タバコは無許可で栽培しても平気らしい

植物としてのタバコ(ナス科タバコ属)を一般人が栽培できるのかどうかについて、旧たばこ専売法と現行のたばこ事業法を比べてみました。研究用途の入手法が用意されてることなど、色々とびっくりした記録です。

タバコは無許可で栽培しても平気らしい

ナス科タバコ属の観賞用植物「ニコチアナ」(ハナタバコ・宿根煙草)を素人が育てても問題ないことは知ってたんですが、喫煙用の葉たばこについても特に禁止規定がないことを知りました。

農家じゃなくても入手可能だと言うことで、ちょっと驚いたので調べてみた記録です。

※本稿の記述は注釈がない限り2015年8月の現況に基づきます。法解釈など重大な間違いがあればご指摘下さい。

植物としてのタバコ

たばこを法的に規定すると、ナス科タバコ属である植物の総称です。成分にニコチンを含むのが特徴で、タバコ製造に用いられる系統のものを「葉たばこ」、観賞用に用いられる系統を「花たばこ」と言って区別します。

現在、花たばこは学名にちなんで「ニコチアナ」と呼ばれることが増えてます。ナス科としては珍しいバーバスカムのような草姿に、ナス科ならではのカリブラコアみたいな星状花がにぎやか。

ニコチアナ DBF352/60

あまり店頭で見かけることはありませんが、ガーデナー(≒マニア)向け種苗カタログでは毎シーズン1品種が掲載されるくらいの位置づけです。ヒマワリやアサガオなどの人気品目は何十品種と掲載されるので、1品種掲載は「一応扱ってます」くらいの感じと思って下さい。

ただ、農家向けの種苗カタログ(タキイのカタログがプロ用と素人用に分かれてた頃の話)でも葉たばこを扱ってるのは見た事がなかったので、登録者しか育てちゃいけないんだと思ってました。

旧たばこ専売法と現行のたばこ事業法

話はたばこ専売制の前後で大きく変わります。

たばこ専売法

昭和24年5月28日付の旧たばこ専売法によると、タバコ属の植物を無許可で育てる行為は明確に禁止されていました。

【たばこ専売法 法律第百十一号(昭二四・五・二八)】
第一章 第一条 この法律において「たばこ」とは、たばこ属の植物をいう。
第二章 第十二条 公社又は耕作者でなければ、たばこ苗を育成してはならない。
(大蔵・内閣総理大臣署名)

一般人が所持して良いタバコは製品としてのタバコのみ、育苗も耕作もダメ!と書かれています。

ちなみに防虫剤の樟脳も専売品だったんですね。

JT(日本たばこ産業株式会社)の前身である日本専売公社が1962年まで専売していたようです。今回たばこ専売法の条文を一通り眺めるまで知りませんでした。

たばこ事業法

一方、現行のたばこ事業法について見ると、タバコ属植物の育苗・耕作に関する記述がまるっと抜け落ちてます。(昭和五十九年八月十日法律第六十八号 / 最終改正 平成二五年一二月一三日法律第一〇三号)

耕作に関する規定を拾うと、育てた葉っぱはJTに買い取って貰うことが前提となっています。

【たばこ事業法】
第三条  日本たばこ産業株式会社(以下「会社」という。)は、毎年、その製造する製造たばこの原料の用に供しようとする国内産の葉たばこ(以下「原料用国内産葉たばこ」という。)の買入れを行おうとする場合においては、すべて、あらかじめ、会社に売り渡す目的をもつてたばこを耕作しようとする者(以下「耕作者」という。)と原料用国内産葉たばこの買入れに関する契約を締結するものとする。

周辺法に「たばこ耕作組合法」があるので、念のためそちらも見ると

【たばこ耕作組合法(昭和三十三年五月二日法律第百三十五号)】
第一条  この法律は、たばこの耕作者の協同組織の発達を促進し、もつて葉たばこの生産の増進とたばこの耕作者の経済的社会的地位の向上を図り、あわせてたばこ産業の健全な発達に資することを目的とする。

こちらも製造たばこ関係者しか規定していないように見えます。

つまり、この法改正によってニコチアナ栽培が広く認可されたのであれば、同時に葉たばこの栽培もOKという認識で合ってますか?

現行法下で規制されること

吸ったらダメ

たとえ栽培がOKだったとしても、加工したらアウトです。当然吸ってもダメ。自家用もダメ。ダメダメ。

【たばこ事業法】
第八条  製造たばこは、会社でなければ、製造してはならない。

もっとも、収穫後にキュアリングしたりフレーバーを足さないとまずくて飲めたものではないという話なので、試す価値はなさそうですが。

たばこ税のこと

あと専売法の署名欄にある旧大蔵省の文字も気になります。これ税務署も来ちゃうやつですね。

栽培可能(かも知れない)とは言え入手困難

何はともあれ種子が手に入りません。農家用の種苗カタログにも掲載されてないことは既に書きました。

契約農家はJTが交付

全国たばこ耕作組合によると、たばこ農家はJTと契約することで耕作面積に応じて種子が無償配布されるとあります。育成した葉たばこはJTが全量買い取る形態であることから、農家からの流出は契約不履行に当たるのでは。

小口譲渡は可能らしい

なにも好きこのんでヤバい橋を渡らんでも、JTに問い合わせれば譲渡して貰えるようです。申込書に記入して譲渡条件に同意すれば可能とのこと。

栽培種なら0.1g、野生種なら 0.01g程度らしいので、タネが極めて細かい事を差し引いてもそれなりの育苗環境が必要でしょうね。

輸入する場合

じゃぁ輸入したらどうなるでしょう。植物防疫所のデータベースによると、検疫通せば問題ないようです。

輸入条件に関するデータベース

ただし植物防疫法施行規則によると「輸入の禁止に該当するもの」についてキダチタバコが載ってます。

【輸入の禁止に該当するもの 別表二の二 キダチタバコ】
1 輸出国の政府機関により発行され、かつ、その検査の結果検疫有害動植物が付着していないことを確かめ、又は信ずる旨を記載した検査証明書又はその写しを添付してあるものであること。
2 1の検査証明書又はその写しには、適切な血清学的診断法又は核酸の塩基配列を検出するために適切と認められる方法による検査が行われ、かつ、Pepino mosaic virus に侵されていないことが特記されていること。

モザイクウィルス怖い怖い。><

キダチタバコは現在タバコ製造に使われる’ニコチアナ・ルスチカ’種や’ニコチアナ・タバカム’種とは異なりますが、本種もタバコ属であり原産地では喫煙に使われることもあるようです。

検疫と言えば、海外旅行で現地の植物を押し花にしたり、お土産に珍しい果物を買って来ちゃう人いますけど、レッツ検疫通しましょう。

たばこくず肥料と農産物への影響

ところで、魚粉や米ぬかをはじめとする有機肥料のなかに「たばこくず肥料」と呼ばれるものがあります。(農林水産省告示第 253 号「特殊肥料」)

独立行政法人農林水産消費安全技術センターの資料によると、次のようなものを言います。

種別:有機質肥料
名称:たばこくず肥料粉末
概要:たばこ製造の際発生するくず及びたばこの茎葉からニコチンを抽出したかすを粉砕したもの
成分:窒素1.0~2.0%、加里4.0~7.0%を含む

現物見た事ないんですけどメーカーサイトを見ると 2000円/15Kg とのこと。肥料としては結構高め。

抽出後のかすとは言えニコチンは水溶性なので畑に流れたら有害じゃないのかなぁ、ニコチン水溶液に虫かけたら悶絶して死ぬよね、と思ったら農水省にちゃんと規定がありました。

肥料取締法施行規則第十九条の二第一項の規定に基づく表示を要する普通肥料及びその表示事項

2 たばこくずが原料として使用された普通肥料:この肥料には、たばこくず(粉末)が入つていますから、桑園又はその付近において使用すると、桑の葉にニコチンが吸収されて、蚕に害を与えることがあります。

なるほど、お蚕様…。:;(∩´﹏`∩);:

昔「たばこの吸い殻を水に溶いて畑にまくと害虫駆除になる」って話があって、子供心に「ぎゃー!市販の農薬使って!」って思ったもんですが、たばこくず肥料を販売してるショップの説明に「ニコチンが防虫効果を発揮します」とか書いてあったので大人になっても「ぎゃー!登録農薬使って!」って思いました。(´・ω・`)

ニコチン
ファイル:Sipping Bird.jpg – Wikipedia

あと、たばこくずで検索したら安定の知恵袋で草。

園芸屋とかで、肥料用のタバコ屑、ってありますよね。あれに火をつけて吸う事はできないのでしょうか?

タバコ値上がりしますよね。だから、その対策として、タバコ肥料を吸ってみようと思うのですが、吸ったことある人いますか?
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1342117483

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禁煙したらいいと思うの。

タバコ栽培が違法かどうか調べてみた感想

ニコチアナ・タバカム
先日、旅先で見慣れない植物を見て「綺麗な草だなー」からタバコである事に気づき、「なんだタバコじゃなければ観葉植物でもいけそうだけどな」と思ったのがきっかけでした。

見たところ単純所持の違法性はなさそうなんですけど、タバコ苦手なので、正直言えば作付面積減ってくれないかなーと思ったり思わなかったりしています。

バルス
目が~

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