『亜人ちゃんは語りたい』をLGBTや障害者の物語として観る

『亜人ちゃんは語りたい』の勝手レビュー。人間社会でフツーに暮らすバンパイア達がおりなすファンタジーです。

『亜人ちゃんは語りたい』をLGBTや障害者の物語として観る

年明けから始まったアニメ『亜人ちゃんは語りたい』を観てます。

亜人ちゃんは語りたい 1 [Blu-ray]

このお話では、バンパイアやサキュバスが「ちょっと変わった個性の人」という立ち位置で登場します。

彼らは「亜人」と呼ばれて区別されながらも、人間の日常に溶け込み普通の社会生活を送っている。この世界観において亜人は閉じた種族ではなく突然変異のような存在で、人間と亜人がきょうだいとして同じ家に生まれてきたりするらしい。

亜人はそれぞれ特有の「食事制限」「暑さに弱い」といった悩みを抱えながら、学園コメディとして主人公である生物教師との交流を深めていきます。

…というのがあらすじなのですが、Wikipedia見に行ったら「ハーレムもの」に区分されてて超びっくり。

えっ、これってマイノリティの「日常系」じゃないの?(;・`д・´)

【 おことわり 】

本稿では一部ネタバレを含みます。

基本的に公式サイトから読み取れる範囲で書いてるつもりなのですが、物語の紹介をするとネタバレ判定を受ける事が多いので、そのつもりでよろしくお願いします。

また、LGBTや障害者について触れてる部分に差別意図はありません。

表記を「障碍」にするかどうかは悩んだのですが、法律上は「障害」に統一されてるようなのでそれに倣います。その他、不勉強からくる不適切表現などありましたら対応します。

マイノリティと社会保障

作品の冒頭で、日常生活に不利な点を持つ亜人には公的な社会保障制度があると明かされます。

バンパイアの場合

例えばバンパイアには定期的に血液バックが支給され、それによって他の人間とほとんど変わらない暮らしが出来てるようです。

ここで重度の貧血を内分泌系の機能障害と読み替えると理解が進みます。「直射日光に弱い」といった基礎的な特徴も、色素が薄いアルビノ(先天性白皮症)の症状と良く似ている。

このあたりから、「モンスターの設定をよく練ってるな~」から「内部障害って見た目は割と普通だから、むしろ大変だろうな~」という感じの感想に変わってきます。

デュラハンの場合

デュラハンとは、アイルランドに伝わる「首のない妖精」です。

自分の生首を持ち歩くような設定もあり、『亜人ちゃんは語りたい』のデュラハンも体と切り離された自分の頭を抱えてます。

亜人ちゃんは語りたい(2) /ペトス

作中に出てくる4人の亜人のうち、明らかに外見上の特徴を持つのはデュラハンのみ。同級生との会話などから「義肢をつけた身体欠損者」あるいは「重度の麻痺」といった症状が読み取れます。

教室の片隅でバンパイアがデュラハンの身体的特徴について突っ込んだことを聞くシーンがあるんですけど、二人のやりとりを遠巻きに見てた同級生に緊張が走る描写があります。

セリフはないものの、明らかに周りの人間が「うわっ、そういうことズケズケ聞いちゃう~!?」という感じの表情をしている。

でもバンパイア自身も日常の悩みが絶えない亜人だし、悪意のない素朴な疑問であることも見て取れる。二人の間に流れる空気は一貫して とても優しく描かれてます。

レインボーフラッグ

エンディングで印象的なのが、グラデーションを作るように並べられた色とりどりのクレヨンたち。

線画の登場人物に色を添える小道具として描かれてるんですが、この流れで虹色といえばLGBTのレインボーフラッグを想起せずにはいられません。

LGBTのレインボーカラーは、レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーといった性の多様性を表現しています。その発想が基底にあるなら、「人間の形質は多様で線を引けるようなものではない」と読み替えられるでしょう。

これは相互理解の物語です。見た目や機能の違いを単なる差違と受け止めて、歩み寄っていくためのヒントがたくさん散りばめられてます。

身近な人から何らかのカミングアウトを受けたけど、どう接していいか分からない…という人は一度読んでみたら良いですよ。強要はしないけどオススメしちゃう。

教育色うんぬんはともかく、女の子たちが本当にカワイイですし。(∩* ´ ω ` *∩)

【楽天Kobo】亜人ちゃんは語りたい1巻 [ ペトス ] / 【Kindle】

電子版が戦略価格。