遺伝子組換え食塩の可能性を考える

遺伝子組み換え食塩なるものが話題だったので、多様な塩の構造と未来について考えてみました。(大げさ)

遺伝子組換え食塩の可能性を考える

週刊文春の「こんなところに遺伝子組み換え食品が隠れている」なる記事で、アンチ遺伝子組み換え食品の話をしてました。

そこに書かれてた「食塩」の項にあった「今のところ、遺伝子組換えの食塩はない」の記述に目が点。

( ・Д・){い、今のところ…?

週刊文春「今のところ、遺伝子組換えの食塩はない」

「今のところ、遺伝子組換えの食塩はない」の元記事はこちらです。

3番に書かれた「遺伝子組み換え砂糖はない」も正直微妙。遺伝子組み換えトウモロコシを論じるなら、同様に砂糖大根なども論じるべきでは。

また、たとえバイオテクノロジー的な組み替えがなくてもガンマ線照射によって物理的に叩く育種は広く行われてます。でも、そこに言及する科学懐疑派ってあまり見ませんね。何でだろう、ほんと謎です。
世界のさとうきび育種について|農畜産業振興機構

該当記事は全体的にツッコミどころ満載なんですが、遺伝子組み換え食塩について「未来永劫ありえない」で一蹴するのもアレなので多様な塩の形について考えてみたいと思います。

製塩過程で生物由来の組織が混入しうる塩

さておき、塩と遺伝子組み換え食物の関係です。

記事が言わんとするところは「現在食塩を生成する過程で遺伝子組み換え食物を介することはない」なのでしょう。

しかし製塩の過程で生体由来の組織が混ざる可能性というのは十分ありえます。 

藻塩など海藻を使った製塩

藻塩とは、海藻を使った製塩方式による塩ですね。うまみがあるので料理の味が引き立つ高級塩です。

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製塩に生物を利用していることになるので、理論上「遺伝子組み換えによる組織が混入しうる塩」と言えます。

将来的に遺伝子組み換え海藻が広がるかどうかは想像しがたい事態ですが、まぁ可能性として。

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製品の主従関係が藻塩と逆の塩蔵わかめ。遺伝子組み換え海藻という意味ではこっちのほうが可能性としては高いかも知れません(多分)。

生物から直接生成しうる塩

先ほどの藻塩やワカメの場合だと「塩そのもの」は海水由来ですが、生体内から塩を抽出することだってもちろんあり得ます。

それこそ遺伝子組み換え組織由来の塩という事になるのではないでしょうか。

アイスプラント

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塩水でも育つ驚異的な耐塩性を持つ植物です。土中の塩分を表皮に溜め込むため、生の状態で塩味がします。

新顔野菜として地味な人気を誇る一方、そのほかの成分から製薬材料としても注目されてるし本当にそのうちGM化するかも。

何度か育てた事あるけど初期生育遅いのでタネより苗からのほうが手軽です。

ほや塩

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東北で人気のある海の食材、ホヤから作った「ホヤ塩」というのがあります。

ホヤをさばく過程で内臓から出た「体液混じりの海水」を煮詰めて塩を取るのです。ちなみに、下手な人がさばくとホヤのうんこが大量に混入します。

ホヤ自体に好き嫌いがあるけど、私はホヤ割と好きです。ホヤ塩自体あまり流通してないので、珍味好きさんは見たら即買いすると良いでしょう。

汗とか

あとヒトの体液って0.9%くらいの塩水ですから、汗から製塩したら本当に買う人いそう。相当ギリギリですけどね。

ちなみに宇宙飛行士さんの飲料水は尿を逆浸透膜などで淡水化したものですが、地上にいながら「脱塩処理してない尿を好んで飲用にしてる人」も一部にいらっしゃいます。

そういう嗜好をお持ちの方は、再生医療が進んだ時の事を考えておく必要がありそうですよね。( ˘ω˘)

その他:機能性を持つ塩

その他「一般に知られている塩とは働きが異なる」塩というのもあります。

減塩用食塩「やさしお」

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「やさしお」とは、減ナトリウム食の人に向けて開発された味の素KKの機能性食塩です。原料の半分を塩化カリウムに置き換えることでNaを減らしています。

ナトリウムがカリウムに置き換わったことで減ナトリウム食のQOLが上がる一方、腎臓疾患の方は医師の判断が必要です。さらに味の素さんお得意のポリグルタミン酸が入っているので塩なのに賞味期限が設定されてるようです。

ほんと色々考えますよね。

塩で出来た骨

【2015/12/29:本章追記】医療用の塩造形技術と言うのを知って面白かったのでメモしておきます。

患者さんから取った3Dデータを使って作る実物大の再現模型だそうで、へぇぇぇぇ…って感じ。

医療用の骨格モデルに塩を使うと以下のような利点があるということです。

  • 無害
  • 廃棄しやすい
  • 原料が安価
  • 本物の骨に近い切削感が得られる
  • 内部組織の着色が可能
  • 手術や演習での利用が期待

写真見ましたけど、着色モデルは写真越しだと石膏模型っぽいです。とても塩で作ったようには見えません。

特に「本物の骨に近い切削感」はすごいなと思いました。手術用の見本模型としてはかなり優秀なのでは。硬度も同じなら、安全装置の開発などの用途にも色々広がりそうです。

ちなみに原料は鳴門の塩だそうです。「その情報必要?」って思ったけど、割とじわじわ面白かったので良しとします。(・∀・)

塩造形サービス | 商品・サービス | ソニーイーエムシーエス株式会社

NaClを主構造とする自己再生サイクル的SF展開

ここまで「塩そのものは塩以外の何物でもなさげ」という立場で話を進めてきましたが、よく考えたらダイヤモンド使った量子メモリなんてのが出来る今日この頃でした。

コヒーレントなスペクトルをごにょごにょすれば、過去を記憶する塩だってあり得るかも知れません。

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生命の定義を自己複製や代謝に求めれば、無機物だって基準を満たしうるかも知れないし、何をもって生物とするかはかなり概念的なものになりそうです。

そしたら塩化ナトリウムを主成分とする塩・塩基配列からの生命体の可能性も広がって、遺伝子組み換えの塩だって出てくるかも知れないわけですよ。

ツッコミついでにぶっ込んでみたらSF的にはかなり美味しい展開なので、ファンタジーということにすれば良いのでは。

【備考】

サムネイルの塩遺伝子画像は@DocSeri氏の絵文字を参考にしました。

【 更新履歴等 】

2014/05/02 初稿発表
2015/12/29 テーブル崩れを修正、「塩で出来た骨」章を追記しました
旧題:週刊文春「今のところ、遺伝子組換えの食塩はない」…???