コンニャクはノンカロリーとか0kcalと言ったな、あれは嘘だ

コンニャクはノンカロリーというより「よくわからん」が正確なのでは。

コンニャクはノンカロリーとか0kcalと言ったな、あれは嘘だ

原材料そのままでは食べられないのに、散々手間をかけて加工した挙げ句に出来た代物が0キロカロリーという脅威の物体、コンニャク。

でもコンニャク作ってる会社の方が「苦労して作っておいて栄養がない」とか言ってるのを見てしまい、コンニャク好きとして悲しみが止まりません。

人間にコンニャクを分解する能力が無いからと言って、コンニャクが分解できないと思ったら大間違いだッ!( ・`д・´)

ノンカロリー・マジック

コンニャクの面白さを説く前に、まず「ノンカロリーの嘘」について触れておきましょう。

医療・食品・スポーツ関係者の間では有名な話だと思うんですが、食品表示の「ノンカロリー」は0kcalではありません。ついでに言うと「1kcal未満」でもありません。

正解は「100gあたり5kcal未満」を意味します。このとき「ノンカロリー」を名乗れます。(液体の場合は100mlあたり)

これは国が定める健康増進法の基準に由来します。世界基準では「100gあたり4kcal未満」と更に厳しくなるようです(FAO:国際連合食糧農業機関のガイドライン CAC/GL 23-1997 より)。

0に何を掛けたって0ですが、正の実数は掛けただけ増えますからね。「0カロリーだから」と通常の何倍も食べてたら、思わぬ健康被害を招くかも知れません。

食物繊維は消化されずに排出される?

とはいえ、100gあたり5kcal未満なら大量に食べても限度があります。よほど深刻な内臓疾患がない限り、神経質になる必要はないのかも知れません。実際には「ノンカロリー食品」より上位カテゴリの「カロリー控えめ食品」のほうがずっと悪影響ありそうですし。

ダイエットこんにゃくチップ

それより扱いが難しいのは、コンニャクに含まれる食物繊維です。

食物繊維とは

食物繊維とは、「人間の消化酵素によって分解されない食品成分」の総称です。

つまり食べても栄養としてヒトが吸収できない。コンニャクの場合に該当するのが、多糖類の一種「コンニャクマンナン」です。

ここで、人間が直接分解できなかったとしても、間接的に分解できる場合があります。いわゆる腸内細菌のしわざです。そしてコンニャクマンナンを消化できる腸内細菌の存在は、既に報告されている。

「細菌がコンニャク食べてくれるなら、やっぱコンニャク0カロリーじゃん」という気もしますが、細菌がコンニャクをエサにした結果、良い感じの副産物が出来ると人間もエネルギーとして利用できます。

あらやだ、エネルギー革命ですね。

【PDF】On Mechanism of “Konjac” Mannan Metabolism by Gastrointestinal Bacteria

食物繊維と血糖値

ヒトが消化できないはずの多糖類からエネルギーが取り出せるとなると、気になるのは血糖値です。お役所で配ってる保健情報なんかにも「急激な血糖値の上昇を予防するためコンニャクを活用しましょう」とか書いてありますし。

それについては面白い研究があって、米としらたきを一緒に食べて血糖値を計ったところ、純粋な白米より しらたきごはんの方が高かったそうです。腸内細菌によってグルコマンナン(=コンニャクマンナン)が分解され、結果に影響したのだろうという考察でした。

誤解がないように言っておくと、純粋な白米の方が血糖値のピークは高かったです。しらたき入りごはんは緩やかに上昇して穏やかに下がってました。コンニャクマンナンが急激な血糖値の乱高下を防ぐ働きをもつのは事実と言って良さそうです。

【PDF】Effects of Glucomannan and Konjac Noodles on the Blood Sugar Level of Cooked Rice

コンニャクは腹持ちがよい?

玉こんにゃく
この件で思い出すのが山形県の郷土料理「力(ちから)こんにゃく」です。

はじめて山形の友人に勧められたとき、「醤油で煮付けたコンニャクにパワーもへったくれもあるかよ」と思ったものです。

しかし、経験的にコンニャクは腹持ちが良いと言われてますね。これを「腸内細菌の働きによって持続性の高いエネルギーが得られる(体質の人がいる)」と読み替えれば納得できます。

非常食はまずい

あと、コンニャクにまつわるもう一つの謎が「なんでこんな面倒な製造工程の食品を作ったのか」じゃないでしょうか。

自分が一番支持してる説は「救荒作物はマズくなければならない」です。美味しいと平時からパクパク食べちゃいますから。

米軍が太平洋戦争の際に配給していた軍用チョコレートも「なるべくまずく作ってくれ」という依頼で開発されと伝えられてます。

「なぜあんな毒草を食べる気になったのか」で有名なヒガンバナも、同じ理由で説明つきます。植えっぱなしでどんどん増えて、虫やネズミに食べられることがありません。

飢饉で食べるものがなくなってもうどうしようもなくなったとき、ヒガンバナやコンニャクだったらほぼ確実に手に入るわけですよ。かなり有り難い存在だと思いませんか?

コンニャク粉 蒟蒻つくりませんか

面白いですよ。

コンニャクの秘密まとめ

…ということで、私が知ってるコンニャクの特徴をまとめるとこんな感じです。

  • コンニャクはエネルギーになる(人もいる)
  • 得られる熱量は持続的
  • 救荒作物として非常に優秀

たとえ作るのが大変だとしても、それだけの価値がある食品だと思うのですがどうでしょう。そういえばコンニャクの他にも海藻を分解できる腸内細菌というのがいて、日本人の保有率は高いそうですよ。

あなたの食べた「ノンカロリー」、実は幻なのかも知れません。