女性声優が所有するスマートフォンに月経日を記録するアプリ『ルナルナ』がインストールされてたと、炎上騒ぎになってたようです。
炎上の真偽はさておき(後述)、それを見ていた一部の視聴者が「生理気にしてるとか間違いなく非処女」などの反応を示したとのこと。これに対してTwitterでは「キモオタまじキモい」「これだから男は」といった女性からの怒りが大爆発してました。
…が。注意深く意見を掘り下げていくと、ルナルナを使う男性も少数ながらいるようなのです。
えっ。ネットでたまに見かける男の生理って、本当にあるの?
男がルナルナを使う理由
観測したうち、ルナルナを使っているという男性の行動パターンは主に2種類ありました。
彼女の生理周期を把握
彼女の生理周期を把握しておくと、機嫌の悪い時期が事前に判って便利だそうです。
これは彼女さんとの関係性によって相当きわどいパターンになりそうですね。彼氏が少女漫画クラスの正統派王子なら超スマートにエスコートして貰えるかもしれませんし、ゲスなら三文エロ漫画になる予感がいたします。
狭い交友範囲だと「性的タブーが少ないカップルほど揉めない」印象があるので生理の話くらい共有すればいいと思うんですけど、同時に「体の相談は信頼できない人にすべきではない」も持論なので見極めが難しいところです。
理想を言えば、生理だろうがインフルエンザだろうが骨折だろうが「いま調子わるいからごめんね」の一言で解決できれば良いですね。有給休暇の取得理由だって、本来は申告する義務などないわけですし。
自分の衝動周期を記録
一方、目からうろこだったのがこの使い方。
女性のPMS(月経前症候群)に着想を得て、衝動買いやら唐突にドカ食いしたくなったときの記録ツールに使う男性がいるようなのです。
どこまでネタなのかわかりませんが、長く続けると一定の規則性が見られるとのこと。まぁ、男性にも周期的なホルモン分泌変動があるとか言いますからね…。
「女性特有の症状」という思い込み
真面目な話、女性特有の病気だと思われている乳がんだって実際は男性も罹患するのです。女性患者との人数比で言うと1%程度なので少数派には違いませんが、確率統計的には切り捨てちゃまずいレベルの数字です。
【PDF】10年間で経験した男性乳癌5例の臨床病理学的検討 – jstage
男性の更年期障害も、近年だいぶ取り上げられるようになりました。
…と言うことは、私が無知なだけで男の人にも月経様の体調不良があるかもしれないわけですよ!(⊙ω⊙)
男性と月経
結果から言うと、男性にも月経があるかどうかはわかりませんでした。正確には「男性特有の周期的なホルモン分泌変動によって引き起こされる体調不良」について、私の力量ではまとまった症例を見つけることができませんでした。
ただ PubMed と GoogleScholor にあれこれ検索語を突っ込んだところ、いくつか興味深い情報が引っかかったので備忘録として記録しておきます。
トランスジェンダーの場合
男性に生理はないと言いましたが、FtM型の性同一性障害(体が女性で心が男性)だと生理がくる人もいます。
ホルモン治療してても来ることがあるのは知っていましたが、中には生理痛がかなり激しい方もいるのだとか。FtMさんは軽い人が多いと思いこんでいたので認識を改める必要がありそうです。
ちなみにFtMはホルモン治療における適切な用量が確立してないらしく、それというのも乳がんや子宮がんの発生割合が一般女性と比べて低い傾向にあるからで、なぜかと言うと生殖器の摘出による影響が大きく個別対応になるためだ…というレポートを読んで暗澹たる気持ちになりました。
第三者が勝手に同情したら失礼かも知れないのですが、対処療法が心身ともにきついのは想像に難くないですからね…。
Clinical dilemmas in the management of transgender men. – PubMed
月経に関する男性の意識調査
もともと月経の記録アプリが燃えた背景には「生理周期を把握すること=避妊対策=ビッチ」という謎の図式が関与しています。
生理周期の把握は「定期的に訪れる体調不良に大きな予定をバッティングさせないためのスケジュール管理術」という効能が大きいのですが、オギノ式を避妊法とみなす過大な期待(という名の誤解)は根深いようです。
「女性との交際歴があれば生理の苦労は知ってそうなものだけど」「これだから女を知らない童貞野郎は」などの苦言とセットになりがちですが、ここで残念なお知らせをひとつ。
中高年男性に対する月経の意識調査によると、既婚者が含まれるにもかかわらず大した知識を持ち合わせてないことが判りました。閉経女性に対する印象も「妊娠しなくなる」「太る」「美の喪失」くらいの認識で、目下の興味も今後の自分の性生活に関する心配だとか。ちなみに更年期女性に有効な治療法を知っている男性は皆無だったようです。
トルコの調査なのでそのまま日本人に読み替えるのは乱暴なのですが、日本と比べてずっと結婚が早い地域だと考えるとなかなか辛いものがあります。
A qualitative study on menopause described from the man’s perspective. – PubMed
一方、13か国にわたるヨーロッパ男性の意識調査ではパートナーの月経期間を概ね正しく認識してるという結果が出てます。普段から意見を共有してるからだろうという分析でした。
Male perception about the inconveniences associated with monthly bleeding for their partner – an international survey. – PubMed – NCBI
つまり互いの理解のためには話し合いが必要であり、同居期間に応じて自動的に正しい知識が身につくわけではないと推察されます。
ちなみに、男性の更年期障害の場合は加齢による男性ホルモンの減少が原因とされています。中高年男性が謎の体調不良を感じたら、内科より泌尿器科に行ったほうが話が早いかもしれません。
衝動買いと性ホルモン
衝動買いの研究なんてあるのかいな…と思いきや、どっこい不安障害の一種として扱われます。カウンセリングを要する重篤な症状だとして数多くの研究結果が出てきますね。
有病者の8割が女性で、大多数が10代後半から20代前半で発症するとのこと。摂食障害などと併発するケースも多いようです。
試しに代表的な性ホルモンを複合キーワードに突っ込んでみたところ、性差と消費者衝動を関連付ける研究もそれなりに出てきました。議論は多岐にわたり、本文じっくり読まないと安易に判断できない問題なので結論は保留とします。
まとめ
男性にも月経があるかについて調べましたまとめ。
男性ホルモンの日内変動と季節変動に関する研究は結構あったのですが、一か月スパンで調査したレポートはあまり見かけませんでした。月内変動は誤差範囲という理解で良ろしいでしょうか。
性ホルモンと消費者衝動の関係性については様々な議論があるようなので、もし相互作用があるのだとすれば男性は年間を通じた購買計画を立てるのが吉かもしれません。
いずれにせよ決定的な結論は出てないようなので、今後の展開が注目されます。
ルナルナの件で「衝動的に○○(寿司・ケーキ・ゲームなど)がしたくなったときの記録に使ってるんだけど、なんとなく周期性が見えるようになってきて興味深い」との男性が散見され、イグノーベル賞まったなし。
— 所長おち (@02320_ochi) 2018年9月10日
ルナルナで炎上騒ぎは起きたのか
炎上騒ぎを横目に日付絞ったりキーワード絞ったりいろいろ検索してみましたまとめ。
とりあえずTwitterでめちゃくちゃ燃え上がってた時に声優さん宛のコメントを拾ってみましたが、ファンからのきわめて平和な内容の会話しか出てきませんでした。
確かに心無い視聴者はいたかもしれませんが、炎上というほどの騒ぎは実在しなかったのではないかと思います。
何と言うか、流行とは誰かが意図的に作り上げる幻なのだとおもいました、まる。
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