妖怪「それって何の役に立つの?」を撃退したい

「それって何の役に立つの?」を効果的に撃退する方法について考えてみた。

妖怪「それって何の役に立つの?」を撃退したい

先日「なぜ数学は役に立つかどうかだけで語られてしまうのだろうか」というブログ記事を読んだ。

ここでは数学がテーマとなってるが、本質的には何にでも応用できる話だろう。

「数学は役に立つ/立たない」について思うこと -
「数学は役に立つ」というと、その知識が直接仕事に使えなければならないような気になりますが、その狭い意味において数学が役に立つ仕事は限られています。より広い意味での「役に立つ」については、数学に限らず、何かを深く学んだ経験全てについて言えることなんだろうと思います。

何か一つのことを習熟した人は、あらゆる体験から自分が必要とする要素を取りだせる。ヒット商品の開発者が「旅行中の景色をヒントに奇跡的な設計を思いついた」などというエピソードはその好例だ。

にもかかわらず、自分が好きで取り組んでることに対して「何の役に立つの?」と茶々を入れられることは少なくない。そんな発言に苦々しく思っている人は多いだろう。

だが思い返して欲しい。

「それって何の役に立つの?」と問われて効能を熱弁したとして、どれだけの相手が「素晴らしい、私も挑戦してみよう」「あなたの活動を応援したい」と身を乗り出してきたのかを。

次々とやってくる妖怪「それって何の役に立つの?」を撃退しようと思っても、なかなか一筋縄ではいかないようだ。

自問自答における「何に役立つの?」の真意

まず最初に「一体これは何の役に立つの?」と自問する人の真意を探ってみたい。

例えば、別の表現で言い換えたらどうなるだろう。

What good will it do?
What is the good of doing it?

文字通りの意味を英語にするとこんな感じだろうか。しかし映画や小説なら It’s none of my business! くらい派手に変えても良さそうだ。

「そんなの私には関係ないもん!」

端的に言うと拒絶宣言である。

特に中高生の言う「数学なんて何の役に立つのよ!」がこれに近い。関わりたくないのだから、有用性が示されるにつれ自分の非が明らかになる。実利を並べ立てることは、説得の意味がないどころか反感しか生まないだろう。

そこで次点策として「進学の幅が減る」「仕事の幅が減る」などという間接的な効能で縛り付けて苦行を堪え忍ぼうとする一派が現れる。健康のために鼻をつまんでピーマンを丸呑みするのと同じようなものだ。

このように抑圧的な状況下では、

「嫌いなことは褒美がないとやってられない」
   ↓
「我慢して取り組むのだから役に立ってほしい」
   ↓
「良薬は苦くなければならない」となりやすい。

油で炒めたピーマンを出汁醤油で煮浸しにすると甘みが引き立って美味しいですよ(何

問いかけとしての「これは何の役に立つの?」

「私には関係ないことだ」という用例は、「何の役に立つの?」が持つ 数ある機能の一つに過ぎない。

2)純粋な質問

もちろん「これは何の役に立つの?」を文字通りの問いかけとして使う状況も存在する。人生で初めて認識した事象について聞く場合だ。

聞かれた方は「またか」と思ってしまいがちだが、相手はそれが何であるかも判らないまま興味を引かれて声をかけたのだ。こちらの回答次第では「自分もやってみたい」につながる数少ない好機と言える。

このケースで話が弾めば良好な関係を築けるだろうし、邪険に扱うと自分の首を絞めかねないので誠意を持って対応したい。

3)「私は楽して得したい」

世間話の一環で、相手の趣味嗜好を聞きだそうとする人がいる。

会話が弾む場合は2番の「初めて知ったが興味を持った」に準ずるので、ここでは間を持たせるためだけに質問攻めする場合を考える。

「この人とはどうも対話が成立しない。共通の話題も見つからない。」普通はここで友人としての可能性が途絶える

だが、趣味属性の実利を知ってはじめて食いつく人はどうなのか。「あなたこれ得意なんでしょ」なとど言ってタダ働きをさせられるのが目に見えている。こういう人に「使える奴だ」と思われてはいけない。

これは広義の搾取である。

4)無言の圧力

また、純粋な質問に対して不純な問いかけというのもあるだろう。

最初の用例で取り上げた「苦行と効能はセット」の視点を変えると、「有用性が立証できなければやる必要がない」あるいは「有用でないものは娯楽に過ぎない」となる。

転じて「お前が楽しい時間を過ごすことは許さない」という暗黙の圧力を生む。

申し訳ないが、反社会的な行為でないかぎり私の時間は私のものだ。正直知ったことではない。

私の対処法

「それって何の役に立つの?」という問いかけは、多くの場合こちらの主張に否定的だ。

  1. 出来ることならそれを避けて通りたい
  2. それを初めて認識した人による素朴な疑問
  3. 他人の能力にタダ乗りしたい
  4. こちらの言動を改めさせるための圧力

中立的なのは2番だけで、その他の多様な要求を一言で満たすには、広く納得されやすい圧倒的おトク感を演出する必要がある。

ぜい肉は腹の肉のみにあらず。夢中になれば財布だって心だって研ぎ澄まされるのだ。この際ぽっちゃりさんだって言い切ってしまえば良い。

相手にとって魅力があって、こちらが損しない提案であれば正直何でも構わないのだ。

ほとんどの相手が答えを要求しているのではない。目をぱちくりさせている人は放っておいて、笑って歩み寄ってくれた人を丁寧にもてなす方がよほど建設的だと思う。

【注】なお、自分と守備範囲が近い相手に言われたときは注意されたい。その人が全くの門外漢でない場合、無言の圧力は「あなたの説明が下手なので簡潔にまとめて欲しい」という意味に働くことがある。:;(∩´﹏`∩);: