日本時間 2014年4月2日 午前8時46分、南米チリ北部沿岸にてマグニチュード8.2の巨大地震が発生しました。当初、アメリカ海洋大気庁(NOAA)が発生時間を47分として伝えてましたがその後の報道を見ていると主要国メディアの認識は46分で固まったようです。
しかし この46分という発生時刻、どこかで見たことのある数字です。
1995年1月17日に起きた阪神淡路大震災は午前5時46分(JST)でしたし
2011年3月11日の東日本大震災は午後2時46分(JST)でした。
また、これは地震ではありませんが2001年9月11日のニューヨークでボーイング機がWTC北棟に突っ込んだのは午前8時46分(EDT)です。
この度重なる46分という数字、何かの因縁が働いてるのでしょうか…?
『46分』は本当に不吉なのか
ネット見てるとこの手の話が本当に多いですね。「1/60の確率が4回も重なるなんてありえない」とか。
でも果たしてそうでしょうか?運命的に思う気持ちも分かるけど、本当にありえないほど低い確率なのかな?
過去発生した巨大地震(Mw7以上)の発生時刻
そんなわけで、近代的な計測が可能になった ここ数十年の巨大地震を発生時刻別に集計してみました。地震のデータとして参照したのは主に以下のページです。
東北地方太平洋沖地震発生前後の地震データ
地震の年表 – Wikipedia
巨大地震の発生「分」別頻度 検証方法
1:「地震の年表」よりMw7.0以上の地震を抜粋
2:それぞれの発生時刻を転記
3:各項ごとに世界標準時と現地時間を補填してソート
4:発生時間を分(min)ごとに集計
5:グラフ化
過去の地震データを読み込み、マグニチュードが大きいものだけ抜き出します。その後、同じ分データを持つカラムを取り出して機械的にカウント。
…って簡単に書いたけど、Wikipediaのほうデータ型が揃ってないから最初の一覧は手集計ですよ…。
パトラッシュ…僕もう疲れたよ…。
02分に発生した地震が最多
とりあえず結果は下記の通りです。調べた限りで一番多かったのは02分でした。46分に発生した地震は冒頭で挙げた3つだけですね。
他に46分発生の地震も…2001年1月26日インド西部地震
実を言えば46分発生の地震は他にもありました。2001年1月26日のインド西部地震です。ただ、このときの現地時間(IST)は UTC+5.5 なんですよね。
つまりインドの午前8時46分は世界標準時だと午前3時16分という認識です。日本人の感覚でこれを46分と見なすには無理がありますから16分として扱いました。見落としがなければ他の30分時差地域も同様に処理しています。
02分に発生した地震の内訳について
なお、02分に発生した地震5件の内訳は以下の通りです。
1:1935年 4/21 新竹・台中地震 (7.1Mw)
2:1960年 5/21 チリ地震(前震) (8.2Mw)
3:2001年 1/26 インド西部地震 (7.7Mw)
3:1999年 8/17 トルコ北西部地震 (7.6Mw)
4:2012年 3/20 メキシコ南部地震 (7.4Mw)
5:2013年 4/20 四川地震 (7.0Mw)
1番は台湾史上最悪の地震ですね。死者3000人以上を記録しました。
2番は近代観測史上最大と言われるチリ地震の前震。前震ながら8.2Mwという規模は ただただ驚異的と言うしかありません。
3番のインド西部地震では2万人以上の命が犠牲になったと伝えられています。
3番、トルコ北西部の地震では1.6万人以上の命が犠牲になったと伝えられてます。被災者150万人以上を出した5番の四川地震は記憶に新しいところですね。
4番こそ目立った被害がなかったものの、いずれも歴史に刻む大災害といえます。
【訂正:2014/04/08】
すみません、2001年1月26日インド西部地震は16分の発生でしたね。02分に発生したのは1999年8月17日トルコ北西部のイズミット地震でした。途中でメモを取り違えていたようです。その関係でデータを調べ直したので、次章も追記しました。
なお、インド西部地震で2万人を超える犠牲者が出た件は誤りじゃないです。
トルコ北西部イズミット地震があった8月17日も特異日
【データを取り違えていたので本章追記しました】その上、前項3番のトルコ西部地震が起きた日付8月17日に注目すると1668年8月17日には同じくトルコ北部でM 8.0、死者8,000人の地震が起きています。1949年8月17日にはまたしてもトルコで M 6.8、死者320人の地震が。
さらに1906年8月17日は、場所こそ違えチリでMw 8.2の巨大地震が起きてますね。
しかもインド西部地震があった1月26日も特異日
【注:データを取り違えてましたが事実なので残しておきます】その上、前項3番のインド西部地震が起きた日付1月26日に注目すると1700年の同じ日には北米カスケード地震が起きてますね。これは前近代に起きた地震としては有史二番目の推定規模と言われてます。
さらに遡って1531年1月26日はヨーロッパ史上5指に入る犠牲者をもたらしたリスボン地震が起きた日でもあります。
2/22は巨大地震が4回も起きてる特異日
一方、時間ではなく日付に注目した場合、なんと2月22日には大きな地震が4回も起きています。
1757年 エクアドル(7.0Mw)
1943年 メキシコ(7.8Mw)
2005年 イラン(6.4Mw)
2011年 カンタベリー(6.1Mw)
数字だけ見ると小粒な地震に見えますが、地域性と建築強度を考慮すれば決して看過できるレベルの災害ではないはずです。
特に2011年のカンタベリー地震に関しては『ニュージーランドのクライストチャーチ地震』と言えばご理解頂けるでしょうか。直後に東日本大震災が起こったことで印象が薄れてしまいましたが美しい町並みが無残に崩れ、多くの日本人が犠牲になった痛ましい出来事でした。
100件のうち4件の「分」要素が一致する確率
非常に乱暴ないい方をすれば、要素の全てが未曾有の災害である母集団から何を組み合わせたって特異な物語は出来てしまいます。…とか言っても始まらないので、無作為抽出した100件の時刻(分)のうち4件一致する確率がどれほどのものなのかを求めてみましょう。
100件の時刻のうち、4つが「○分」で一致する条件と立式
対照とするのは阪神淡路大震災、東日本大震災、先日のチリ地震、NY同時多発テロの4件です。
1:特定の時刻「○分」に注目したとき、同じ時刻が他に3つある
2:残りの96件は1件たりとも「○分」であってはならない
3:このときの組み合わせは順不同
いわゆる「誕生日計算」ですね。これを立式すると以下のようになるはずです。
1:1/603
2:(59/60)96
3:99 x 98 x 97 / 3!
結果は14.5%となりました。
…如何でしょう? 私はこの数字、かなり高い頻度だと思ったのですが。
「46分が4件一致」の珍しさは母集団の数で決まる
もちろん母集団が少ない場合はこの限りではありません。無作為に集めた4件の時刻全てが一致する確率なら、それこそ奇跡でしょう。
しかし一定規模以上の集合なら同じ属性を持つことはそれほど珍しくはない。40人集まれば、同じ誕生日のペアがいる確率は90%です。
100件のうち同じ「分」が5つ重なる確率
ちなみに、より希有な例として挙げた インド西部 トルコ北西部地震のケース、「分」が5回重なる場合は同様の計算では 5.883832677% と出ました。
インド西部 トルコ北西部地震は二軸が複雑に絡み合って何重にも地震が重なってることになりますが、日本語と英語でいくら検索してもこれらの関係性について述べているページは見つけられませんでした。
これがどういうことかわかりますか?『この一致には大した意味がない』ということを意味しています。
まぁ、いずれもネイティブの英語圏で起きた地震じゃないので見つからなくても仕方がありません。これだけ神秘的な現象だから世界のどこかで誰かが論じてることでしょう。
まとめ:サンプル数が十分あればどんな組み合わせもアリ
もちろん偶然に運命を感じたって構いません。全然否定しない。そこに必然を感じて強い決意が生まれ得ることも知ってます。
ただ46分に怯え11日に怯え02分に怯え2/22に怯えて行き場を失うのなら、危機は等しく来ると思った方が楽に動けることもあるんじゃないかな。
これは、かつて地震学を修めたというだけの、単なる一市民の戯れ言です。
親子のための地震イツモノート 【楽天】 / 【Amazon】 不安になってる方はママさん達が多いみたい?具体的な対策を進めると少しは楽になるかも。 |
いちから聞きたい放射線のほんとう~ いま知っておきたい22の話 菊池 誠 (著), 小峰 公子 (著), おかざき 真里 (イラスト) 【楽天】 / 【Amazon】 |
コメントをどうぞ(´ω`*)