藤が見頃ですね。最近になって「藤の花の砂糖漬け」なるお菓子の存在を知りました。
一瞬「私もやってみたい!」と思ったのですが、よく考えると藤ってマメ科だし調理法によっては毒が残るよね。
もし人にふるまってお腹壊したりしたら大変なので、念のために調べてみました。
藤の花の砂糖漬けレシピ
「藤の花の砂糖漬け」で出てくる作り方は概ね次のようなものです。
レシピ見る限り、ヨーロッパで昔から作られているスミレの砂糖漬けをフジに置き換えたものですね。
ただ、検索で上位に表示されるページのほとんどがクックパッドかYahoo!知恵袋関連情報というのが気になります。
スミレの砂糖漬けと同じレシピと言うことは、生の花を使うと言うことです。豆類を生食するのに安全性についてちゃんと検証されてないの怖いよね…。(ಠωಠ)
つくれぽ見ると他にも実食してる人がいるようだし、豆毒と言っても大量に食べない限り問題ない範囲だとは思うんですが、藤を食べて病院送りになった話は実際に聞いてるので確かめた方が良さそう。
藤(wisteria)の毒性について
一般論として「生の豆には毒がある」と言われます。
豆毒について
一般に、マメ科の生豆にはレクチンなどの有毒成分を含みます。これは大豆など食用豆も同じです。
ただ、豆レクチンはしっかり加熱すれば無毒化されます。有毒植物と聞いて真っ先に豆類を思い浮かべる人はそれほど多くないでしょう。
気をつけたいのは炒り豆です。煮豆と比べて加熱が不十分になりやすく、芯が残るとお腹を壊すことがあります。節分で歳の数だけ炒り豆を食べるしきたりなども、豆毒を取りすぎないようにする知恵でしょう。中毒症状は子供の方が出やすいためです。
ちなみにメーカーの名誉のために断っておくと、市販されてる節分豆はちゃんと芯まで火が通ってます。あれだけカリカリに炒ってある市販の節分豆なら年齢の数を越えて食べても全然平気。
問題は豆を家庭で炒った場合です。大きい豆だと芯が残りやすいんですよね。数年前にも「白インゲン炒り豆ダイエット」というのを実践した人による集団食中毒事件というのがありました。
藤の有毒成分
いよいよ本題のフジ毒です。
日本語だとまとまった情報がないので、英語で探すと「犬に有毒」「猫に有毒」といった検索語がずらっとサジェストされます。
人間に対する健康被害では「頭痛、胃腸炎、吐き気、めまい、混乱、発汗、失神発作」などとあります。同様の報告も複数あり、藤症候群(Wisteria syndrome)と呼ばれているようです。
Wisteria toxicity. – PubMed
有毒成分はレクチンとグリコシド、特に濃度が高いのは莢と種子とのこと。植物としては種を食べられたくないわけで、豆に毒を集めるのでしょうね。
試薬メーカーにフジレクチンの効能が載っていました。
フジレクチン(Wisteria floribunda lectin:WFL)の結合特異性は完全に明らかではないが、このレクチンはガラクトースの3位または6位に結合したN-アセチルガラクトサミンで終結する炭水化物構造に優先的に結合すると思われる。また、リンパ球集団を分画するために使用されており、分裂促進性ではないがネズミ脾細胞からのリンホカインの産生を誘発する。(抄訳)
Wisteria Floribunda Lectin (WFA, WFL) – Lectins – Lectins and Glycobiology Reagents – Products
「製薬としての可能性もあるけど内臓に負担を掛ける」って理解で良いのかな。読み違えてたらこっそり教えて下さい。
藤の花の毒性
調べた範囲では、藤の生花をむしゃむしゃ食べて倒れた人の話は見つかりませんでした。
ただし藤は開花段階で莢になる部分も既に出来てます。有毒成分は種子だけでなく莢にも大量に含まれると言うことなので、状況証拠としては毒性が示される可能性は高いでしょう。
結局フジの花は食えるのか
とりあえず、フジ豆の毒は加熱すれば消えるように思えます。…とは言うものの、数粒で病院送りになった人の実例も豊富なので火の通りには十分な注意を払って下さい。
一言で片付けるなら野草料理の決まり文句です。「食べすぎると体に悪いけど、どうしても好きなら正しく調理したものを少量食べることは可能」と言えそうです。
藤の豆を食べてみた
インターネッツで見た話のツギハギも芸がないので、実際に藤の豆を調理してみました。
完熟した種子をフライパンで炒るとナッツのようで美味しい…らしいんですけど、ごめん、私には美味しさが判らない。はぜるまで炒っても固いしえぐいし、とても食べられる代物に思えません。(´;ω;`)
実は今まで何度かフジの炒り豆を試してるんですけど、一度として美味しく食べられたことがないです。調理法が悪いのかな。もし実際に美味しく食べてる人がいたら教えて下さい。
藤の花を食べてみた
花を砂糖漬けにしてしまうと砂糖の甘さで誤魔化されてしまうと思うので、生の花をそのまま食べてみました。
いわゆる花びらの味です(いわゆるって何だ)。サラダ菜に近いモシャモシャした食感で、食べられることは食べられるけど、とりたてて味はありません。
藤の花を良く噛んでから飲み込むと、喉の奥が少しピリピリします。これが毒成分の刺激でしょう。
藤の花の天ぷら
あと、季節の山菜料理として「フジの花の天ぷら」というのがあるんですよね。季節の彩りとしてとても綺麗な料理です。
「藤の花が食べられる」は、おそらくここから来てるんだと思います。
植物が持つ多少の毒は、油で揚げると抜けたり分解しやすくなります。アクの強い野草を天ぷらにするのは理にかなった料理法だと思います。
でも「加熱して食べられる」と「生食できる」は別の話なので、藤の花の砂糖漬けを支持するかどうかは限りなく微妙なところ。
試しに藤の花を加熱してみましたが、わざわざ置いときたくなるほどの美しさはないですね。(´・_・`)
まとめ
調べて判ったことのまとめ。
砂糖漬けを作るなら、伝統的に利用されてる花で作るほうが安心だと思うよ…というのが正直な感想です。
ローズ・クリスタゼ バラの砂糖漬け |
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