一般社団法人テレコムサービス協会のICTビジネス研究会が主催する「ICT女子プロジェクト」がまるでアイドルオーディションのようだった。
「ICT女子プロジェクト」とは、「全国のICT女子を発掘し女性ならではの切り口でビジネスモデルを模索するプロジェクト」だという。若干モヤモヤしたものを感じるが、それ自体は百歩譲ってスルーしよう。
その一環で「ICT48」なるグループのメンバーを募集しているのだが、応募要項を見ると「身長・体重・アップ写真・全身写真」との記述がある。
えっ…女性エンジニアを募集してるんじゃないのかよ。
ICTとは
ICTとは「Information and Communication Technology」の略で、ざっくり言えばIT(Information Technology)の類義語。特に通信関連技術を指す。
ICT女子プロジェクトとは
ICT女子プロジェクトの告知ページによると、このプロジェクトは
全国津々浦々でICTを用いて活動する女性(ICT女子)を発掘し、彼女達に一層の活躍の場を提供するための取組
で、
ICT女子と企業・団体を結びつけ、女性ならではの切り口に基づく新たなビジネスモデル、サービスを創造する
のが目的とのこと。同時に、
これらの取り組みを積極的に情報発信し(中略)ICT産業への就業を選択する若手女性の増加を目指
すのだという。
あまり洗練されたやり方だとは言えないが、それはそれで必要な活動なのかも知れない。
活動内容の詳細は後日公開されるそうだが、告知ページによると応募資格や今後の展望についての概要が記されていた。(応募資格より抜粋)
なるほど、女性エンジニアを募集しているのか…と思って応募資格に目を移すと「13歳~24歳」とある。
ん?女性エンジニア25歳定年説か?
一瞬気が遠くなりかけたが、偏見でものを見てはいけない。高専や工業大に通いながらプログラミングコンテストやハッカソンに参加しているギークな女の子を探してるだけかも知れないからだ。
しかし、そこへ来ての応募要項「身長・体重・アップ写真・全身写真」である。
はい、アウトー!(눈_눈)
しかも批判が殺到したと見えて、2016/06/11の昼前には一般的な履歴書に近い書式へと差し替えられていた。
「ICT女子プロジェクト」が発足 女性の活躍支援かと思ったらまるでアイドルオーディションだったでござる
「ナントカ女子」というやり方の筋が悪いところ
「理系女子」だの「美人すぎる格闘家」だの「山ガール」だの「宙ガール」だの、男性優位なコミュニティで活躍する女性をことさら女として扱う風潮に辟易している。
何かに打ち込んでいる有能な女性を連れてきて、女と言うだけの理由でスポットライトを当てても「大してかわいくない」などと言われて お払い箱になるのがオチだ。
たとえ二物を与えられた女性であっても、すべてのステータスを「女であること」に振る女性がいる以上、顔の作りを強調することには無理がある。
仮に非常に有能で、かつアイドル並みの美貌を持つ人が存在したとして、さらにその人が公衆の面前で滑舌良く喋れる保証はどこにもない。もし存在するなら発掘するまでもなく既にスターになってる。
耳目を集めるために美貌を売りに使うなら、最初から人前に出たい可愛い女の子を連れてきた方が早い。
参入障壁が高い技能は成長物語で見せる演出を
確かに参入障壁が高い分野というのは存在する。社会全体の無理解によって「適正があるのに気付かない」また「入門する機会すら与えられない」という技能は多い。
そうしたものが「○○ガール」という陳腐な概念によって次々消費されていく。
見た目ではなく本当の面白さを知ってもらいたいなら、成長物語を見せれば良い。
ICTで言えば、技術に全く興味が無さそうなアイドル予備軍を連れて来て講師陣に放り込み、アプリのひとつも作らせてみたらどうだろう。既に秀でた人より、何も出来ない人の成長過程を見る方が共感を呼びやすい。
幸いアイドルの女の子達は体育会系マインドに強い耐性がある。この一連の顛末を映像化すれば、笑いあり涙ありのキャッチーなドキュメンタリーが完成するだろう。
それとは別に、一線で活躍する女性に現状の問題点や展望を語ってもらえば良い。これでほぼ全方位にアナウンスできる。
「マドンナ」という幻想
「ある世界の中にいる人」と「全く判っていない人」では評価しうる内容が違う。端的に言えば、ウケるかどうかといったようなことだ。
1つのアイコンですべてを賄おうとするから破綻するのに、見通しの甘い人に限って才色兼備の広告塔を立てたがる。万人を納得させる振る舞いなんて、そんな神でもなしえないことを生身の人間に要求する方がどうかしている。
思うに、「ナントカ女子」などという御輿を担ぎたがる人は「ナントカ」の中身に興味が無いのだ。ご神体としての偶像が欲しいだけなので、求める人材はつまりアイドルという事になる。
もっとも、この告知を見て「女性技術者を一体何だと思ってるんだ」といきり立っている我々の方がおかしいのだろう。
冷静に列記されている条件を眺めてみれば、すべてを満たす解は「プログラミング少女」よりも「SNSを使ってセルフプロデュースに成功した女の子」の方が近い。

…とは言うものの、週末遊び歩いて本稿をアップしそびれている間にプロジェクトのページ事態が消えてしまったようだ。2016/06/12 08:30現在
プロジェクトの真意がどんなものだったのかはもう我々には判らない。
個人的には「地獄のアプリ制作合宿に放り込まれたアイドルがプログラミングに目覚める話」を見たかった気もするんだけど。
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