雑草ってどんな草?雑草の定義あれこれ

雑草の定義をさまざまな視点で集めてみました。

雑草ってどんな草?雑草の定義あれこれ

一口に雑草と片付けられてしまいがちな植物の数々。よく見れば綺麗な花、面白い生態、いろいろな植物があります。

園芸好きにもいろんなタイプがいるんですけど、雑草をどう扱ってるかって部分には割と性格が出るかも知れません。

「雑草の扱いに見る心理分析」みたいなやつ、探せばどこかにありそうですよね。←ねーよ

『雑草』を辞書でひく

まず「雑草」という言葉が一般にどんな印象で語られているか、辞書を引き比べてみました。

三省堂 大辞林

【雑草】
人間が栽培する作物や草花以外の,いろいろの草。田畑・庭園・路傍・造林地などに侵入して,よくはびこる。多数の帰化植物が含まれる。

この場合の雑草は「栽培していない草」「邪魔な草」「帰化植物(≒在来植物を駆逐する生命力を持つ)」といった感じでしょうか。

デジタル大辞泉

【雑草】

  • 自然に生えるいろいろな草。また、名も知らない雑多な草。
  • 農耕地や庭などで、栽培目的の植物以外の草。
  • 生命力・生活力が強いことのたとえ。

『名もなき雑草』とか滅多に言うもんじゃないと思ってます。

私も本当に詳しい人に比べたら足元にも及びませんが、初めて見る植物でも何の仲間かなんとなく判りますし。

日本大百科全書(ニッポニカ)

【雑草】
人が管理している土地に生え、管理対象に悪影響を与える望まれない植物、とくに草本植物を雑草とよぶ。雑草はときに野草と混同されるが、野草は原野に生えるものをいう。

野草との対比も含めて、簡潔で判りやすい表現だと思います。

百科事典マイペディア

【雑草】
耕作地や伐開地に生育する草本で,作物生産にとって無用または有害なもの。いわゆる人里植物と耕地雑草に大別できる。これらの雑草はその地に固有な種類は少なく,ふつう広い地域に分布。

確かに希少性が高い植物はあまり雑草とは呼ばれませんよね…。

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

【雑草】
もともとは利用価値がなく,田畑や庭などにはびこり,いろいろな点で人間に有害無益な一群の草をさす。しかし雑草と呼ばれるもののうちにアカザ,ハコベ,スベリヒユなどのように食べられるものもある。

一周回ってまさかの経済性を獲得。(^^;

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「雑草という草はない」

雑草の定義としては昭和天皇の発言も有名です。

雑草という草はない。どんな植物でもみな名前があって、それぞれ自分の好きな場所で生を営んでいる。人間の一方的な考え方で、これを雑草として決め付けてしまうのはいけない。
宮中侍従物語 (入江 相政)

御所の散策中、ところどころ刈り取られた夏草を見て侍従に言った言葉とされてます。元は植物学者・牧野富太郎の言葉を引いたものだとか。

これ自体は様々な個性を許容する名言だと断った上で、あえて茶々を入れると世の中に名前がついてない植物はたくさんあります。

もっとも、詳しい人が見てもサッパリ分類出来ないような植物の場合は明らかに珍しい種類という事になるので、一気に格上げされるでしょうね。

農学における雑草の役割

国語辞典での「雑草」は営利植物の生育を邪魔する存在として書かれてましたが、実際の農業との関わりはもっとずっと複雑に見えます。

植物に感染するウィルスを媒介する存在だったり、受粉を助ける昆虫のはたらきに影響を及ぼしたりするからでしょう。

昆虫や動物の生態を専門とする研究者のお話を伺うと、野草への造詣が深くてびっくりすることも多いです。

専門家が特異とするジャンルによって、ある雑草群を「生態系をになうコンパニオンプランツ」として扱う人も多分どこかにきっといる。

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「許可なく生える草」

「許可なく生える草」

出典を失念してしまったのですが、いつだったか園芸雑誌で見て「これだ!」と思いました。以来、雑草の定義としてこの表現をよく使っています。

希少種として手に入れた園芸品種が思いのほか増えてしまうことはままあって、どんなに綺麗な花でも増えすぎるとやっぱり邪魔なのです。美しいだけに抜くに抜けず、もはやモンスター状態になることも。

群れをなした植物に人間は太刀打ちできないと思ってます。倒しても倒しても先に進めない勇者にでもなった気持ちというか。

たとえ雑草と呼ばれるような植物でも、よく見れば愛着は湧くのです。綺麗だなって思います。生態を調べると大抵面白い性質を持ってます。でもそれはそれ、これはこれ。全力で対峙しないとね。

カレル・チャペックが言うように、ガーデナーにとっての雑草は天地創造を阻む強大な存在に違いありません。手間なく食べられるものは美味しく食べたらなお良いと思うけど。

雑草を覗くとき、雑草もまたこちらを覗いているのです。

園芸家12カ月 (カレル・チャペック)