食用ではない普通の菊をおひたしにして食べる

食用ではない普通の菊を食べます。品種ごとに風味や食感が違って楽しいですよ。

食用ではない普通の菊をおひたしにして食べる

菊のおひたし好きなんですよ。

手塩にかけた花の盛りに、結実も待たず摘み取ったうえで花形も残さずバラバラにしてしまうの残酷だとは思うんですが。

でも、花を育ててると菊の仲間って気づいたときに超ふえてたりするじゃないですか。飾るのも限りがあるし、抜くのも忍びないし、そしたら食うしかないよね。

園芸菊は食べられるのか

園芸種の菊を食べる

結論から言うと、園芸用の菊は食べられます

農業食品産業技術総合研究機構の有毒植物リストには見当たりませんでしたし、キク属(Asteraceae Chrysanthemum)の花に致命的な毒があるという話も聞きません。

毒がない以上は食べられますし、残る焦点は「美味い」か「まずい」かだけでしょう。

もちろん調理する際は無農薬、または食用に適合する方法で栽培された花を使って下さい。

今回調理したのは写真の菊です。貰い物で品種名はわかりません。同時に、食用菊として名高い”もってのほか”(←品種名)が手に入ったので、薄ピンクの小菊2種を食べ比べることにしました。

菊花の酢の物レシピ

菊の酢の物を作る

基本の菊おひたしの作り方も載せときます。

  • 菊の花びらをバラバラにする
  • 小鍋に湯を張り大さじ2ほどの酢を入れて茹でる
  • 花びらをざるにとって手早く冷ます
  • 調味用の甘酢(砂糖+食酢)であえる

「がく」は味が強すぎる&口当たりが悪いので使いません。中央に黄色い花芯がある場合も取り除きます。

酢水で茹でるのは、あく抜き&発色を良くするためです。あまり火を通しすぎると歯ごたえが悪くなるので、茹で時間は10秒くらいで手短にすませるのがポイント。

菊は酢水で茹でると発色が良い

園芸菊を食べる

調味は甘酢のみ、合成着色料は使ってません。

調理前の色は”もってのほか”のほうが濃いくらいだったんですけど、酢で和えたら園芸種の方がずっと濃くなりました。シアン系色素の分布が違うのでしょうか。面白いですね。

食用菊と園芸菊のおひたし

山形の食用菊”もってのほか”

まず食用品種の”もってのほか”(通称:もって菊)から試食します。

もって菊の特徴は、俗に「ストロー咲き」と呼ばれる筒状の花びらです。この形状がシャクシャクとした独自の歯ごたえを作っていて楽しいんですよね。

噛みしめたところからほんのり菊の風味が口いっぱいに広がります。 (*´艸`*)

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平咲き園芸菊

一方の園芸菊は、花びらが巻かない平咲き品種を使いました。とりあえず発色が鮮やかで目を引きます。

食感は十分シャリシャリしてますけど、もって菊ほどの歯ごたえはないですね。ただし味は濃くて食べ応えがあります。菊特有の香りがガツッと飛び出す野趣あふれる味。

もって菊と比べれば苦みを強く感じますけど、野草としてはかなり上品な部類です。何も言わずに出せば普通の食用菊と言い張っても判らないんじゃないでしょうか。

尖った苦みを感じるようなら、一晩置いた方が酢で中和されて食べやすいです。

苦みを強く感じる時は

【2017-11-18 本章追記】実は園芸菊を食べたのは今回が初めてではなく、過去に何種類か食べてきてます。経験的には黄色系よりピンク系、色が濃い花より薄い花のほうがマイルドで食べやすいという印象でしょうか。

同じ品種でも年や株によって味にばらつきがあります。試食して雑味を感じるようなら、水きりの際に強めに絞ったり酢の量を変えて調節するといいかも。

あまり絞ると香りが飛ぶので、癖が強い時は食品用のクエン酸を足しちゃってます。粉末なのであまり水っぽくならず苦みを消せます。

クエン酸は後味がほぼレモン汁なので、柑橘酢のように使うと華やかさが出て結構好き。

無水クエン酸 食品添加物品質

おわりに

以上、キク園芸種の味見レポートでした。

そもそも園芸菊を食べてみようと思ったきっかけは、漫画『めぞん一刻』なんですよね。

めぞん一刻 高橋留美子

ヒロインの音無響子さんが、亡夫・惣一郎さんの墓参りで彼の人柄を語るシーンがあるんです。仏前に供える菊の花束を抱えながら、生前の惣一郎さんも菊の花が大好きだったと。

で、その好きな理由が「菊はおひたしにも出来て得」だから。

しんみりしつつ笑いを取りに来てるのは承知の上で、「でも花束の菊は農薬かかってて食べられないから…」って思ったものでした。

当時は自分で菊を育ててなかったので試せなかったんですけど、「園芸菊ってどんな味がするんだろう」という疑問はずっと心の奥でくすぶってました。そうこうするうちに菊の苗が手に入ったので少しずつ味見しているところです。

なんでもいいけど、「若妻を残して早世した亡夫の好物が菊のおひたし」ってめっちゃ遠回しにエロいよね。

とにかく園芸種でも普通に美味しく頂けるので、増え過ぎちゃって困る(無農薬の)菊があったら食べてみて下さい。甘酢和えだけでなく、マヨ醤油なんかも美味しいですよ。

キク科にも有毒植物あります

最後にちょっとだけ注意事項です。

キク属には目立った毒がないと書きましたが、同じキク科のヤグルマギク属などには毒性を持つ種もあるので気を付けてください。

ある程度菊の仲間を育てたことがある人なら両者の違いが区別できると思います。

個人的に、そのへんの草を食べるには「ぱっと見で属名がすぐ出てくるレベル」が最低条件だと思ってます。鑑別に自信がない場合は無茶をしないようにして下さい。

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