暖かい地方で雪が降ると融雪のために慌てて雪にお湯をかける人がいますが、雪は100度の熱湯をかけたくらいではびくともしません。
「でも、やかんに2~3杯の熱湯があれば車を出すくらいの雪は融かせるでしょ?」みたいな淡い期待は一切しない方が良いです。本当にびっくりするくらいちょっとしか融けません。
やかん一杯の熱湯には、ほぼ同量の雪を融かすだけの力しかありません。お湯をまくのは完全にエネルギーの無駄なので、やらないことを強く勧めます。
違う温度の水を混ぜて何度になるか確かめる
さて、元はと言えばこれ。100度の熱湯と0度の氷を同量混ぜたら一体何度になるのか、という話でした。
→ 100度のお湯と0度の氷を同量混ぜたら50度に…なんねーよ!
言い出しっぺだし、自分の実験結果も置いときますね。
予備実験:23度の水と62度の水を100gずつ混ぜる
まず実験精度を確かめるための予備実験からはじめます。
ピッチャーに入ってた水とポットに入ってたお湯を100gずつ計量し、両者を混ぜ合わせて温度を測ってみます。水温が中途半端ですいません。単に手近な水とお湯がその温度だったのです。
水A | 水B | 混合水 | |
---|---|---|---|
重量 | 100g | 100g | 200g |
熱量 | 2300cal | 6200cal | 8500cal |
温度 | 23度(実測) | 62度(実測) | 42.5度(予想) |
期待値42.5度は8500を2で割りました。さてはて結果や如何に…。
【memo】
この手の計算では熱量の単位としてジュールを使うことが多いんですけど、お手軽実験なのでここではカロリーを使います。
1calはざっくり水1gを1度上げるのに要するエネルギーのことですから水のエネルギー計算するときに簡単なので。基準値は0度の水としました。
はい、出ました42.5度。(๑•̀ㅂ•́)و
お湯を沸かしてる間、途中で何度か違う組み合わせの温度でも試したところ かなり正確に計算結果と一致することが確かめられました。
100度の湯と0度の氷を同量混ぜたら何度になるか実験
…ということで、いよいよ本番やります。0度の氷と100度の熱湯を100gずつ混ぜて、何度になるか調べます。ちなみに実験時の室温は21度なり。
まてめそ(実験のやり方)
氷の入ったサーバーに熱湯をぶち込んで、ガラスが割れないことを祈るだけの簡単なお仕事です。( ˘ω˘)
氷 | 熱湯 | 混合水 | |
---|---|---|---|
重量 | 100g | 100g | 200g |
熱量 | -8000cal | 10000cal | 2000cal |
温度 | 0度(多分) | 100度(実測) | 10度(予想) |
氷の熱量がマイナスになっているのは、水になるとき周囲から奪うエネルギー(融解熱)の保留分です。正確には-7971calくらいなんですけど、所詮ご家庭実験ですし細かい部分はアバウトで。
固体だった水が、液体として自由に動けるようになるために80度分ものエネルギーを奪ってるんですね。雪が降ってる最中は意外と暖かいこと、一度降り積もった雪はなかなか融けないのもそのためです。
何で氷を溶かした水は10度にならなかったのだろう?
いずれにせよ10度の予想が12度ちょいだったので、ご家庭実験としては十分「それらしい結果」と考えて良いと思います。しかし、なぜ氷を溶かしたときでは2度の誤差が出たのでしょう?
お湯を用意する間に氷の一部が溶けたから…?
確かにその線も捨てがたいんですけど、実は冷凍庫で冷やしきった氷でも実験していて、キンキンに冷えた氷でも10度以上になりました。
完全に冷えた氷は明らかに氷点下なので、氷自体の比熱 0.5cal/g を考えれば最終的な水温は9度以下まで下がりそうです。しかし上がった。
この条件で何回か試したところ、いずれも12~13度という結果でした。最終的な水温は氷温に依存しないようです。直接的には室温を吸ったわけではなさそうだし、空気にそれほど熱を伝える力はありません。うーむ。
追加実験:氷が溶けた水の温度を測る
謎の熱量がどこから来たのかを考えてみます。
容器に氷を入れて融けた水の温度を測ってみましょう。融けたてほやほやだし、氷とも接しているので0度かなと思いきや4~5度くらいありました。
キンキンに冷えた氷水だけど、5度もあるんですね。
…っていうか、5度って数字が超怪しい。そもそも氷が残っている間はグラムあたり-80度の冷却能力が発揮されているはずなのです。それを振り切るほどの熱源が存在してるのだとしたら、一体どこに?
常温の水とお湯の混合実験では誤差がなかった
思い起こせば、最初の予備実験では予想と実測が一致しました。62度と23度の水を混ぜたときは、謎の熱が発生していないようです。
ところで。
水の沸点は100度ですが、お湯を沸かしたところで100度に達した瞬間いっぺんに蒸発するようなことは普通ありえません。液体である水が気体として自由に飛び回れるようになるためには水だったときよりも多くのエネルギーを溜め込まないといけないからです。
別の表現をすると、火に掛けられた水は煮えたぎってても得たエネルギーとほぼ釣り合う形で冷やされ液相に押しとどめられている力が働いてると言えるでしょう。分子レベルで見ると、お湯の表層では静かに激しい熱の奪い合いが起きてるんですね。
で、この水蒸気が水に戻るときには一体何が起こるでしょう?
みたいな。
ぐーぐる先生に聞くと、知恵袋のデタラメがそれはそれは大漁に出てくるのであまり参考にしないことを勧めます。
…そんなわけでここでも全部は説明しません。氷水をしつこく観察してればそのうち判ると思うので、ぜひ冷たいジュース片手に考えてみて下さい。(・∀・)
まとめ:雪も氷の一種です
…ということで雪も氷の一種ですから、いくら熱湯を用意しても同じくらいの重さの雪しか融けません。エネルギー収支を考えたらバケツ一杯の水の方がよっぽど融けます。ただし、翌日スケートリンクになって怪我するのが目に見えてるので、やっぱ撒いちゃダメです。
あとフロントガラスの霜取りにお湯かけると割れることがあるから、そっちも気をつけて下さいね。
それではまた!
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【 更新情報 】
2014/02/18 初稿発表
表題変更&リンク切れ修正しました
(http://togetter.com/li/630940 – お湯と氷を混ぜると何度になるか?)
旧題:氷や雪に熱湯かけたらどうなる?水でカロリー計算してみよう!
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