社会科見学と遠足の違い(大人編)

遠足と社会科見学の違いってどこにあるんでしょう?また大人の社会科見学って何を指すの?理工系施設を見るのも社会科見学って呼べる?…と言う件を分類しながら考えたメモ。

社会科見学と遠足の違い(大人編)

先日、とある科学研究所で開催されたイベントの感想を追ってたら「大人の社会科見学たのしい!」というコメントをちらほら見かけてちょっとびっくり。

テーマがサイエンスでも、社会科見学って言うものなんです?

自分の基準だと「社会科見学」は工場見学のようなものを指して、「研究所巡り」はサファリパークを散策するのと近い感覚だったので、ちょっと違和感ありました。でも科学館巡りを「社会科見学」に含める人がいるのも判りますし、何がどう違うのか考えてみたメモです。

遠足と社会科見学と校外学習の違い

大人の社会科見学を考える前に、学校の社会科見学について整理します。

日帰りで校外に出る行事

一般に「遠足みたいな行事」としてイメージするのは日帰りイベントです。

そこで、本稿では「学校行事のうち宿泊を伴わずに学校敷地外に出るイベント」を「遠足的な行事」と位置づけます。

遠足
体力の向上やレクリエーションの一環として行われる学校行事。位置づけとしては娯楽に体育要素をちょっと足した感じ。
社会科見学
工場見学や史跡など、人間の社会活動について見識を広めるための学校行事。社会科の要素が強い。
野外観察
動植物の観察や天体観測など、自然物の動きについて理解を深めるために行われる学校行事。実験未満の理科。
校外学習
科目を問わず(あるいは複合的に)学外で見学や体験を行う学習要素の強い学校行事。
課外授業
任意参加のワークショップや講演会など。正規の単位とならない時間外学習のこと。教科は問わず。

遠足と言っても、強歩大会のように遠征を主目的とするものから、自然公園の散策を楽しむものまで様々な運動強度があると思います。

以前は「遠足」「社会科見学」「野外観察」と属性ごとに呼び分けていたような各行事を、現在では複合的にすべて「校外学習」として扱うようですね。

修学旅行などは遠足や社会科見学から除外

一方、学校敷地外に出る行事のうち宿泊を伴う以下のイベントについては「遠足的な行事」に含まないものとします。

  • 林間(臨海)学校
  • 修学旅行
  • 部活等の合宿

ただ、小中学校関連の話題を追う限りでは林間学校的な行事も「校外学習」に含まれることが多いようです。カリキュラムの複雑化や授業時間の確保が影響しているのでしょう。

こうなると、「校外学習」という大きな枠組みの中に「遠足」「社会科見学」「野外観察」「林間学校」「修学旅行」などの各要素が断片的に含まれると考えた方が良さそうです。

大人の社会科見学と遠足

さて、本題です。大人の社会科見学です。

「大人」とは

まず何歳から「大人」と呼ぶかについて考えます。未成年でも就業している場合は大人として扱って良いでしょう。

次、大学生。大学でも授業の一環で学外に出ることはありますが、教養年次と分属以降では野外に出る目的が異なります。主に1~2年次で基礎知識の拡大などを目的とした「見学会」に参加することもありますが、3~4年次では卒論やゼミに使うための具体的なデータ取り(巡検・フィールドワーク)になるでしょう。

ここで分属前の「見学会」は校外学習に似た性質を持ちます。しかし論文等に直結するフィールドワークの場合、枠組みとしては「仕事」に近いものです。そこで本論では専門課程の学生を社会人に準じる立場として扱います。

社会科見学における「大人」とは、成人あるいは社会人とする

大人の社会科見学とは

ただ、社会人だろうが院生だろうが趣味で専門外のワークショップに参加したら社会科見学に数えるのが妥当です。

また、「社会科見学」の定義についても未成年における社会科見学の概念をそのままスライドして使えそうです。つまり「見識を広める目的で施設や史跡を巡ること」と考えて大筋の間違いはないでしょう。

「大人の社会科見学」とは、大人が専門外の施設で見聞を広めること

ただ、それでは冒頭の「サイエンスカテゴリの施設見学はどうなるのか?」という問題が解決されていません。

見学対象は理科?それとも社会科?

工場見学などは「社会科見学」で問題ないでしょう。理工系施設の場合は「ラボツアー」と呼びますが、確かにあまり一般的な用語ではありません。

見学者が「施設」や「職員の働きぶり」を見に来てる場合は理工系施設でも「社会科」の範疇に収めて良さそうです。

特にツアーガイドが用意されてないタイプの施設開放は「社会科見学」と受け止める人が多いかも。…ふむ。

大人の遠足とは

ここでいったん文理問題から離れて、大人のレクリエーションとしての「遠足」について考えます。

「遠足」を登山やハイキングなど言葉通りの体育会系イベントと捉えることも出来ますが、もう少し文化的な散策要素を考慮すると「美術館巡り」なども該当しそうです。

登山や美術鑑賞、両者は全く毛色の違う行為に見えます。しかし、どちらも自分の能力を使って目の前に現れた難敵を理解する要素を持ちます。その流れでは博物館や研究所のラボツアーも同類でしょう。

遠足とは、自分の足を使って散策を楽しむ行為と言えるかも知れません。

大人の社会科見学論まとめ

以上を暴力的にまとめたのがこちら。

見学 遠足
子供 見識を広めること 自分の能力範囲で散策すること
大人 見識を広めること 自分の能力範囲で散策すること

大人も子供もあんまり変わりませんでしたね。

知らない世界を知るのが「見学」、身につけた能力を使って一歩踏み出してみるのが「遠足」と考えたとき、見学を楽しめる人は散策に向かう日も近そうです。良いものを目撃しました。

そういう意味では、同じ体験をしてもガイダンスが不十分だと「見物」どまりになっちゃうんでしょう。イベント設営って難しいですね。