようとするなんて奇妙な行為に見えますが、「ここ壁があるから大きくなっても無駄だわ。」という判断なので実は意外と合理的だったり。つまり、植物をたくさん撫でると、育ちが悪くなります。
その一方、エチレンは花芽形成を促進する働きもします。「ここ窮屈で生育条件が悪いから、とっとと花を咲かせて種を作らんとヤバいわ。」と思うのでしょう。
本当に植物が思考してるかどうかはともかく、ナデナデすると小さな株でも花が咲きやすくなる効果が生まれます。
植物の一生とエチレン―植物界の魔法使い (東海科学選書) / 太田 保夫 |
オーキシンと側芽の促進
ちなみに、植物のナデナデには花芽が増える効果もあります。
この現象は、別の植物ホルモンであるオーキシンの働きが関係します。たくさん咲かせるには脇芽を増やさないといけませんが、そのためには頂芽に傷をつける必要があるからです。
普通は成長点を摘み取って脇芽を誘発するんですけど、ナデナデにも類似の効果があるでしょう。
植物ホルモンの働きを利用した鉢作りの実例
ミニチュアサイズなのに大木感のある盆栽や、こぼれんばかりに小花が咲き誇る花鉢は、こうした植物生理の仕組みを最大限に活用して育てられています。
もっとも小さく育てるための植物ホルモンは普通に市販されてますので、プロはそっちを使うんですが。
植物成長調整剤 ビーナイン |
植物に良い言葉をかける効果
残念ながら、きれいな言葉をかけても植物はその意味を理解しません。
世の中には「育苗中に重低音や超音波による振動を与えて生育の違いを調べる研究」というのもありますが、毎日声をかけたくらいの刺激では植物への影響はゼロと見なして良いでしょう。
…とは言えプンスカしながら世話するよりもニコニコしてた方が落ちついて作業できるでしょうから、キレイな言葉づかいを心がけたほうが良い花が咲くとは思います。
きれいな言葉をかけると、植物の育ちが良くなるんじゃなくて、人間の育ちが良くなります。ここ大事なので区別しましょう。
植物とガーデナーのデスマッチ
植木鉢いっぱいに咲いた花を見て、「本当に植物が好きなんですね」と言われることがあります。
確かに花が好きなのは事実なのですが、途切れなく花を咲かせてる状態って実は植物に強いストレスをかけてます。多少うしろめたい気持ちがあるので褒められると若干モヤモヤします。
育ててる花が結実すると血相変えて摘み取ったりしますし、子孫を残したい植物にとってガーデナーはパートナーと言うより天敵に近いんじゃないでしょうか。
生態学的に言うとイネやジャガイモと栽培者の関係は共利共生として扱うそうですが、花の場合はどうなのかなぁって思ったり思わなかったりしています。
接触刺激が重要でない植物も多い
なお、植物が花を咲かせる条件は光や温度など多岐に渡ります。接触刺激がどうのこうのと長々書いておいてアレですが、ナデナデそのものに花を咲かせる力はありません。
綺麗な花を咲かせるには、まずそれぞれの植物に適した育て方を調べるのが第一です。咲かない一番の原因は、愛情が足りないからではなく、育て方が悪いのです。
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