3月は春の防災月間と言うことで、自治体がやってた防災イベントにて救命講習を受けてきました。
その中で災害備蓄用の缶詰などがふるまわれたのですが、町内会の腕章した70歳前後の男性が口々に「あんまり美味くねぇな」みたいなこと言ってて、心底がっくり。
その後、本人達が顔をしかめながら「でも災害時はマズい飯でも我慢しないとな!」って声を掛け合ってて二度がっくり。
経験上、余裕のない環境に我慢を強いる人がいると全体のQOLが下がります。本人に悪気がないのでなお厄介。しかも町内会役員ということは、有事の際に高確率で運営側に回ります。絶望感がハンパない。
備蓄食料って、あんまり美味しくしたらダメなんですよ。
備蓄用食材とレトルト食品の違い
災害用の備蓄食としてふるまわれたのは、備蓄缶詰として有名なサバイバルフーズ缶です。
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25年保存可能 【サバイバルフーズ】 フルセット |
フリーズドライ製法により、25年という並外れた保存性を誇る商品です。長期保存が可能なため、自治体などが備蓄食に採用しているケースも増えてます。一般向けの防災備蓄アナウンスでも、オススメ商品として良く見かけるようになりました。
サバイバルフーズ缶が災害時に配給で出されたら思わずホロッときちゃう味だと思うんですが、文句を言う人がいるのも理解します。
サバイバルフーズ缶に限らないんですけど、備蓄専用の食品は、一般のレトルト食品とは開発思想が違います。長期保存が可能という点で方向性は似てるんですが、完全に置き換えられないことは知ってて良いのではないでしょうか。
主な理由はこんな感じ。
味が濃いと水が欲しくなる
災害時に飲料水が大量に確保できるとは限りません。味付けが濃ければそれだけ水が欲しくなります。
主食も以前は乾パンが主流でしたが、最近はパンの缶詰やアルファ米などパサパサしない食材にシフトしてきました。口の中の水を持って行かれないようにという配慮です。
幼児やお年寄りや病人も食べる
災害時の避難所では、幼児からお年寄りまでが一堂に集います。本当に逼迫した状況で社会弱者向けの特別メニューを用意する余裕などないでしょう。
内臓疾患を持つ人だって避難してくることを考えたら、ベースは薄味にするのが妥当です。
また、主要なアレルゲン不使用と書かれてる備蓄食品を見たこともあります。結果的に具材のバリエーションが減る方に働くでしょう。
ただし全ての自治体や備蓄用食品がアレルギー対応してくれる保証はありません。アレルギー持ちさんは自分の目で確かめたレトルト等を普段から備蓄しておくことを勧めます。
宗教上の食事制限にも配慮
同様に、ベジタリアンや宗教上の理由で食べられない食材について配慮されてることがあります。
日本ではあまり意識しませんが、海外ブランドの非常食を見ると鶏肉と魚と豆がやたら多いです。各派が主張する厳格な食事制限に対応することは難しいでしょうけど、国際便における機内食くらいの気遣いはあるのでしょう。
もちろん国内外を問わず、普通に牛肉や豚肉が入ってる非常食もたくさんあります。何らかの食事制限が必要な人は各自で準備しておいたほうが良いでしょうね。
毎日食べる
あと、大規模災害時にはこうした備蓄食を毎日食べることになります。
薄味に作っておけば、後からカレー粉足したり味噌足したりしてバリエーションを楽しめます。最初からカチッとした味付けにしてしまうと後からアレンジするのはまず無理ですから、薄味にしといた方がマジョリティにとっても選択肢の幅が広がります。
ある人にとって十分食べられるものが自分の口に合わないことは普通にあるわけで、どうしても味が薄くて我慢できないなら、個人の備蓄として調味料を用意しておけば良いでしょう。
この辺は「自分で料理する人」と「しない人」で判断が大幅に変わる部分かも知れません。
災害備蓄品を試食する意味
そもそも試食の原理が誤解されてるんだと思います。「試食」と「もてなしとしてのご馳走」は評価ポイントが違うはずなんですよね。
試食って「予期される事態に見合う価値があるか」を検討するものです。
スーパーの試食の根底には「味と価格が見合えば買う」という原理が隠れてます。でも、自治体の防災備蓄に関して一市民に買う買わないの選択権はありません。
じゃぁ、何を評価すべきか。
ここで提示されてるのは「災害初期に予期される実際の炊き出しメニュー」という事実です。
旅先で災害に巻き込まれたならともかく、今回の訓練会場は市内、つまりホームグラウンドでした。最寄りの避難所で出てくるメニューがあらかじめ判ってるなら、その後の選択肢は自分の力で増やせるはずです。
口を開けて親鳥が世話してくれるのを待つひな鳥じゃあるまいし、いい大人なんだから不満があるなら自力で問題解決して欲しい。
あと自己都合で味を足す以上、ミネラルウォーターとポータブルトイレも余分に買っておくと良いでしょう。
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非常時に選択肢が複数あるということ
誰に提供するか判らない公的な防災備蓄は、どうしても最大公約数的な味になりがちです。仮にカロリーベースで十分な配給が受けられたとしても、似たような食事を黙々と食べ続ける暮らしは地味に心身を削ります。
そんなとき、好きなお菓子が手元にあるだけでずいぶん違うと思うんです。個人で買い置きできる量には限りがあるからこそ、普段食べ慣れたものを中心に備蓄するというのも一つの手です。
防災訓練と生存確率
学校や会社や自治体でやるような、しょーもない感じの防災訓練でも、自分の身に照らして真剣にロールプレイすると見えてくることが沢山あります。
備蓄食が口に合わなかった。それはなぜか。各自はどう対応すべきか。そんな小さな工夫の積み重ねで、非常時の居住性って大幅に変わると思うんです。
よほどの手練れでない限り、初めての事態に放り込まれた人はほとんど何も出来ません。でも、心構えがあるだけで迷う時間がかなり減ります。訓練ほんと大事です。
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