「有人調査船のロマンは理解しますが、ぶっちゃけ無人機だけで十分なのでは?」
…とか言ってはJAMSTECの高井研先生に「っかー!(゚Д゚ ≡ ゚д゚)、ペッ」とか言われてきたワタクシ()ですけれども、NHK『プロフェッショナル 仕事の流儀(2019/11/19)』見て気が変わりましたメモ。
※NHKプロフェッショナル 仕事の流儀 2019/11/19 JAMSTEC回の感想文です。(ネタバレバレよ)
プロフェッショナル
番組は、深海生物アルビンガイの調査航行を軸とする3部構成です。
アルビンガイの探査に向かったのは、気鋭の貝類学者Chen博士。「ここにいるはずだから探せ」と言われてあっさり見つけてしまうのがChenさんのスゴいところです。同行しているパイロットが「えっ、どこどこ?」みたいな状態なのに、Chenさん一人で大興奮だし。「Yes, I win.」名言キタコレ。
Chenさんの貝サーチ能力は本当に意味が判らなくて、見てる世界の解像度が明らかに普通の人と違います。いつぞやChenさんから「ここに二つの生き物が映ってるんですけど判りますか?」と見せて貰った動画は1種類の群生にしか見えませんでした。
もちろん素人と比べちゃいけないのは判ってますが、深海の視界に精通してるはずの6Kパイロットでさえ「どこどこ?」状態だったわけで、やっぱChenさんの視力は意味が判らない。Chenさんいつ見てもニコニコしてるけど、実は猛禽類じゃないかと思っています。
生物学者はどうやって新種を見つけるのか貝類学者に聞いてみた
中盤に『しんかい6500』のスペック紹介を挟んで、JAMSTEC人材育成プロジェクトの報告に移ります。これは文字通り次世代を担う人材を開拓するという趣旨で、事前選抜を経た学部生が実際にしんかい6500で潜航する…という極めて羨ましい企画でした。
あまりに羨ましすぎてなるべく見ないようにしていたのですが(ゲス発言)、あがってきた最終報告書をうっかり読んだら選考基準がJAMSTECすぎた。良き。
最前線海洋研究の「実践」を通じた若手人材育成プロジェクト – 海洋研究開発機構
しんかい12000はよ
運用30年を迎え、今なお進化を続けているというしんかい6500。長年のJAMSTECファンとしてワクワクする一方で「それはそれとして、しんかい12000の建造は一体どうなってるんです?」という気持ちもちょっとあります。
そんななか、国立科学博物館とJAMSTECが共同開発したカメラ映像がルミエール・ジャパン・アワード2019のVR部門で特別賞を取ったという報告を目にしました。
ぐりぐりできる『しんかい6500』、チムニーの根元をのぞき込むと思わず変な声が出ます。めちゃくちゃ乗船した気分になれるのですが、深海オタクなので6500の観察窓からこの視野角が得られないことも知ってます。
VRはまさに「しんかい6500」ではなく透明球潜水船の風景に近いです。透明球潜水船で深海熱水潜りたいわ。
コスパについては来週月曜日にうpする渾身のウェブ記事で世に問いますが、コスパコスパ言ってるのはズブズブの当事者だけかもしれんねえ。— 高井研 (@1031kentakai) November 16, 2019
番組中では有人研究船の是非についても言及していて、この件は以前私も高井先生に質問して一喝されたことがある。
有人機を作る金で無人機を大量投入した方が多くの知見が得られるのでは?
そりゃそうだけど、生身の人間が行くっていうプライスレスが大事なんよ!
その時は勢いで納得してしまったのですが、撮影機材の進化を見るにつけ亡霊のように蘇りますね…。
もちろん生身の人間が体験するというロマンは承知の上です。つい半月くらい前にも、メディアアーティストの八谷和彦さんとイベント会場でバッタリお会いして、ちょうどそんな話になりました。強制的に違う世界に連れて行ってくれる実機の威力は果てしない。その場にいれば感動してしまうことくらい判ってるんです。
ナウシカの飛行具、作ってみた 発想・制作・離陸 – メーヴェが飛ぶまでの10年間
八谷 和彦 / 猪谷 千香 / あさり よしとお |
ただ感情論と切り離したときの客観的な意義がやっぱり言語化できなくて、長い間ずっとモヤモヤしていました。霧が晴れたのは、有人船に否定的だった学生さんの潜航後コメントが流れたときです。
「目を凝らすと、そこが見えるというのが良いですね。何だ?と思ったらすぐそのプランクトンに焦点が定まって」
そのセリフが耳に飛び込んできた瞬間、Chenさんの超人的な視力の秘密は「これだ!」と思った。被写界深度の深い映像は、情報量を増やせば増やすほど情報密度が落ちるというジレンマがあります。それに対する人の目は、不要な情報を切り捨てることで単位時間あたりの処理速度を大幅に上げることができる。
技術的なことを言えば、視点追従型のカメラを導入すればある程度解決する問題だという気はします。だけどひとたび仕様にない要求が発生すれば、超人を現場に送り込むしかない。物量がものを言う作業は機械に任せて、人間こそフロンティアに立つべきです。
ん…?あれ、待てよ。…っていうか、この結論には既視感があるぞ。(;・`д・´)
あ~っ!そういえば、似たようなことを高井先生に言われた覚えがあります…。あのときはうまいこと言いくるめられた気がしてたけど、5年越しでようやく意味が判った!悔しい!4連敗!><
もっともド素人の私が有人機の意義を語ったところで何の権限もないのですが、日ごろドクター・ケンタカイに「オマエもブロガーならもっと腹割って書かんかい!」とか言われてるので、とりあえず番組見た感想文を置いときます。
ちなみに番組は11/26にも再放送があるそうですよ。
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