エッセイストのメレ山メレ子さんが主宰する昆虫テーマのカオスなイベント、昆虫大学に学務として参加してきました。2014年の購買部職員に引き続き2度目のお手伝いです。ちなみに学務は受付、購買部職員は売り子とも言います。(・∀・)
前回のレポートでは昆虫大学をご存じない方にも全容を伝えようとした結果、全く熱量が伝わらない文章になってしまってしまいました。当日の反響については既に多くの感想が上がってるので、今回は自分目線で好き勝手なことを書いていこうと思います。
昆虫大学2016とは
昆虫大学とは、虫好きの虫好きによる虫好きのための虫イベントです。グッズ販売あり、ワークショップあり、研究者によるトークありという多彩な内容。
昆虫テーマの博物館とデザフェスがくっついたものを想像してくれれば間違いないのでは。
全体の流れはこちらでどうぞ。
昆虫大学2016in横浜
昆虫大学2016in横浜〜1日目復習ノート〜 – Togetterまとめ
昆虫大学2017in横浜〜2日目復習ノート〜 – Togetterまとめ
昆虫大学・夜学
昆虫大学は回ごとにメインテーマとなる生き物がフォーカスされます。今回の主役はハエトリグモ。
「クモは昆虫じゃない」なるツッコミがメレ子学長のもとに5億回くらい入ったそうですが、民俗学的なことを言えば「虫」という言葉には「四つ足の獣ではなく鳥でもなく魚でもない生き物」という意味があります。数が多いことを示す「昆」とセットで「いろんなむし」ってことで無問題じゃないでしょうか。
アート系のイベントかと思いきや、専門家による熱い講義が聞けるのも昆虫大学の大きな魅力です。
刮目せよ! ~ハエトリグモの魅力と婚活事情~ / 須黒達巳
まずハエトリグモの生態で抑えるべき点は「とても視力が良い」こと。この一言でハエトリグモに関する様々な性質がすんなり入ってくる感じがします。
網を張るクモはネットの振動で五感を拡張できるから基本的に目が悪い。一方ハエトリグモは網を張らないので視覚が鋭い。ハエトリグモは求愛ダンスを踊ることで知られていますが、それもこれも目が良いからこそ成立する。他にも視覚を使って誘導したりすることも可能とのこと。
おぉ、わかりやすい。(・∀・)
それでいて交尾するとき「オスがメスに食べられる」種がいたり、「メスを麻痺させて動けない間に精子を送り込む」種がいたり、「オスがとにかく拝み倒してメスの気を引く」種がいたり、「飼育下の個体が求愛に失敗すると何故かカメラ目線になる」等の小ネタが、擬人化すると大分エグい。本当にエグい。
終始笑いの絶えないトークで全部メモしきれなかったんですが、詳しい講演内容は著書で追える構成になってました。
世にも美しい瞳 ハエトリグモ / 須黒 達巳 |
とにかく写真が美しいのでぺらぺらめくるだけでも楽しめます。どのページ開いてもハエトリと目が合うので、ハエトリワールドに鷲づかまれること請け合い。写真撮影のコツやクモにまつわる文化史的なコラムも載ってて読み物としても興味深いです。めっちゃオススメ。
病みつき!?トンボ撮りへの誘い / 尾園暁
トンボを撮影するためのテクニックをいろいろとご紹介頂きました。
…が。上手く撮れる気が全くしないので、プロの技術で撮影された美麗な写真をありがたく拝見するのが無難という気もいたします。「低い姿勢でゆっくり真っ直ぐ近づいて」のが寄るコツだそうです。
技術はもちろんのこと、生態を知ってるからこそ良いポイントが狙える感じなのでは。まずはトンボ好きになるところからでしょうね。
ぜんぶわかる!トンボ / 尾園 暁, 二橋 亮 |
生物画家 川島逸郎氏 講演
標本画と写生の違い、一本の論文に何十種も描画する上で心がけてるポイント、使ってる画材などについてのお話がありました。
標本画とイラストの違いについては私も苦い思い出があって、学生時代に標本スケッチを課せられて単なるイラストを描いてしまったことがあります。構造への理解が甘いとそのまま筆致に出てしまう感覚すごく判る。
その一方、伊丹市昆虫館学芸員の長島聖大さんが「川島さんが同じ虫を複数描いたら全く同じ絵が出来上がる、つまり再現性のある科学的な絵だ」というようなことを仰っていて、川島さんの理解が桁違いであることに驚愕したのでした。
もしもカブトムシと相撲をとったら!? / 川島 逸郎 |
ぼくたちが一生抱きしめるたからもの / 長島聖大
ピンセットの達人「おぴんぴんおじさん」としても知られる長島さんのカメムシこぼれ話です。
カメムシ図鑑を出版したところ、岩手の小学校から「学校周辺のカメムシ図鑑を作ったので見て欲しい」なる手紙が届いたそうです。そこで実際に会いに行ってみた…という旅の顛末でした。地元の人に歓待を受けたり、学校の展示には子どもたち独自の工夫があったりと、心温まるエピソードがたくさん。
「本を書いて読者から反応があると本当に嬉しい」とのことでしたが、こんな反応が返ってきたらめちゃくちゃ嬉しいでしょうね。(´ω`*)
日本原色カメムシ図鑑―陸生カメムシ類 |
虫と私の新・昆生活 / 蟲喰ロトワ
蟲ソムリエとして数々の虫を試食しておられる蟲喰ロトワさんの昆虫食トーク。
日々Twitterを拝見しているので、「トビイロスズメのイモムシはグリーンシャウエッセンと呼ぶにふさわしい」やら「生ごみ処理コンポストとしてGを飼育するのは合理的」などの先鋭的なコメントにもそれなりの耐性があるつもりでした。
【昆虫食】虫食いフェスティバルで純白ゴキブリ食べてきた!
…んが、「展翅してから焼き上げたバッタのピザ」まで来たところで思わず吹いた。
何度反芻しても破壊力がすごい。「展翅してから焼き上げたバッタ」。そう言われてみれば確かに足が整えられたピザの写真を見た覚えがあります。
秋の虫ピザver.2013 展足してからトッピングするだけでこんなに美味しそうに! pic.twitter.com/rkrSlBxTjx
— 蟲喰ロトワ (むしくろとわ)@昆虫大学 (@Mushi_Kurotowa) 2013年9月23日
更に検索したら蟲喰ロトワさんのブログに詳細が載ってたぜ。
蟲ソムリエへの道 秋の蟲ピザ2013
調理された虫の「形」に対する嫌悪感というのは「死体感」ではないでしょうか。基本的にヒトは調理加熱して他の生物を食べるので当然「死体」食べているわけですが、「死体」を「食品」とみなすには、文化的な刷り込みが必要です。(中略)
そこで「形を残したまま死体感を減らす工夫」が必要だと考えました。(中略)
つまり
「展翅することで整然とした印象を与え、死体という無秩序な不快感を減らすことが出来る」
www お w な w か w い w た w い www
死体感が減ることによって躍動感が復活し、恐怖が増強される可能性については考えなかったのでしょうか。切り身は平気だけど、顔がついてる干物や姿作りはダメって人いますよね。
エビみたいに頭と足をもいだら、それなりに形を保ちつつ既存の「食品らしさ」を演出できる気がするけどどうなんでしょう。
原形を留めない昆虫食と言えば、このとき夜のデザートに「バッタもなか」が配られました。虫の形は一切なくて、見た目は普通の最中です。昆虫はエビカニに近い生き物なので、アレルギーチェックの同意書もついてるという徹底ぶり。
しれっと「タイ産バッタパウダーにイナゴソース混ぜました」とかアナウンスされてましたが、そもそもバッタパウダーって何なんだ。とりあえずバッタやイナゴ特有の草の香りがして普通に美味しいです。大麦若葉青汁にナンプラー入れたらこんな感じかも。香りだけなら草餅と言うより、味噌あん柏餅の方が近いような気がしました。
後半は、虫と共同生活するにあたって脱走対策に工夫を凝らしたりする話(なのかな…)?
捨て身のネタ全開でどこまで公にして良いのか判らなかったのですが、質疑応答タイムが鎗の雨だったことだけご報告申し上げます。
とりあえず奥様のセリフがいちいち名言すぎた。末永くお幸せに!(・∀・)ノ
昆虫発酵調味料イナゴソース イナゴソース1号2号 |
突然の特攻服
今回とにかく耳目をさらったのが『日本野虫の会』代表とよさきかんじさんプレゼンツの特攻服でした。オオムラサキがキュートすぎてヤバい。
遂に出来上がっちまったぜ…日本野虫の会の“特攻服”が…!見てるだけで偏差値がガタ落ちするヤバさだ…! しかも #昆虫大学 の体験型イベントとして、来場者のみんなもコイツを着たり写真を撮ったりできるんだぜ!? ちなみに背中と全面右のイカしたポエムは昆虫大学の校歌だから夜露死苦! pic.twitter.com/atkcKGHmHX
— 日本野虫の会@昆虫大学ありがとうです (@panchichi3) 2016年12月11日
昆虫大学開講を前にTwitterタイムラインの面々が「やっぱヤンキーメイクだよね!」みたいな話をしてたので私もウキウキしながらライダースジャケットにサングラスして行ったんですけど、いざ会場に着いてみたらみんな普通に虫シャツ着てましたよね。
裏切り者め!(⊙Д⊙)
「いつもと雰囲気違いませんか?」「いや、だから特攻服を着るためにですね…」「あっ、だからケバいんですね!」みたいな会話を4~5人としました。ウェ~イ。
小田隆先生のライブドローイング
会場には古生物復元画家の小田隆先生もお見えになってて、「ヒマだから」とライブドローイングを披露。(⊙Д⊙)
本当にアタリも取らずササッと描いてて彫刻家みたいだなぁと思った次第です。
そして「えっ、これ着なきゃいけないの?」と言いつつめっちゃノリノリで特攻服に袖を通す小田先生。
ちなみに特攻服とセットで映ってるマスクは革工房『あまのじゃくとへそまがり』さん制作のものです。あまのじゃくとへそまがりさんの作品は生き物の特徴を捉えててほんと素晴らしくて、以前売り切れで悔しい思いをしていたプラナリアも入手できて嬉しい。(๑•̀ㅂ•́)و
突然の所十三先生
で。
小田先生の呼びかけで『特攻の拓』でお馴染みの所十三先生も遊びにいらして一時は会場が騒然となりました。
「なんで所先生が!?」という声があちこちで上がってましたけど、所先生といえばヤンキーの次が恐竜ですよ! m9( ・`д・´)
恐竜漫画『DINO2』本誌連載時のはみ出しコラムでは作画根拠となる学説をどう解釈したのかについて事細かに示されてたと記憶してます。筋金入りの生き物好きやで。
DINO2 The Lost Creatures / 所十三 |
いつもはクールなクマムシ博士が「おちさん見て見て~」って背中をビシッと向けてきてびっくりしました。「白衣と特攻服は似てる」と思ったのは私だけではないはずだッ。
クマムシ研究日誌: 地上最強生物に恋して / 堀川大樹 |
大人気の箔押しブース
昆虫大学の一角には歴代の学章スタンプが捺し放題という人気コーナーがあるのですが、今回はなんと箔押し体験まで出来る始末。箔押しですよ箔押し。意味が判らなすぎて私も財布に学章入れちゃいました。かっこえぇ…。タカイ工作大臣ありがとうございます!(´;ω;`)
…っていうか、SDカード確認したら二日にわたって何時間も滞在してたのに、夢中になりすぎて写真100枚くらいしか撮ってませんでした。カメラ勢なら2日で100枚がどれだけ少ないか判るだろう。あれもこれも素敵なものを撮ってなさすぎた。死ぬ。
まとめ
とにかく会場全体の熱気が凄くて本当に楽しい空間でした。メレ子学長&運営の皆さんありがとう。(∩* ´ ω ` *∩)
私自身の虫への興味は植物につく病害虫から始まっているので甲虫とか全く知識がないんですけど、蟲喰ロトワさんや石川県ふれあい昆虫館の福タマさんに「僕らも自分の専門以外は怪しいもんですよ」的なこと言われて、良い意味で「お前らと一緒にすんじゃねぇよ!(⊙Д⊙)」って思いました。
「専門家が謙虚であれ」とは言わないんだけど、謙虚な専門家の存在は尊い以外の感想がないです。
どこを見渡しても他人のジャンルをdisることなく興味津々に傾聴してて、それ眺めてるだけでも相当幸せな気分になれました。なんかもう本当みんな笑顔で良すぎた。
会場全体が虫に夢中になってる間、私も「四つ足ではなく鳥でもなく魚でもない生き物」の群れをずっと観察してたような気がします。
今回「(特攻服を着て)偏差値を下げよう」というのがサブテーマみたいになってたんですが、頑張ってアホにならなくても「カワイイ」「スゴイ」「面白い」「キャー変態」だけでほとんど会話が成立してましたよね。
ときめき昆虫学 / メレ山メレ子 |
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