出来たてが違法?沖縄の島豆腐が「アチコーコー」で売ってる理由

10月2日は豆腐の日!…ということで知った沖縄・島豆腐が熱々の「アチコーコー」で売られてる秘密。実は豆腐を出来たてほやほやで販売すると食品衛生法に引っかかるみたいです。

出来たてが違法?沖縄の島豆腐が「アチコーコー」で売ってる理由

「10月2日は豆腐の日」で知った沖縄の伝統食品・島豆腐の話。実は沖縄が本土復帰する際に、島豆腐は販売禁止の危機にあったというのです。

本土復帰に伴い、島豆腐は食品衛生法上“アチコーコー(熱々)”は良くないと水にさらすよう義務付けられたが、関係者の尽力で“熱い豆腐”は守られた。
アチコーコーで健康印 きょう「豆腐の日」- 琉球新報(リンク元は掲載期限切れ)

話がよく見えませんが、一体どういうことなのでしょう?

島豆腐とは

島豆腐とは、沖縄のご当地製法で作られた豆腐です。「本土の豆腐よりずっと固く作られている」くらいの認識でしたけど、比べてみると製法そのものがかなり違うんですね。

島豆腐 木綿豆腐
豆乳の取り方 水に浸した豆を加熱前に絞る 水に浸した豆を煮てから絞る
触感 押し戻されるほど固い 押せば崩れる
店頭での扱い 暖かいまま販売 水にとって販売

特にこの、「暖かいまま販売される」という部分が問題みたいです。

ひろし屋食品 おばー自慢の 島豆腐 250g×10

暖かい豆腐の販売は違法?

とうふ!

厚労省のページで古い法律を探してみたら、豆腐関連の情報として「食品、添加物等の規格基準」(昭和34年厚生省告示第370号)という条項が見つかりました。

食品別の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)

この条文によって定められる豆腐の製造・販売基準は以下の通りです。

【豆腐の保存基準】
(1) 豆腐は、冷蔵するか、又は十分に洗浄し、かつ、殺菌した水槽内において、飲用適の冷水で絶えず換水をしながら保存しなければならない。
厚労省:「食品、添加物等の規格基準」

つまり成形後に冷水に放さない豆腐は豆腐として売っちゃダメらしいんです。

先の通り、島豆腐は出来たてを暖かいまま食べる習わしです。しかし1972年に沖縄が本土返還されたことで、島豆腐もこの法律の適用を受けることになってしまった。

その結果、伝統的な方法では販売許可が下りなくなってしまったのだそうです。うーん…ありがち。

そもそも「豆腐」とは何か

そもそも豆腐とは何を指すのでしょう? 先ほど挙げた食品の規格基準によると、豆腐の保存方法のみならず製造法にも言及しています。

豆腐の製造方法

(1) 原料用大豆は、品質が良好できょう雑物を含まないものでなければならない。
(2) 原料用大豆は、十分に水洗しなければならない。
(3) 豆汁又は豆乳は、沸騰状態で2分間加熱する方法又はこれと同等以上の効力を有する方法により殺菌しなければならない。
(4) 豆汁のろ過、凝固剤の添加及び豆腐の成型は、清潔で衛生的に行わなければならない。
(5) 豆腐の水さらしは、絶えず換水をしながら行わなければならない。
(6) 包装豆腐(豆乳に凝固剤を添加して容器包装に充てんした後加熱凝固させたものをいう。)は、90°で40分間加熱する方法又はこれと同等以上の効力を有する方法により殺菌しなければならない。
(7) 豆腐を製造する場合に使用する器具は、十分に洗浄し、かつ、殺菌したものでなければならない。
(8) 豆腐を製造する場合に使用する水は、飲用適の水でなければならない。

【要約】豆腐とは、純粋な大豆を、清潔な工程で、良く洗い、2分以上煮て、成形したのち飲料水に放したもの

つまり豆腐として売る以上、これらを遵守しなければならないってことですね。

「豆腐」を名乗れる例外的な食品

一方、「豆腐」を名乗ってはいるけれど明らかに豆腐でない料理も存在します。卵豆腐や杏仁豆腐などです。これらの「変わり豆腐」は水にさらして販売されたりしないでしょう。

もっとも、これらの食品は豆腐の基準規格による「夾雑物(余計なもの)」そのもので出来てますから「そもそも豆腐じゃない」のかも知れません。でも、豆腐の基準を満たしてなければ豆腐として売っちゃダメなのに、必要な材料を一切使ってないものが豆腐を名乗れるのも微妙な話ですよね。

うーん。

あえて豆腐「ではない」ものを作ったらどうなる?

例えばこれ、原料の大豆に胡麻をひとつまみだけ混ぜて製造したらどうなるんでしょうね?「豆腐と似て非なる食品」なので制限から外れたりしないんですかね?

ビールに対する発泡酒とか、この手のテクニックは見渡すと色々あるわけですが。私が当時の沖縄で豆腐屋やってたら何かちょろっと混ぜて売っちゃいますよね。役所に文句言われたら口八丁で追い返すよね。

でも沖縄の人達はそういう悪いことを考えなかったんでしょうね。(´ω`*)

守られた「アチコーコー」の島豆腐

実は最初の条文には続きがあります。

(1) 豆腐は、冷蔵するか、又は十分に洗浄し、かつ、殺菌した水槽内において、飲用適の冷水で絶えず換水をしながら保存しなければならない。ただし、移動販売に係る豆腐及び成型した後水さらしをしないで直ちに販売の用に供されることが通常である豆腐にあっては、この限りでない。

規制を受けた地域の人々が粘り強く交渉を続けた結果、伝統製法の豆腐に限ってその継続が許可されました。本土復帰から2年ほど後の1974年に特例が認められたのです。

かくて沖縄の島豆腐は「アチコーコー」のまま今も店頭に並んでるということです。あのレンガみたいな豆腐には、こんなドラマが隠されていたんですねー。

私、旅行先で地元のスーパー回るの大好きなんですけど、これは沖縄いったら是非買い食いせねばなーって思いました。(・∀・)

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旧題:10月2日は豆腐の日!壊滅の危機から蘇った沖縄・島豆腐