理系女子は笑わない?華がない?それがダサピンクって言うんだよ!

『理系女子』を増やすために企画される啓蒙活動って、高確率で的外れな気がします。

理系女子は笑わない?華がない?それがダサピンクって言うんだよ!

長岡技術科学大学が主催する「kawaii理科プロジェクト」だか「リケジョ体験」だかの動画が、あんまりかわいくなかったのでメモ。

ちなみに「リケジョ®」は講談社の商標登録(番号第5304310号)なので、本稿では原義に戻って「理系女子」を使います。(ಠωಠ)

かわいい理科って何だ!?

kawaii理科プロジェクトのコンセプトを見に行ってみました。

理科って堅苦しいものじゃない。
理系って男性だけのものじゃない。

もっと身近で楽しい理科へ。

そうですね、これは全くその通りだと思います。問題はそのあとです。

もっとおシャレでカワイイ理科へ。

この「オシャレでカワイイ」の定義がちょっとよく判りません。

「理系女子」である以上は理系であれ

kawaii理科プロジェクトが提案する「オシャレな実験」の動画を見てみました。

美人さんが酸性とアルカリで試薬の色を変えるお馴染みの実験をしています。ただ、溶液をデキャンタージュするように高い位置から注いだりしてました。

確かに、この実験に限って言えばそれほど危険な溶液は使っていないのかも知れません。しかし、どんな性質があるか判らない物質、あるいは劇薬を扱う場合は大変危険な手法です。

溶液が跳ねたり、急激な反応が起きることでガラスが割れたり、最悪の場合は失明の危険だってありえます。

ありふれた物質を使った実験でも慢心せず、真摯な態度で慎重に取り組んで欲しいというのが正直な感想でした。

白衣に個性は要らない

また、ナビゲータの女性が髪を下ろして白衣にリボンを付けているのも気になりました。

髪を下ろしていると実験の際に異物混入を招いたり、火がついたりして危ないので長髪はきちっと結ぶのがお約束です。リボンなどの装飾も、うっかり実験道具に引っかかったら大変ですし。

YouTubeで絵面的に色を添えたい気持ちはわかります。しかし遊び心を添えるなら、せめてワンポイントの刺繍にするなど科学的な安全性を確保した上での提案が欲しかった。

あと白衣の襟にパイピングで色を切り替えてましたね。あれは所属や出身ラボによって賛否が分かれるところかも。化学系の人は多分ダメって言うかも知れません。

色がついてると、試薬が跳ねたときに繊維が劣化したり変色したりといった異変に気付きにくくなるからです。

白衣に求める機能も専門によって様々です。今回の実験は化学がテーマだったので、ちょっと微妙なところかなーと思いました。

「白衣は単純防汚のために着てます」みたいな人達だったら、好みに合えば良いんじゃないでしょうか。でもリボンはどこに行ってもダメだと思う。

理系女子とダサピンク問題

当サイトでは再三言っておりますが、理系女子の裾野を広げるために美人を連れてくるのは本当に辞めて頂きたいと思っています。ダサピンク案件以外の何者でもありません。

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ダサピンク現象とは

ダサピンクというのは、「女性向け」とする企画に「女の子だったらピンクがお好きでしょう?」と言わんばかりにパステルカラーでフェミニンに飾り立てる事象のことです。

理系女子のかわいさは着飾ることではない

「理系の女は化粧っ気がない」みたいに言われますが、専門によってはメイクすると実験結果が変わってきちゃうものもあります。

そういうラボでメイクやオシャレが禁止されるのは必要があってのことでしょう。オフでオシャレする分には誰も止めないわけですし。

理系に限りませんが、アカデミック女子のかわいらしさと言うのは「興味対象の萌えどころを訥々と語るようなところに宿る」ものだと思ってます。

単純に見た目が綺麗な理工系女性もたくさん知ってますけど、「理系女子」として扱う以上は「理系」としての素養が身についてて欲しいです。

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「余計なお世話」とかいうとdisられますよぬ。

ちなみに、有能な女性が笑わないのは大体ドン引きしてるときなので、そういう事例しか見たことがないんだったら、あなたがそういう事なんだと思います。有能な人がニコニコ笑ってるの本当に和むよぅ…。(´ω`*)

サイエンスは危険と隣り合わせ

自分の専門をきちっとこなしつつ、自分なりのオシャレを楽しんでる理工系女性はそれなりにいます。

ただ理系として求められる安全性なりをないがしろにする人は、正直なところ理系学部に進んでもうまくやっていけない気がします。
これは脅しでも何でもなくて、実際サイエンスは危険と隣り合わせの研究もあるからです。

化学が失明や火傷などの事故が起こりうる話はしました。そして私が専攻していた地学もそうでした。

噴火中の火山に入る、電波の届かない山の中に入る。在学中も「誰それの知り合いの○○先生」が調査中に亡くなったという話を何度か聞いてます。

入学したときのオリエンテーションでも、フィールドワーク中に死亡したらどう処理されるかについて説明を受けました。

そういう学問であるという自覚なしに、偏差値やイメージだけで専攻を決めると多分きっと高確率で後悔します。日常の科学を楽しむ気持ちと、大学で科学を専攻することは多分ずいぶん差があります。

真面目な理系女子を増やす確実な方法

理系女子を増やしたいなら、方法はあります。見た目をチャラくして門戸を広げるより、「理系に進みたいのに進ませて貰えない」女の子を確実に理系に進ませてやればいい。

「本だの虫だのばかり見てどうするの」「こんなに勉強ばかりして将来嫁のもらい手もないんじゃないのか」みたいな家庭環境で、そもそもスタートラインに立たせて貰えない子は沢山いるんです。

Twitterでこの話をしたら「普通の親だったら子供の希望は叶えてあげるものでしょう?」ってリプライが来ましたが、そういう幸せなケースばかりじゃないことは知って欲しい。

そういう境遇の知人は沢山知ってるし、何より大学の先生から賛意のリアクションをずいぶん頂きました。

頭数だけ揃えるよりも、まずはやる気と適正のある女の子を救い出すアイディアを出していきたい。

何より私がスタートラインに立つため多大な労力を費やしたクチなのです。平成の首都圏で進学率100%の高校に通ってたにも関わらず、です。

理系女子のパイを広げれば、自然とかわいくてオシャレな子だって増えるでしょう。確率論的にはそういう事になっております。

幸い、私は多大な交渉コストをかけて理学部に進むことを許されました。誰かが声を上げることで、不幸な例が少しでも減るようにと願っています。

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