東日本大震災の直後、都市圏のスーパーからごっそり食料が消えました。
以来、日々の買い物から災害に備える「ローリングストック法」が注目されています。
ローリングストックとは
ローリング・ストックとは、「回しながら備える」意の造語です。
「rolling stock」だと鉄道などの車両を差すので、災害備蓄としては「rolling stockpile」ってことになるのでしょうか。
災害が発生したとき、被災地から離れた場所に住んでても物流が回る保証はありません。非常食を備蓄していても、いざというときに賞味期限が切れていては問題があります。
その対処として特別な保存食だけに頼るのではなく、普段の買い置きを多めに用意することで災害に備えよう…と言う考え方です。
「災害時でも食べ慣れたものを口に出来る」「賞味期限管理が不要」「普段からの防災意識が高まる」など、多くの利点が挙げられています。
私もローリングストックが叫ばれる前から買い置き多めで過ごしてきており、これまでに少しずつノウハウが溜まってきました。
あくまで一例ですが、自分の考えを整理するつもりで書き出しておこうと思います。
ローリングストックを長続きさせるには
ローリングストックでは普段の買い物と災害備蓄を区別しません。買い置きをそのまま保存食とする管理法です。
ローリングストック法の導入にあたって「新たに買ったものを奥に置き、手前から使っていくから賞味期限を気にする必要がない」などと紹介されたりします。
しかし、事実上この方法が有効なのは1~2食分ずつ箱詰めされたレトルトやペットボトル飲料くらいでしょう。実際のところ賞味期限の管理は必要です。
しかも買い置きの点数や品目が増えると、賞味期限の管理は飛躍的に面倒になります。
一般的な袋詰め食品では、いつの間にか全部混ざってしまって何が何だかわからないことになりがち。
一つ一つ日付を確認しようにも、賞味期限の表示箇所は思いのほかバラバラで、どこに書いてあるか探す作業が地味に手間取るんですよ。
こうなると一気にモチベーションが下がるので、なるべく楽に日付管理する方法を考えなくてはなりません。
「12食分の備蓄」にこだわらない
取りあえず、買い置きの総量を決めてしまいましょう。
一般に12食分の備蓄をもつことが理想と言われますが、たとえばワンルームだと物理的に難しいこともあるでしょう。
最初から完璧は目指しません。備蓄は無いよりあった方がマシなのですから、ほんの少しずつから始めれば良いと思います。
まず棚1段から始めて、管理できる範囲で増やしましょう。
管理できるなら押し入れひとつ潰したって構いません。ただし賞味期限内ですべて回せれば、の話です。
同じ規格の箱を用意する
在庫の賞味期限管理には、揃いの箱があると便利です。大きさが揃ってればスーパーに積んである空き箱でも構いません。
買い置きの量は数ヶ月かけて調整していくので、この時点であまり立派な箱を用意しない方が続けやすいでしょう。
例えば設定した棚に4箱置けるようならそれぞれ「1~3月」「4~6月」「7~9月」「10~12月」などと書き込んでおきます。
レトルト食品やお菓子を買ったら賞味期限を見ながらそれぞれの箱に放り込む。そして最も期限が迫った箱を使いやすい場所に置き、常備食とするわけです。
あんまり賞味期限ギリギリにしたくない場合は「賞味期限の半年前から食べ始める」など自分なりのルールを決めておけば良いでしょう。
慣れてきたら保管スペースを増やしたり、食事とお菓子の区分を細分化するなどしていきます。
ローリングストックに向いてない人
一方、ローリングストックが続かない人も見かけます。
「在庫が安定しない」「好きな食品ばかり切らしてしまう」「それでいて期限切れの食品も出てしまう」
せっかく取り組んでみたものの長続きせずにやめてしまった…というパターンです。
話を聞いていると、おそらく「私が考える災害備蓄」の概念を捨て切れてないんだと思います。
例えば缶詰を使う習慣のない人が「保存食と言えば缶詰」で買うから余っちゃう。カップ麺の頻度が高いのなら缶詰スペースを減らしてカップ麺を買いましょう。
主食に近い食品は買う日を決めておく
回転が速いのに買いそびれることが多い食品は、「毎月○日に箱買いする」とか決めておくのも手です。
何なら手帳やスケジューラに登録しちゃう。それでジワジワ溜まりすぎたり、足りないようなら頻度を見直しましょう。そのうちちょうど良いペースが見えてきます。
背徳感あふれる嗜好品の場合、一ヶ月の消費量を目の当たりにすることで買い控えが発生してダイエット効果が現れることが(まれに)ありますよ。(⊙Д⊙)
備蓄専用保存食の良いところ
これまで、普段使いの食材を買い置きする利点を書いてきました。でも、もちろん専用保存食にも良いところはあります。
超長期保存性
災害備蓄用食品の良いところは、やはりその保存性です。
一般的な保存食の賞味期限がせいぜい1年半であるのに比べ、災害用備蓄の専用食品は超長期にわたって保管できるものが少なくありません。
中には保存期間が25年なんて言う製品もあったりします。
25年保存可能 【サバイバルフーズ】 小缶 チキンシチュー
実はこれ食べたことあります。なかなか美味しかったですよ。 |
高い防水性
また、保存食の保存性は期間だけにとどまりません。災害にはいろんなパターンが考えられるので、備蓄用食品は水没しても食べられるように配慮されていたりします。
浸水が多い地域だったら、普通の袋詰め食品だけでなく密閉性の高いレトルトパウチなどを多めに用意するといった工夫が必要かも知れません。
防災備蓄で一番大切なこと
防災備蓄で一番大事なのは、実は「備えておくこと」よりも「見直すタイミングを設定しておくこと」だと思ってます。
保存食に限らず、有事に必要な備えはその時々で意外と細かく変わるので。
小さなライフスタイルの変化は、自分でもなかなか気付きません。しかし1~2年の間にも様々なことが起こりえます。
病気をして常備薬が必要になった、体型が変わって買い置きの下着が入らない、視力が変わって予備のメガネが合わない、などなど。
赤ちゃんのいる家庭だと、一ヶ月ごとに必要なものがガラッと変わったりしますよね。
防災グッズを見直す日を設定しよう
防災グッズは定期的にチェックしましょう。最低でも年に一度は見直したいところです。
よく挙げられるのは9月1日・防災の日ですが、それに加えて3月11日に点検する人も増えました。
夏と冬では必要な装備が全然違います。年2回チェックすることで、年1回では気付かないリストの粗が見えてくるでしょう。
つまりローリングストックの趣旨は、専用備蓄品にも同じことが言えるんです。回転のスパンが半年や1年になっただけ。
備蓄食材クッキングのレパートリーを増やす
自発的に防災訓練っぽいことをするのもオススメです。訓練と言っても大げさなことをする必要はありません。
缶詰や買い置き食材だけを組み合わせて一食に仕上げてみたり、電子レンジを使わずに作ってみる。ゲーム感覚で出来ることの幅を広げましょう。
もしそこでカセットコンロが便利だと思ったら、ボンベも余分に買っておくという選択肢が生まれます。
地域の防災拠点もチェック
自分で出来ることを増やそうといっても、災害時に必要な装備を全て個人で用意するのは不可能です。地域の災害拠点も活用しましょう。
皆さんは最寄りの広域避難所にどんな設備が用意されてるかご存じでしょうか?地域の防災イベントに足を運んでないと判らないようなことも結構あります。
自治体によっては避難所ごとに特性を分けてるようなところもあるので、面倒だと思っても市報などチェックしとくと安心ですよ。
まとめ
備蓄に大事なのは、「備えておく」以上に「要不要を見直すこと」が大切だろうと書きました。その仕組みの核がローリングストックで、長期保存可能な専用備蓄品にも同じ考えが適用できます。
新しい習慣を身につけようとしても、1タスクのローテーションが半年や1年だとなかなか生活に根付きません。そこで、まずは一週間一ヶ月のタームから訓練していく。
定期的にチェックを繰り返すことで自分の生活消費量を可視化
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普段の消費量を把握することで備蓄量から籠城期間を逆算可能
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日常生活全体の災害耐性が向上
この一連の流れが身につくことが、ローリングストックを実践する上で最も大きな収穫ではないかと思っています。
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