痴漢や変質者に襲われて逃げる前に知っておいて欲しいこと

「護身術で応戦するより逃げるべき」について誤解があるようなので詳説します。

痴漢や変質者に襲われて逃げる前に知っておいて欲しいこと

先日、「暴漢から襲われたら逃げろ」と言う話を書きました。

すると「女子供の足で逃げ切れると思うのも妄想」「やはりジョギングが最強」「足が遅い場合はどうするのか」「対レイプ対策に有効な護身術を身につけるべき」といったコメントを多数受け取りました。

各人の能力や状況に応じて対策を練ってほしいという意味で『逃げろ』と書いたのですが、思いのほか「走る」ことにフォーカスされてしまったようなので思うところを書いておきます。

走って逃げるのも最後の手段

実際問題として、女の足でまともに男をまくのは難しいです。身もフタもないけど事実です。

私のスポーツ歴は陸上競技が最も長くて、小学校から競技者として武道よりずっと長く『走る人』として過ごしてきました。体格の良い男に追いかけられて逃げ切れる女性は、ほんの一握りです。そんな事実は痛いほど知ってます。

私は短距離選手としてはずいぶん小柄でしたが、なんとか南関東大会まで行きました。要するに県大会入賞クラスです。

基礎体力もそれなりにあって、学生時代のスポーツテストもほぼ男子基準でA評価でした。でもそんなの「非スポーツ校の男子運動部でレギュラーになれるかどうか」くらいの体力に過ぎません。

つまり全盛期の私より足の速い男性はいくらでもいます。また、性被害に遭いやすいのは主に小柄な女性ですが、私は自分より小さくて速いスプリンターに会ったことがありません。

暴漢に応戦して倒すのと同じくらい、逃げるのだって絶望からのスタートです。

そこは人として当たり前に共有されてる常識だと思ってたんですが、もし「非力でも走れば必ず逃げ切れる」と言う意味に捉えた人がいれば言葉が足りませんでした。謝罪します。

ただ、応戦と比べて逃走は「勝負のタイムスパンが長く体力を他の能力で補いやすい」のと、「効率よく経験を積みやすい」のとで「最大公約数的に言えば逃げる方が有利だ」というのが私の変わらぬ主張です。

走るという特殊技能

正直なことを言えば、私は「運動が苦手な人はどうしたら暴力から逃げおおせるか」という問いについて適切な解を持ってません。

走るという能力は、おそらく多くの人が考えている以上に特殊技能です。小走りというレベルを超えて、高い重心で走れる女性は驚くほど少ない。

だけど暴漢のすべてがレスラーみたいな男だとは限りません。痴漢などはむしろ貧弱な相手である事も多いのです。そういうときに、いち早く立ち去れば危険が回避できる可能性は高いでしょう。

同じ条件で競り勝てなくても、ハンディがあれば逃げ切れる確率は上がります。尾行に気付いたら即行動に移す。容易に距離を詰めさせない。

人目のある方に向かう、逃げ込めそうな建物を見定める、どこかに通報する真似をするだけで逃げる変質者もいます。初動が早ければ出来ることの幅は増える。時間を味方に付けましょう。あとはどれだけ使えるカードを持っているかです。

目の前で逃げれば追われる

ヘッドフォンをしながら夜中に薄着で歩いていて、急に掴みかかられたところからふりほどいて逃げようとしても難しいです。私が暴漢だったとして、中途半端に騒いで逃げられたら逆上して全力で追いかけるかも知れません。

一方、周囲の車や自転車に配慮しつつ、快活に先を急ぐような人だったら最初から狙おうとは思わないでしょう。あなたが犯人だったらどうでしょうか?

周囲に気を配ったからと言って襲われる確率がゼロになるとは言いませんが、スマホに夢中になってる人よりはずっと安全なはずです。

まず狙われにくい条件を出来るだけ満たす。自分が出来る範囲で身の安全を確保する。私の言う「危険から逃げる」はこうした例も含みます。決して走るだけが『逃げる』ではありません。

同様に『勝ち目のない戦い』とは、全力で逃げなければならない事態に陥ることを含みます。そもそも射程距離に入らない。狙い澄ました凶悪犯罪でもない限り、早い段階で足早に去ったとして深追いされる理由などないはずです。

走れる体力をつけた上で、走らずに済ませたい。応戦への備えと変わりません。全力での逃走は応戦と同じくらい最悪の事態だと心得てください。

誰が狙われるのか

性犯罪に関して、ちょっと古いんですけど警察庁に「被害者を選定した理由」という表があったので抜粋します。

IV-46表 被害者を選定した理由(性犯罪:強姦)
質問項目 成人 少年
総数 161 84 77
相手から誘惑してきた 18.6 20.2 16.9
相手は不注意だった 64.0 60.7 67.5
相手には隙があった 62.7 59.5 66.2
相手は男にだらしがない 29.2 23.8 35.1
相手は警察に届けないと思った 65.2 64.3 66.2
相手は人に言わないと思った 70.2 60.7 80.5

昭和61年版 犯罪白書 第4編/第4章/第2節/7

最新(平成27年度版)の犯罪白書によると顔見知りによる犯行が増えているようです。それでも見た目が弱そうなこと、隙がある瞬間が狙われやすいのは事実でしょう。

全力で走らなければならない事態は稀

当サイトの人気記事で「ハイヒールで大立ち回りをする技術」というふざけた話があるんですけど、ストリートの鬼ごっこという意味では割と真面目な主張に基づいて書いてます。

ハイヒールで健康な男の足を振り切れるかどうかについて、可能かどうかで言えばそれなりに可能です。

パンプスでも相応のスピードが出せること、スカートでも多少の障害はノンストップで越えられること、土地勘のない街に行くときは極力動ける服を選ぶこと、いざとなったら服を犠牲にしてでも先を行く決断力などが求められますが。

戦う女性と同じくらいハードルが高いと言われればそれまでですが、そこまでの本気の追いかけっこに発展する事態は極めて稀です。それくらい「単なる痴漢」に遭遇する可能性の方がずっと高い。

ならば、まずはその「単なる痴漢」や「単なる露出狂」へのリソースを割くべきです。費用対効果が全然違う。私が提案しているのは全体の安全性の底上げです。誤解を恐れずに言えば、凶悪犯への備えは二の次にせざるを得ない。

「護身術を身につけるより逃げろと言う奴はバカだ」という主張を時々聞きます。しかし、そうした主張をする人は性犯罪者が例外なく訓練を受けた屈強な男であることを根拠にしています。

しかし現実にはそんな例ばかりではない。それでいて被害者にとっては貧弱な犯人でも恐怖の対象であることには変わらないのです。前提が違う。

目標を見誤らないこと

被害者にとっての第一目標は、暴漢を警官に引き渡すことではありません。怪我なく生還することです。

もしそこで犯人の特徴を覚える余裕があれば、早期の検挙に繋がる可能性がある。だからまずは慌てないように、フリーズしてもすぐ解除できるようにと言いました。

全体のパニック耐性が底上げされれば、非常時に出来ることは自然と増えていくはずです。

そして暴漢を撃退した人は賞賛されてしかるべきですが、まずは生きて帰ったことを言祝(ことほ)いであげて欲しいと思います。

ハイヒールの選び方

安全のためだけを言えば動きにくい靴は履かない方が良いのですが、履きたい、あるいは履かざるを得ないのであれば少しでも歩きやすいものを選んだほうが得策です。

シューフィッターのいる靴屋で探す

どんな靴を選んでも靴擦れしない足をお持ちの方、大変おめでとうございます。

私は「似合う」「履きたい」以上に「まともに入る靴」が少ないので、靴選びにはいつも苦労しています。ヒールで歩き回るのが辛い方は、シューフィッターのいる靴屋さんを訪ねてみて下さい。かなり違うと思います。

また、体格や筋力によって耐えられるヒールの高さは違います。手持ちの靴を比較してみて、楽な靴の型を模索してみて下さい。

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身長によっても負担感は異なります。

ストラップなどで調整できるものを選ぶ

ハイヒールのストラップというと足首や足の甲を押さえるものが中心です。それはそれで無いよりずっと有用なんですが、個人的に勧めたいのは「かかと」が絞れるバックストラップタイプです。

つま先との兼ね合いもありますが、足との一体感が高まるのでかなり動けます。

また、ストラップは購入時のままではなく長さを調整しましょう。必要に応じて目打ちなどで新しい穴を開けて下さい。

ただし写真のモデルはちょっとヒールが細すぎるかも知れません。サンダルなどでは全力で走ると折れたりするので、個人的にはもうちょっと太いヒールの方がオススメです。

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まずは50m走れることを目標に

全力で走らなければならない事態に追い込まれないこと! …とは言いながら、走れるに越したことはありません。

「暴漢から逃げる」という語感についてジョギング的な走力を想定してる人が多かったのですが、実感としてはダッシュの方が有利に働くと思っています。

犯人はなるべく弱そうな相手を狙います。だからこそ、ちょっと機敏なところを見せれば向こうだって警戒します。

バイクや自転車のひったくりだって、向こうは小回りが利きません。不用意に近寄ってくるのを察知して、さっと横に避ければやり過ごせる。

そもそも女性の靴と服はどうしようもないほど不利に働くのです。だからこそ少しでもいち早く備えたい。早い段階から警戒したそぶりを見せることで、接触せずに済むことだってありえます。

移動用の靴を携帯する

防犯のためという意味では、スニーカーで移動した方が良いに決まってます。

どうしてもハイヒールで移動しなければならないなら普段以上に警戒する、あるいは必ず信頼出来るハイヤーを呼ぶと言った具合に総合的な判断をして下さい。(´・_・`)

防犯グッズの携行と心構え

必要だと思ったらスタンガンや催涙スプレーなどの防犯グッズを携行するのも良いかも知れません。

ただ、私はスタンガンの購入経験がないので性能などのアドバイスは出来ません。あと、道具に頼る場合はときどき訓練してください。

すぐ取り出せるかどうか、確実に使えるかどうか、奪われたとき逆に自分が不利にならないかどうか折々に確認すると良いでしょう。

私は鞄からものを出すのに手間取る傾向があるので、護身用の道具は種類を絞ってます。

おわりに

確かに暴漢には組まずに逃げろと言いましたが、闇雲に逃げて逃げ切れるとは言っていません。逃げることを主軸にするにせよ、体と技術と知識は鍛えて下さい。常に選択肢の幅を広げる努力をして下さい。

私は自分にとって最も信頼出来る技能が走力だったので逃げることを優先していましたが、遊び歩いていた経験も武道経験もすべて危険回避に役立ちました。

仮にどんな方法を勧めたとしても100%の安全は保証していないし、出来ません。

凶悪犯罪に比べれば比較的軽微な性犯罪のほうがずっと多いという事実に基づき、安全の底上げを目指して欲しいという提案をしました。

実際のところ、防犯対策にどこまでコストを払うかどうかは各自の判断によるのです。各論として訓練された暴漢に襲われて助かりたい場合は相応の師を仰いで訓練を積んで下さい。

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