赤潮と夜光虫みてきた!今度は嘘じゃないです in葉山

ヤコウチュウの元になる赤潮は海の嫌われ者ですが、夜には幽玄な光を放つかも知れません。

赤潮と夜光虫みてきた!今度は嘘じゃないです in葉山

前回の残念報告から苦節一週間!

7月8日に赤潮&夜光虫見てきました~!!

渦鞭わっしょい、ノクチルカわっしょい、夜光虫はウミホタルではありません!

夜光虫ハンティング 前回のあらすじ

話は7月3日に遡ります。

3日早朝のニュースで「2日に鎌倉・七里ヶ浜で赤潮が出ていた」ことを知りました。気になって調べると、原因となる微生物は夜光虫(=ノクチルカ)とのこと。そこで3日の夕方に江ノ島周辺をうろうろしたけど それらしい光は確認出来ず。

当日は天気が下り坂だったのですが、天気が荒れてるとあまり光らないようなのです。仕方ないので、その日は かろうじて確認出来た赤潮の写真だけ撮って帰りました。

夜光虫を見るには日中から赤潮を追いかけるべし

やっぱり光ったところを見たかったので、その後も情報があればと狙ってましたが九州を皮切りに猛威をふるった豪雨の影響で観測の期待出来ない状況が続きます。

あんまり雨が続くと水温も下がるだろうから…と諦めかけていたところ6日にまさかの梅雨明け宣言、気温もぐんぐん上昇して参りました。

そして7日に千葉と都内で赤潮発生という目撃情報が…!!(ΦωΦ)

しかし慌てて飛び出して再び徒労に終わるとダメージが大きいので、悩んだ末 もう一日だけ晴れるのを待つことに。結果、8日は朝から照りつけるような陽射しで予想最高気温も各地で35度を超すかという勢いです。

午後になって光化学スモッグまで発令されましたがこれで夜光虫が見られるのはほぼ確実でしょう。うへへ。

【memo】

夜光虫を探すなら次のような点を狙うと良いようです。

  • 暑い時期
  • 晴れ続き
  • 潮だまり地形
  • 凪いでること

赤潮探しに いざ鎌倉

前回も書いた通り学生時代に藻類を専門とするラボに所属していたので、夜 光るところはもちろん、赤潮として観察出来る昼の姿にも興味があります。…なのでこの時期、仕事終えて出てきても まだ明るいのはとても有り難い。

逗子の夕暮れ

しかし、いざ海沿いまで来てみたものの、赤潮らしいものが見つかりません。前回同様、江ノ島方面に向かってしばらく流してみましたがさっぱりでした。orz

…う~ん、そういえば、昼に大磯で赤潮発生って情報を見かけたような…。大磯なら、今いる江ノ島周辺から 道なりにまっすぐですけどねぇ…。

大きな地図で見る

よし、決めた…!!

大磯とは逆の葉山にしよう(・ω・){湾地形の方が良さそう

森戸海岸

そもそも大磯だって本当にいるか判らない事を考えると湾地形でふきだまってそうな三浦半島側の方が可能性が高そうです。

…で、葉山来たらちゃんとノクチルカいました!

ノクチルカの赤潮

わぁい、赤潮。あかり赤潮だぁいすき。

沖合の赤潮

潮の香りとか完全に通り越して まったり臭いけど、無問題ですよね。そうです、幻想的に光る姿からは想像しにくいですけど結構臭いです。

夜の赤潮そして日没後の写真がこちら。

肉眼の印象に近づけるため調整しましたが、近くにライトがあって光が当たるとだいたいこんな感じです。

夜でも、しっかり赤く見えますね。

赤潮の中の夜光虫

波が立つたび、ほのかに光る青い光がとても美しいです。ウミホタルが体から発光物質をインクのように散らしていくのに対して夜光虫はそれ自体が光るようです。発光継続時間もほんの一瞬。

遠目には残像効果もあって面で光っているように見えますが間近に見ると割と粒状感があります。実際に触るとツブツブ感も判ります。早い話、おむつの中身がぶよぶよ浮いて光ってると思いねぇ…。

夜光虫まんが

夜光虫の光るさまは月並みな表現だけど幻想的

夜光虫

本当はザブザブ海に入った時がメチャクチャ光って綺麗だったんですけど防水カメラじゃないので怖くて寄って撮れませんでした…。(´・ω・`)

夜光虫を知らない人に青色LEDが仕込んであるって言ったら多分ほとんどの人が信じるだろうってくらいペカペカ光ります。ちょう楽しい。

この日、海がすごく凪いでて全然波がなかったので そのままの状態では「あっちでふわ、こっちでふわ」くらいしか光らなかった。それだけに砂を投げ込むなどして驚かせるとすんごく光ります。

撮影の反省点は色々ありますが、とりあえず撮れたので掲載。でも、まだまだ終わらんよ…ということで、この先は少々マニア向けです。

【contents】

【1:赤潮と夜光虫見てきた in 葉山 赤潮&夜光虫いた!】←イマココ
【2:赤潮と夜光虫見てきた in 葉山 顕微鏡だとこんな感じ】

2:赤潮と夜光虫見てきた in 葉山 顕微鏡だとこんな感じ

夜光虫(ノクチルカ)を顕微鏡で覗いてみよう~

夜光虫のアンプル
折角の機会に色々と観察したかったからほんの少しだけ頂いて参りました。

先日も書いた通り、夜光虫は渦鞭毛藻(うずべんもうそう)植物門というところに属する生き物です。学名の Noctiluca scintillans よりノクチルカとも呼ばれます。

でも藻類とは名ばかり(?)で、葉緑体を持ってない(から緑色じゃない)し、触手のばして他のプランクトンばくばく食べるし、変わり者の渦鞭毛藻の中でも更に変わりものみたいです。

20倍の拡大写真を撮ってみました。大きさは直径1mmを超えるくらいでプランクトンとしては大型でしょうか。

夜光虫の顕微鏡写真

こうして見ると多少ピンクがかっている程度で赤みはそれほど強くないです。夜光虫による赤潮は時にケチャップ色と呼ばれるほどの鮮紅になるようですがその場合の個体数は今回とは比較にならないほどの分量なんでしょう。

濾紙にあけてみる濾紙に出したノクチルカ

また、ネットでは漁業や生態系への悪影響を心配する市民の声もずいぶんありましたが手元の書籍を見る限り「よほどのことがない限り甚大な被害はない」という感じです。…とはいえ「影響がないわけではない」みたいなことも書いてあるので「どっちだよ」という話になるんですけど主な毒素はアンモニアとのこと。

リトマス試験紙
そこで取り出しましたるリトマス試験紙。

酸性かアルカリかしか判らないので試薬としてはあまり使い道がないんですけどたまに持ってるとこういう時に遊べるので無いよりマシな感じで持ってるとオススメです。

pH試験紙(ロールタイプ) pH1-14

小学校で使ったような赤青2種式じゃなく、一枚で細かく度数が判別出来るタイプもあります。割と高いから、ここぞと言うときに使うよろし。

でも後生大事に抱え込んでると湿気て色がわかんなくなるけどね。思いきって買った時は景気よく使いましょう。

実験結果

…で、まぁ、こんな感じに。

実験解説

青で囲った内側が夜光虫を濾した部分です。夜光虫に触れた赤色試験紙が青に変わり、アルカリ性を示していますね。

なお、実験手法が少々雑ですが外側の2枚は対照です。赤い試験紙は変わらず、青の試験紙が若干赤くなってるように見えます。外側の部分に夜光虫はいないので、(シートを介した)海水は酸性寄りと言えます。

ちなみにこの量で再濾過するとリトマス試験紙じゃ拾えない感じです。…というところで、原因成分がアンモニアだとして、多少魚が食べてもバタバタ死ぬような濃度ではないでしょう。(適当)

ただ、プレパラートに残されたサンプルはカバーかけてたのに数時間で細胞膜が破損して観察出来なくなったので状況次第では短時間で海水が汚染される可能性もありそうです。人や魚が心配でどうしようもない方は自治体や専門家に問い合わせて下さい。

夜光虫見に行った話まとめ

夜光虫

何だかんだ言って、とにかく綺麗です。今回しつこく検索しまくっていたら、小規模なノクチルカ赤潮は割と頻繁に発生してる事が判ったので、今後も折に触れて観察したいと思います。

皆さんも居合わせる機会があったら是非楽しんで下さい。(^^

【参照記事】

鎌倉に夜光虫【鎌倉に赤潮発生!夜光虫を見に行ったよ!】

先週、鎌倉で赤潮を観察したときの記録です。残念ながら光るところは見られませんでしたがコレはコレで良い勉強になりました。

天空の城ラピュタ 「光る飛行石  光のちから」(バルスモード搭載)

夜光虫 参考資料

夜光虫の発光反応はホタルなどと同じくルシフェリン-ルシフェラーゼ反応というものによるのですが渦鞭毛藻類のルシフェリンに関して面白い話を見つけたのでご紹介しておきます。

ヤコウチュウなどで有名な生物発光が本種でも観察されたそうですが, この反応には基質としてルシフェリンという基質の関与が知られています。 渦鞭毛藻類のルシフェリンはクロロフィル様の物質から合成されていると見られ, これまでは捕食した藻類のクロロフィルを原料に作られているものと考えられてきました。 しかし今回,餌として米粉のみを 1 年以上与え続けた培養系でも本種が生物発光を行うことが確認されたそうです。 (後略)

Yamaguchi, A. & Horiguchi, T. Culture of the heterotrophic dinoflagellate Protoperidinium crassipes (Dinophyceae) with noncellular food items. J. Phycol. 44, 1090-1092 (2008).

きまぐれ生物学 >> 雑記(ニュースなど) - 藻類学
http://www2.tba.t-com.ne.jp/nakada/takashi/scripts/phycol.html

米食ってても光るんですね…びっくり。(^^;

はるHABギャラリー >> http://www.geocities.jp/takayama_haruyoshi/japanese-contents/01taxonomy-html/noctiluca/n_scintillans.html
元水産試験場研究員 高山氏のサイト。微細藻類の記述が充実してます。

※ リンクは作者さんの希望でトップにしか貼れないのでURL参考にして下さい。

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