男性に多い電車内における開脚症候群と寄生虫にかかる科学的考察

公共交通機関で足を広げて座る男性の一部が主張する「睾丸冷却健康法」の病理について考察する。

男性に多い電車内における開脚症候群と寄生虫にかかる科学的考察

ヒト科ホモサピエンスの一部には、必要以上に足を広げて座る習性をもつ個体が散見される。

この開脚座位はオスを中心に観察される行動で、一般にはコミュニティにおける権力誇示としての意味を持つ。

しかし20世紀以降、社会的な優位性の意思表示とは異なる主張をする個体が現れた。電車内で股を広げるオスの一部は「医学的理由により仕方なく睾丸を冷却しているのだ」という。

自らの体温さえ脅威となる生殖器官とはいかなるものであろう。果たしてそのように貧弱な個体はメスから見て魅力的に映るものだろうか。

この謎を解明すべく、我々研究班一同はアマゾンの奥地へ飛んだ。

男性の精力向上と金冷法

古来より伝わる男性向け鍛錬の一つに「金冷法」というものがある。

これは熱に弱いとされる精子の活動を高めるため、わざわざ氷嚢(ひょうのう)や水風呂などで睾丸を冷やすという健康法だ。

ヒトの睾丸は血流量の多い鼠径部から隔離されており、十分に空冷されているように思われる。

だが、精力回復や早漏対策に効果が高いとされる金冷法への信仰は根強い。事実、当研究所の先行研究についても同様のコメントがついた。

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電車内で嫌われる大股開き

金冷信仰を持つオスは、電車内など専有面積が限られる空間においても大きく足を開いて座ることを良しとする。

しかしこの電車内における開脚座は、メスからの評価がとても低い。なぜならこの行動様式は、一般にメスの居住範囲を大きく侵食するからだ。

ここで一つの矛盾が生じる。

公共交通機関における開脚座の目的が精力向上にあるのなら、メス獲得の機会を逸するふるまいは自滅行為と考えてよい。

つまり、これらの個体は何か別の意思に操られている可能性がある。

睾丸の冷却を促す寄生生物の同定

車内開脚座症の病理が寄生虫によるものであれば、その生物種を同定する必要がある。

宿主であるオスの股間を露出させてメスを拒絶する行動様式は、テントウムシに寄生するテントウハラボソコマユバチのそれに近い。

テントウハラボソコマユバチとは

テントウハラボソコマユバチとは、テントウムシを宿主とする寄生蜂の一種である。

生きたテントウムシに卵を産み付け、テントウムシの体を少しずつむしばみながら成長する。

寄生されたテントウムシの見た目や行動は、健康な個体と変わらない。それでいて神経はコマユバチに操られており、テントウハラボソコマユバチの最大利益を取るように行動する。

強い装甲を持つテントウムシは、この種の昆虫としてはかなり強靭な生き物だ。そのテントウムシが、テントウハラボソコマユバチに近づく虫を大きな羽で威嚇して追い払ってしまう。

アリタケとの類似性

また、宿主をゾンビ化させて操る生物はテントウハラボソコマユバチだけではない。

アリタケ(Ophiocordyceps spp.)と呼ばれるキノコの仲間は、アマゾンアリ(Dinoponera longipes)の脳を侵して体中を菌糸で一杯にする。

アリタケは冬虫夏草の一種である。

つまり最終的に寄生体はアリの体を突き破り、大きな子実体を形成するのだ。

同種のメスとの接触を断ち、キノコを育てることが目的化する点で、車内開脚症の原理はアリタケに近い。

冬虫夏草ハンドブック 盛口 満, 安田 守

結論

以上の例から、車内開脚座症候群のうち「睾丸の冷却」を目的とする病理は、菌に行動を乗っ取られた冬虫夏草の一種であると考えられる。

外見上は健康なオスと変わらないが、症状が進むにつれ「足を閉じてはどうか」などメスからのコミュニケーションに応じなくなる。

段階的にメスに足を押し付ける威嚇行動の発症をもって末期症状の目安とする。

やがて全身が精力絶倫思想に侵されると外骨格を突き破ってキノコを露出させることがあり、宿主は社会的な死を遂げるため注意を要する。

参考文献

なお、金冷法についての詳細データを得るためPubMedにて論文検索したところ、ラットの精巣を凍結リンゲル液にて冷却した際に生殖細胞が喪失するという研究(Zhang Z, 2004)が得られた。

金冷信仰は個人の自由であるが、睾丸の冷却はほどほどに留めておくのが良いだろう。

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