先日のNHK『あさイチ』で性暴力問題が取り上げられたようです。
その際、視聴者の70代男性から「死ぬ気で抵抗すれば防げる。性交が成し遂げられたのは、女が途中で諦め、許すからである」などの意見が寄せられたとのこと。
仮に全力で抵抗したとして、自分より重い人間をひっくり返すのがどれだけ大変か判ってないのですね…。もうほんと絶望感がすごい。
70代なら若い頃に学校で柔道やってますよね?何階級も上の人に押さえ込まれて逃げ切れるのはほんの一握りの人だけです。もし数十Kgの体格差をひっくり返すだけの実力を持つ人なら、それがいかに特殊技能であるかを知ってるはずです。
薬を盛られたり、刃物で脅されていればなおさら抵抗なんて無理でしょう。ちなみに刃物を持った相手に丸腰で立ち向かうのは格闘技経験者でも命の危険を伴います。
個人の努力ではどうにもならない問題を自己責任で片付けるのは、もはやただの暴力です。
自分より大きい相手から逃げるということ
自分よりはるかに大きい人に襲われたら、男性でも恐怖を感じるはずです。多くの女性にとって世界は自分より大きな人で溢れてますし、小柄な人の場合は倍近い体重の人がゴロゴロいる環境で生活してます。
そう言う世界で安心して生きていけるのは、社会が秩序で守られてるからに他なりません。
私がしょっちゅう痴漢に遭ってた高校時代、身長は小5女子の平均値くらいしかありませんでした。運動部で男子と同じ練習メニューをこなしてたので体力は男子並にありましたけど、それでも成人男性に追いかけられるの怖いです。
たとえ筋力が同レベルでも、体重とリーチの両方で負けてたらまともな勝負になりません。
迂闊に懐に入って押さえ込まれたらほぼ確実にアウトです。運が良ければ抜け出せますが、重みに抗うだけでゴリゴリ体力削られます。体格差はそれくらい大きいハンデになる。
しかも小柄な女性の多くは運動経験がありません。筋力に至っては平均的な男性の半分にも満たないことがほとんどです。
この不利な状況をひっくり返そうとしたら、気付かれないように武器を探すか急所を狙うくらいしか思いつかないのですが、冷静な判断で相手の動きを潰しに行くと過剰防衛で傷害罪を取られる可能性があるので悩みます。
どうにか相手がひるんだ隙に逃げる作戦を取る場合、走る体力を温存しておかないときついです。中途半端に暴れると押さえ込まれて完全に身動きが取れなくなるので、油断を誘って一回で確実に振り切らなければなりません。
小柄な人が暴力から逃げおおせるのは本当に大変なことで、だからこそ力を乱用した側を第一に糾弾すべきと考えます。
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自己責任論と想像力の欠如
残念ながら、世の中には個人の努力ではどうにもならないレベルの被害にまで自己責任論を振りかざす人が存在します。
そこで、つい反射的に「もしあなたが同じ被害に遭ったらどうするのか」と思ってしまうのですが、経験上こういう人達は「私はそのような被害には遭わない」「私は絶対に屈しない」のどちらかを返してくることが多いように思います。
「もしも」の話をしてるのに、その仮定条件に自分の思考を置くことが出来てない。
変化球として「あなたの親しい人が被害に遭ったらどうするのか」という用例もありますが、自分の子供が痴漢に遭っても「そんな風に制服を着崩すからだ」とか言う実例を知っているので、こちらもあまり効果はなさそうです。
制服を着崩すのはむしろ痴漢に対する威嚇行為で撃退効果があるんですけど、直感に反する事実をなかなか受け入れようとしないわけです。
どうして自説を改めようとしないのか。きっと相手の立場に立って考える想像力がないのだろう。長い間、そんなふうに思っていました。
でも、もしかしたら自分以外の人間に全く興味がないのかも知れない。たとえ血を分けた肉親でさえも。
そう考えるようになってずいぶん気持ちが楽になりました。
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自己責任論者から逃げる方法
互いの能力を補いながら高みを目指すのが文化的な社会だとしたら、自己責任論はその対極に位置します。
誰かの助けを必要としないくらい強靭な人なら結構ですが、他人に手をさしのべる余裕がないほど自分のことだけで手一杯なのかもしれません。
もし本当に他者との交流に興味がないなら、私だって彼らに興味がないのです。人生のリソースは有限なのだから、対話によって新たな関係を構築してくれる人に時間を割くべき。
ただし暴言で人のメンタルを削ってくるのはどう考えても暴力です。人の縄張りに土足で踏み込む行為には異を唱えなければなりません。
以前は退魔の呪文として「本当お前バカじゃねぇの?」に類する表現を使ってたんですけど、最近いいのが見つかりました。
「お前の意見なんか聞いてねぇよ」です。
聞く耳持たない人に向かって腹を立てるだけ無駄なので、体力を温存しながら距離をとるのがおススメです。
Imagine ジョン・レノン |
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