雄雌の交尾器逆転昆虫「トリカヘチャタテ」を擬人化してみた

トリカヘチャタテは雌雄の交接器が入れ替わった新種の昆虫です。オスよりもメスが積極的で、メスが持つ突起状の受精嚢を挿し入れて50時間以上にもわたり繋がり続けるのだとか。何から何まで捗りますね。

雄雌の交尾器逆転昆虫「トリカヘチャタテ」を擬人化してみた

雌雄の交接器がオスとメスで入れ変わった新種の昆虫が発見されました。北大のプレスリリース見たけど完全に攻めと受けが逆転してますね。やっだ、何それ性器の大発見…げふんげふん。

トリカヘチャタテざっくりまとめ

  • オスの用意するプレゼント欲しさにメスが積極的になった
  • メスが突起状の交接器官を発達させ、精子を能動的に奪いに行く
  • オス器官は逆に体内深部へ後退(相補的共進化)
  • 体位はメス上位の後背位
  • 一回の行為にかける時間は40~70時間

ブラジルの乾燥した洞窟に棲む羽虫 チャタテムシの一属 Neotrogla だそうです。種名の由来は

平安時代の宮中を舞台に,姉弟が性別を入れ替えて暮らすさまを書いた
「とりかへばや物語」からとってトリカへチャタテと名づけた

…のだとか。

北海道大学プレスリリース(PDF):交尾器が雌雄で逆転した昆虫の発見

論文概要によるとメスが突起状の交接器を持ちオスに挿入するんだそうです。タツノオトシゴのようにオスがメスから卵を受け取って、オスが子育てするパターンかと思ったら、そうじゃなかった。

いろいろと擬人化がはかどるトリカヘチャタテ

雌は雄から栄養の入ったカプセルを精子と一緒に受け取ります。(中略)これにより,雌雄の交尾への積極性が逆転し,雌に強い性選択が働いたことが,交尾器構造の逆転を促したと考えられました。

あ、産卵するのはメスなんですね。
論文のタイトル見て↓こういうの↓想像してたわ。

とりかえばや虫の日常

また、添付写真によるとトリカヘチャタテの行為はメス上位の後背位です。

一見ありふれた姿勢かと思いきや、昆虫の場合は「頭の向きが揃わないアクロバティックな繋がりかた」をすることも多いので、その点でも非常に身近な感じがします。そこに「雌」「雄」って図示されると脳内完全にこういう状態ですよね。

(高校生以下は下の空白をタップしないように)
トリカヘチャタテ模式図

でも、後付けで獲得した程度の体外器官でメスがオスのように振る舞ったら簡単にすっぽ抜けちゃうのでは…って思ったら、肥大化した受精嚢はオスの輸精管を包み込むようカギ状になっているそうです。しかも根元にトゲのような器官も発達しておりオスの体内で「かえし」として働くようです。

この、「中でざらつく構造」って猫そっくり。

猫の場合は体の中にトゲを突き立てられたあまりの痛さにメスがキレて大喧嘩になりますけど、トリカヘチャタテは 40~70 時間ものあいだ行為を続けるのだそうです。

すごい、あんまり時間かけ過ぎると足腰に来ませんか。節足動物だから大丈夫なのかな。でもこのトゲでオスの接合部には傷がつくそうですよ。ご愁傷様です。

トリカヘチャタテが何日で成虫になるか知らないけど、虫の3日ってかなり長いですよね。もしかするとメスは繁殖期に達してない若いオスを青田買いで囲ってるんじゃないですか博士どうなんですか。

それに、

雄の生殖にかかるコストが上昇したことで,
雄よりも雌の方が早いペースで再交尾が可能

…なる記述も気になります。

昆虫って一度したらメスの体内に精子嚢が残るので、再び産卵することがあっても何度も繋がる必要がない種もいると聞きましたが…そうですか、トリカヘチャタテは色んな組み合わせで多彩な遺伝子を残せるんですね。

未成熟(かも知れない)オスが手練れのメスに魅入られた結果、後ろから押さえ込まれて明けても暮れても擦り切れるまで やり続けて、子種と養育費を搾り取られた挙げ句に捨てられるという理解でよろしいですかダメですか。

トリカヘチャタテに望む進化の希望的観測

ハイコストな産卵を担うメスが選択権を持つ社会性は興味深いものですが、とりかえばやの名を冠すなら いずれオスが育児嚢作って抱卵すべき。

図を載せれば説明も簡単なんですけど、論文30ドルもして素人には買えないんで北大のプレスリリース写真見て世界観を堪能して下さい!(^^

チャタテムシGraphopsocus_cruciatus (CC BY-SA 3.0)

写真はチャタテムシの一種 Graphopsocus_cruciatus、トリカヘチャタテは全体的にもう少し羽根が透明な感じでしたー。

参考資料

※本章以下追記です

掲載誌:Current Biology(英語)
Wikipedia : Neotrogla(英語)

2014/04現在でWikipedia項目ある言語、英語以外は伊・中だけなの味わい深いですね。

メタファとしての「とりかえばや物語」

トリカヘチャタテの由来が「とりかえばや物語」と聞いて思い出した話。

「とりかえばや」の意とは「取り替えたいなぁ」。終助詞「ばや」は願望を示していますが、願望を示す終助詞は他に「なむ」がありますね。

「ばや」は「自分がなりたい」という場合、
「なむ」は「相手に望む場合」とそれぞれ使い分けが決まってます。

かような点において、トリカヘチャタテ自身に内包された進化バイアスが「ばや」なのか「なむ」なのか思いを巡らすのも割とアレげオススメです。

オスが積極的に子育てするいきものいろいろ

タツノオトシゴはオスが育児嚢を持っているので、まるでオスが出産したかのように見えるのでした。

ほかにオスが積極的に子育てする例としては 極寒の中で二ヶ月間食事もせずに抱卵し続けるコウテイペンギン、孵化するまで卵を背負って暮らすアメリカタガメ、赤ちゃんのエサやりや行動を共にする鳥類やらサルやらもいますね。

カエルもオスが卵を守る種類が結構います。ちなみに背中からチビさんがわらわら生えてくるコモリガエルはメスですよ。

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