禅寺丸柿から「さるかに合戦」の本当の意味を読み解く

誰もが知る「さるかに合戦」は、柿の性質を知っていると不可解な点がいくつもあります。しかし禅寺丸という古い品種の柿を知ってその謎が解けました。新説「さるかに合戦」です。

禅寺丸柿から「さるかに合戦」の本当の意味を読み解く

新聞を読んでいたら、神奈川県に古くから伝わる「禅寺丸」という甘柿の話が載っていました。

2014/10/19 毎日新聞(神奈川県版)
日本最古の柿 禅寺丸
800年前にこの地(注:神奈川県川崎市)で発見され、柿生(かきお)の地名の由来になったとされる「禅寺丸柿」だ。やや小ぶりの実はタネが多く、少し食べにくいが味は絶品。

えっ…鎌倉時代に甘柿があったの!? なにそれ。ちょっと、すごくない?(⊙Д⊙)

禅寺丸柿の性質

禅寺丸柿とは、日本で最も古くから伝わる甘柿だそうです。柿は遺伝的に渋い方が優性なので、古い品種は渋柿ばかりだと思ってました

確かに禅寺丸柿について調べると、「禅寺丸柿は日本最古の甘柿」との記述が多数見つかります。1214年に発見された甘柿ということなので、今年でちょうど800周年ですね。

禅寺丸柿は高木

柿の樹高は一般に中木として扱います。だいたい6~7mくらいでしょうか。特に樹形を整えなくても、一番下に垂れ下がった実なら普通の人が手を伸ばせば収穫できると思います。

しかし禅寺丸柿の樹形はどうやらかなり高いようなのです。

禅寺丸柿の木は他の柿に比べて樹高が高く、10メートルに達する場合も少なくない。

仕立て方にもよるでしょうが、10m越えの柿となると確かに高いですね。これは登って収穫するのも大変な手間でしょう。

柿 苗 禅寺丸(ゼンジマル) 1年生 接ぎ木 苗 果樹苗木 果樹苗

禅寺丸柿の性質から「さるかに合戦」を読み直す

鎌倉時代から甘柿が存在したという事実は、柿が重要なモチーフとなってるお話の印象もかなり変わって来るのではないでしょうか。

ここで柿がモチーフになってる作品と言えば、ご存じ「さるかに合戦」です。

さるかに合戦あらすじ

物語はカニが持ってたおにぎりとサルが持ちかけた柿の種をトレードするところから始まりますね。細部は色々とバリエーションがありますけど、今回取り上げたいのはここ。

  • 柿は見上げるほど高くなったのでサルが収穫に駆けつけた
  • サルが美味しいところを食べてしまい未熟な柿をカニに投下

いままで甘柿が作出されたのは江戸期以降だという勝手な思い込みがありました。さるかに合戦に出てくる柿を禅寺丸柿だとすれば、かなり話がスッキリするのではないでしょうか。

柿の樹高とサルに手伝って貰う必然性

整枝せずに放任栽培した柿でも、垂れ下がった枝についた実ならそれほど苦もなく収穫できるのではないかということは既に述べました。

さすがに高い梢の方は無理だとしても、臼を踏み台にすればサルがいなくても少しくらいは収穫できるのではないかと思っていたわけです。しかし、そこに来て禅寺丸柿がモデルだとすると、サルの手を借りたくなるのも判ります。

「甘柿の種」=典型的な詐欺話?

そして疑問がもう一つ。

いくらカニが気の良い性格だとしても、おにぎりと柿の種と交換するなんて取引に乗るものでしょうか?

先の通り柿は渋が優勢です。種から育てた実生苗は まず間違いなく渋柿に育ちます。現在流通してる甘柿も全部接ぎ木苗ですし。

いま柿と言えば果物の印象しかありませんが、かつて柿は産業に欠かせない重要な樹種でした。果実が長期保存可能な上に、木材や塗料(渋)がさまざまな用途に用いられたからです。園芸が暮らしと切り離されてしまった現代人ならともかく、「甘柿の種など存在しない」という性質を昔の人が知らないはずはないでしょう。

「甘柿の種」というのは「ベタな詐欺話」を示す暗喩だったのではないでしょうか。

そして枝からもいだ新鮮な柿の皮をむいて「最初から甘い柿なんだよ」って試食させたらどうでしょうか? それまで「柿は渋抜きしないと食べられないもの」だと信じている人にとっては、「この種を植えたら魔法のように甘い柿が食べられる」という期待が生まれると思うのです。

猿はカニの無知につけ込んで財産を奪ったけど、カニだって欲に目がくらんでつまらない提案に乗ったのかも知れないわけです。

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さるかに合戦の別伝いろいろ

猿蟹合戦絵巻
【猿蟹合戦絵巻 / Crab and the Monkey Emaki】(PD)

今まで自分が知ってる植物としての柿と『さるかに合戦』の内容が細部で微妙に噛み合ってなかったんですけど、禅寺丸柿を知った事で理解が深まった気がします。

サルは加害者か被害者か?

ところで、さるかに合戦には「サルが熟れた実を独り占め」する話のほかに、「どの実を食べても渋くてサルが逆上する」パターンのお話もあります。

サルが独り占めする話は現代的な感覚で見ても明らかな悪者ですが、後者の場合はサルもある種の弱者と言えそうです。

ここで、さるかに合戦は「君主の圧政に苦しむ農民の反乱を示した戯画」なのだという説があります。最初に巻き上げられるおにぎりも年貢の象徴。いずれにせよサルは難癖つけてカニから搾取するという立場なのでしょう。

「カニ=柴田勝家・サル=秀吉・臼=家康」説

また、別伝として興味深いのは物語の舞台を越前とする話も見たことがあります。

カニを柴田勝家、サルを秀吉、臼を家康と読み替えると、子カニは「信長の姪にして勝家の養女である茶々」と読めるのだとか。

話の真偽は定かじゃないのですが、確かにそれぞれの関係を良くたとえている気がします。

サルを陥れる簡単な方法

でも実際のところ、柿の木を奪いに来たサルにお灸をすえたかったら「梢の実がおいしいよ」って一言かければ良かったと思うのです。

柿の木に登った事がある人なら、その恐さをご存じでしょう。子供の頃ずいぶん枝打ちやらされたけど、あんなに簡単にポキポキ折れる木そうないで。

ゴルフクラブでパーシモン(柿材)が高硬度というのを知ったとき、二度見するくらいびっくりしましたもん。

(ಠωಠ){ほんにあれ、まじ死ぬる