チョコレート大好きなんですけど、チョコレート産業は植民地時代から続く奴隷労働の温床という側面があります。特に原料のカカオは児童労働問題という文脈で語られることも多く、大量消費コンテンツを見るにつけ胸が痛みます。
こうした発展途上国の労働力を適正価格で買い支える仕組みがフェアトレード。しかし残念ながらその効果は限定的です。
現地労働力との差額が誰かの懐に消えていく可能性をゼロに出来ないし、補助の枠組みから漏れた農家が不満を抱けば新たな軋轢が生まれてしまう。
本質的な解決は、現地人件費の底上げしかないのでしょう。
カカオと児童労働
カカオが児童労働の温床となっているのは、カカオの植物学的な生理の影響が強いと言います。
水はけの良い土地と日陰を好むカカオの木は開墾による大規模栽培が難しく、大人の労働力を投入するほどのメリットがないのだとか。
村では画期的な現金収入源とのこと。、村人に直接渡されるカカオの価格を聞くと、たしかに良い値段で、カカオがないともっと貧しいままだったそうだ。家族全員で働き、子供の労働が直接収入を増やし、ようやく生活している現状。誰がどうしたら変えられるのか、少なくとも私には思いつかなかった。
— 丸山宗利ω (@dantyutei) 2017年2月13日
(´・ω・`)
コーヒーとカカオの類似性
他方、安価な労働力に頼った商品作物と言えばコーヒーもまたのその代表かも知れません。
ただしコーヒーは産地ごとに特有の風味があり、それぞれに一定のファンがついています。「商品作物に付加価値を付ける」という意味で、これはひとつのヒントになるのでは。
これまでコーヒーにおける「産地ごとの風味」は土壌や育て方による違い、いわゆるテロワールだと思っていました。しかし『コーヒーの科学(旦部幸博 著)』によると、収穫後の加工過程で生まれる発酵臭こそ重要な要素なのだと言います。
産地の湿度や伝統的な処理方式に従って固有の発酵条件が生まれ、地域ごとに独自のアロマに育っていく。
カカオもコーヒーと同様に、発酵過程を必要とする作物です。つまりここで気候を生かした処理を安定的に行えれば産地のブランド化を進めることも可能になるはずです。
実際チョコレート会社は風味の違いを出すために産地を使い分けてます。消費者にとっても、コーヒーやワインに似たこだわりを持てるようになる点で十分な魅力があるでしょう。
コーヒーの科学 「おいしさ」はどこで生まれるのか 旦部 幸博 |
ちなみに参考にした『コーヒーの科学』ですが、著者の旦部氏が理系研究者だけあってコーヒーに関する分析的な知識が網羅的に得られます。本当に文字通り網羅されてる変態っぷりがすごい。(褒)
一言で言うと「何も足さない、何も引かない、ただし特盛り」という感じ。断片的な事実を積分することで沼を拡張するタイプの人にオススメです。
「魚を与えるのではなく釣り方を教えよ」
「貧困に苦しむ人にただ魚を恵むのではなく、釣り方を教えるべきだ」
この場合の「釣り方」は何に相当するのだろうと思ったとき、月並みだけど農産業なので6次産業化を考えました。
6次産業とは「第一次産業+第二次産業+第三次産業=6」という主旨の造語で、農水産物を収穫だけでなく加工・流通までセットにすることを意味します。ブランド力を高めることで、中間マージンを生産に還元する効果が生まれるのです。
一般にカカオは原産地で収穫・発酵・乾燥が行われ、加工地へと出荷されていきます。例えばこれを現地でカカオマスの段階まで加工するとどうでしょう。カカオマスまで加工できれば、世界中のショコラティエと直接仕入れ契約を結ぶことも可能です。
学校を作って子供達にチョコレートの生産・流通に関わる一連の知識を仕込む。さらにチョコレート加工工場を作って卒業生をそれなりの額で雇う。学ぶべき要素は植物学、微生物学、機械工学、初等算数から簿記の概念など多岐に渡ります。所属ごとのマネージャーにもなれば、それぞれの専門分野で高等教育を受ける必要も生まれます。
児童労働が常態化している地域では、たとえ高給取りになれると判っていても目先の収入減に耐える余裕がなかったりします。働きながらでも学べる仕組み、即効性のある効率的な作業方法を学ぶ短期講習などのローカライズも必要でしょう。
短期的にも教育によって中間生産物であるカカオニブの製造品質や歩留まりが上がるでしょうし、コーヒーのように特別な生産工程を経たスペシャリテ・チョコレートだって選べるようになるでしょう。
大手の菓子メーカーだけでなく一般市民も産地でチョコを選べるとしたら、なかなか楽しげな未来です。
わたしにできること
…とはいえ、これは妄想なのです。私には金も権力もない。セレブならポンと学校と工場を建ててwin-win-winの創出が可能だったとしても。
結局、釣り方を教えたくても教える能力がないと魚を分けることさえ出来ないのです。
誰かポンと学校建てられるような金持ちがこれ読まないかな。ガーナで200人規模の学校を作るのに必要な費用は2000万からだそうですよ。
ピープルツリー フェアトレードチョコレート
社会問題をさりげなく切り出したいときにあざとく使えるオシャレな包装ですよ。 |
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