毎度お馴染みカガクの粒さんで 生態学者 岡本朋子ハカセによるサイエンストークを聞いて来ましたれぽ。
去年の昆虫大学に引き続き、エグくてキュートな花と虫のお話をまったり伺って参りましたよ。(´∀`*)
生態学ってなんだろう?
冒頭の切り口はズバリ『生態学とは何だろう』という部分です。いざ何かと聞かれると難しいですね。生態学を英語に訳すとecologyです。
生態学 = ecology
生態学がecologyとして、一般的な「エコロジー」は別のイメージで語られてると思います。
【「エコロジー」の画像検索結果】
たとえば「環境」や「アースコンシャス」というように、協調的な印象で捉えられがち。しかし次々紹介される生き物同士の関係性は、「共生」と名付けられた「騙し騙されの知恵比べ」に近いです。
その反面、命をかけたエゴのぶつかり合いが結果として釣り合っているだけの非常に脆い関係とも言えます。
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理学での「環境学」は environment
ちなみに私自身が修めた学位は「地球環境学」ですけど、この場合の「環境」は ecology ではなくて environment です。つまり無機と物理がメイン。
理学で「エコロジー」や「環境」やってた人は十中八九 世間様に誤解されてるので、出自を丁寧に説明する人と説明するの諦めた人に分かれますね。私は典型的な後者なので、根気強い人すごいなと思います。
共生関係の実例
共生関係の例として、様々なケースが紹介されました。
ヒトと野菜の共生関係
身近なところから、ヒトと野菜の共生関係について。
寄生してるわけでもないのに「共生って呼ぶの?」と思ってしまいますが、風味や収量を求めて改良された栽培種は もはや人が手を掛けなければ生育しない状況にあります。そこでこれを「人と植物の栽培共生」と呼ぶそうです。
良く園芸書に「これも一種の共生と言える」みたいに書かれてますけど、ただの例え話じゃなく ちゃんと定義されてる概念なんですね!
アリを騙す虫や花
平凡に見えるアリの巣の周りでは、不思議な話がいっぱい起きてます。
例えば蝶の幼虫と言えば代表的な(?)アリのエサですけど、クロシジミの幼虫はアリを騙して巣の中に入り込み、給餌など一切の世話をして貰うと言います。
スミレの仲間やヒメオドリコソウの種にはアリのおやつ(エライオソーム)がついていて、親株から離れた場所までアリに運んで貰うという話もありました。他にも興味深い話がいろいろ。
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アリの周辺で繰り広げられる生き物の不思議いろいろ。 |
香りで虫を騙す花
花の中には、ターゲットとする虫のフェロモンに似た物質をばらまいて相手をおびき寄せるものがあります。受粉という労働の対価として花粉や蜜をお土産に持たせる植物もあれば、完全に相手を騙して労働力を搾取する植物もあるようです。
身動き取れない植物にとって、受粉パートナーを誰と定めるかは大問題でしょうね。
花も虫を選ぶ
植物としては勤勉な虫を呼ぶ工夫を重ねてるんでしょうが、多くの虫を受け入れすぎると「他の花粉と混ざって受粉の質が下がる」話は目からウロコでした。
【受粉を手助けする生き物が花粉を運ぶイメージ図】
色、形、大きさ、向き、臭い、咲く季節、時間帯、蜜線の位置というように、花にバラエティがあるのは蜂や蝶やハエの身体特性を見越して呼び分けるためであり、すなわち「パートナーとなる虫を絞り込んで同種の花粉とふれあう機会を増やす工夫」なんだそうです。
ちなみに、講義スライド撮影して良いか聞きそびれたので、挿絵は再現です。ハカセの原画もかわいかったですよー。
カンコノキとハナホソガの絶対送粉共生
ここから特に岡本先生の本領である「カンコノキとハナホソガの絶対送粉共生」について。関東住みだと縁遠いのですが、南国中心に生えているカンコノキという植物とハナホソガという虫のお話です。
それぞれが唯一無二のパートナーであり、カンコノキはハナホソガがいないと受粉しないし ハナホソガもカンコノキがないと幼虫が育たない関係です。
カンコノキはハナホソガにしっかり働いて貰うため、ステータスごとに複数のフェロモンを出し分けて細かく動きを誘導してます。フェロモン出す植物は数あれど、そこまで完全にコントロールするケースはとても稀みたいです。
カンコノキは受粉を手伝って貰う見返りとして、ハナホソガの幼虫による種子の食害を許しています。なのでカンコノキとしてはハナホソガがいないと困るし、増えても困るという微妙な関係。
裏切り者は自然淘汰されるシステム
カンコノキに不利益な行動を取るハナホソガがいた場合、カンコノキは産み付けられた子房を自切することで幼虫を駆逐しています。結果として「カンコノキに都合の良いハナホソガの遺伝子」だけが残っていくという戦略ですね。何度聞いてもヤバさしかない。
動けない植物が健気だなんて絶対まやかしだよね…。:;(∩´﹏`∩);:
働き者はハナホソガのメスだけ
ちなみに、熱心に働くハナホソガのメスに対してハナホソガのオスは働きもしないクズ野郎だそうです。そんなオスがどのようにメスをたぶらかすのか気になってたんですけど、残念ながら今回も聞きそびれてしまいました。
実はこのとき小学生も来てたんです。キラキラした目で博士の話をメモる彼らを前にして、ヒモ男のナンパ手口とか夜の様子とか いくらなんでも聞けないじゃん?
カガクの粒: 【報告】Sweet Science 愛と憎しみの!?ストラテジー 昆虫と植物の共生関係のおはなし
カガクの粒さんによる当日レポートはこちら。
おわりに
多岐に渡る生き物のあれこれに、終始笑いの絶えない3時間でした。でも一番興味深かったのは、会場から専門外の生き物について聞かれても次々と解説を始めるハカセの引き出しの多さかも。生き物全般への愛情が深いというか、守備範囲が広いだけじゃなくて関連話題に広がっていく瞬発力が素敵です。
あと、特筆すべきは語りにおける無駄のなさでしょう。ライブトークなのに「あのー」とか「えっとー」みたいな間投詞が多分一切入ってません。講義を文字起こししたら、そのまま原稿になるんじゃないですかね。
会の最後で「子ども達に生き物の楽しさを伝えていきたい」と仰っていたけど、ほんと未来を担う小さな むし博士たちに知って貰いたい方だと思う。公開講座なんかに招聘する先生をお探しの博物館は、ご所属の岐阜大にオファーしたらよろしいよ。
おまけ
雑談してた中で「人のこと勝手に持ち上げて書くなら、髪の毛サラサラになびかせた写真でも撮って欲しいもんだわ~」とか仰ってて、別に持ち上げる必要全然ないし本当に魅力的な方なんですけど、久々にお目に掛かったら髪の毛ばっさり切ってショートカットだったんで、長かった頃の感じで風など吹かせてみました。
本当にこんな感じの方でね、話聞いたら誰だってファンになると思うよ。岡本朋子先生要ちぇきよー。(´∀`*)
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勢い余って書いた話で恐縮ですけど「カンコノキが大量結実したら翌年の樹勢が落ちるのでは」という私の仮説は実際その通りみたいです。
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