毎年恒例、海洋研究開発機構(通称JAMSTEC:ジャムステック)横須賀本部の一般公開に行ってきました2015年版です。
ダイオウイカに湧いた2014年の展示を踏襲しつつ、生解説も充実してて盛りだくさん。今年も順調に時間が足りませんでしたよね!( ・`д・´)
しんかい6500など探査船の実機展示
JAMSTECの代名詞とも言えるしんかい6500。建造25周年ということで、ステッカー貼ってあったのがお茶目です。
整備場にはしんかい6500ゆかりの著名人がちらほらいらっしゃいました。奥の方では今秋ドラマ化される小説『海に降る』のメイキング映像もやってたりして。間近で見る4K映像が綺麗です。
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放映局はWOWOW、夏に文庫版が出る予定。 |
作者の朱野帰子先生を見かけてご挨拶したところ、朱野先生のご紹介でJAMSTEC工学センターの方とお話しする機会を頂きました。
そこで「しんかい6500に搭載されてる音響画像伝送装置」の次世代技術について質問。レーザー使う方法を伺ったんですけど、今ひとつ納得行かない点があるので(おい)頭の中が繋がったらまた何か書きます。
今年の調査船は白鳳丸
今年の公開で見学できる船は白鳳丸。各種の研究設備を供えた研究船です。イチョウのマークに東大海洋研から移管された名残が見てとれますね。
ちなみに船に掲げた旗は本来それぞれ意味を持つんですけど、特にメッセージは組まれてないようでした。メーデーJAMSTECとか書けば良いのにね。暗号解読した人だけがお宝グッズをGet!みたいな隠しミッションあったら受けて立ちますよ?
白鳳丸の船内見学
来賓室だけ見ると研究用の船とは思えないほどラグジュアリー。でもお風呂が一日おきだったりRS232Cケーブルが5年前まで現役だったり、船は本当に大変だなぁと思います。
ゴエモンコシオリエビの腹毛
海洋科学技術館では、去年に続いて凝ったレイアウトで魅せる深海の世界が広がってました。
生体展示の目玉は…今年も沖縄沖からやって来ましたゴエモンコシオリエビ!心なしか去年より元気に見えるのは、エアレーションがついたからでしょうか。人造チムニーに群がっておりますね。
体毛で培養したバクテリアを食べて暮らす、ちょっと変わった生き物です。深海生物好きの間では、その生態から「胸毛牧場」なんて言われますけど、それが今回「腹毛」という表記になっていて思わず二度見してしまいました。
は、腹毛…?
JAMSTECによるこれまでのアナウンスはいずれも『胸毛のバクテリアを食す』だったはずなんです。いつの間に方針転換したんでしょうか?甲殻類の構造的にも腹部というより胸部の毛って感じがするのですが。
胸毛食うのと腹毛食うのじゃ印象がずいぶん変わるんだけどな。当日会場にいた深海好き仲間の間でもかなり動揺が広がってます。
それで結局どっちなのォ~?┌(┌^o^)┐
ゴエモンコシオリエビのエキスパートである和辻研究員のトークセッションを聞きそびれたのが本当に悔やまれます。><
油を溶かす超臨界水
気を取り直してメインの深海総合研究棟へ。まずは超臨界水を見に行きました。
超臨界水とは
ところで問題です。水の沸点は何度でしょう?
100度…と言いたいところですが、『1気圧で』という条件付きですね。山に登ると気圧の減少に伴って沸点が下がるのは良く知られた現象です。逆に深いところに潜ると沸点上がります。
水深100mで180度、1,000mなら300度まで液体のまま。じゃぁ海底10,000mでは?
答えは『沸騰しない』。
写真右グラフを見ると左軸20メガパスカル(+α)のところでデータが途切れてますね。それが頭打ちになる深度です(海底2000m+α)。この状態が超臨界で、水なのに油を良く溶かす。だけど塩はそれほど溶けないらしい。一般に知られる水の性質とは全く別物に変わるということです。
海底から噴き出す300度もの熱水が液体を保っていられるのも、この性質によるのでしょうね。圧力が高すぎてブラウン運動が抑制されると考えればいいのかな。
MAGIQ乳化
その超臨界水に油を溶かしたのが下のアンプルです。
写真だとちょっと判りにくいんですけど、左の通常乳化した液体よりも右側の方が透明感あるの判るでしょうか?溶けた油の量が同じなら超臨界水の方がずっと粒子が細かいことになります。
MAGIQ乳化と言います。(Monodisperse nAnodroplet Generation In Quenched hydrothermal solution)
一言でいうと『ナノエマルション化した油滴がレイリー散乱』を起こしてる状態。普通コロイドはミー散乱するんですけど、レイリー散乱ってことはそれだけオーダーが小さいんでしょう。地味に応用が期待される技術だと思います。
キチン質も溶ける
あとこの超臨界水、キチン質なんかも溶かします。超深海にいる有孔虫が、有孔虫のくせに殻を持たなかったりするのはこのためです。
熱水噴出孔の近くでウロウロしてるエビやカニの映像見る度に「本当お前らロックだな!」って思うよね。
深海好きやってて「深海の何が好きなの?」って聞かれること多いんですけど、超臨界水は個人的に最も好きな要素の一つです。どう考えても世界観がSFだもの。
電気を食べる細菌
SFと言えば、『チムニーから直接電気エネルギーを取り出す細菌がいるかも』って話もすごく面白かったです。原始的な生命体の枠がかなり広がりますもんね。
研究者行動展示
あとユニークなところで研究者そのものの展示もありました。以下の展示は「去年の来場者による祝福をアピールしまくるミスター・ジャムステック」です(適当)。
つーか、高井先生なにやってるんすか。
それはそうとですね!
一部マニアが研究棟でたむろしてたのを快く思ってらっしゃらなかったようですが!我々は!先だって先生が昔の実験ノートを見せて下さるって言うから!他の展示もそこそこにお待ち申し上げておりましたわけですよ!
でも結局ゲリラライブってなかったですよね!?誰も実際に聞いてないよね?
【 2015/05/23:追記 】この件に関し、高井先生ご本人からエア反論を頂戴しました。
同時に複数の友人から「短いながらも実験ノート解説らしきイベントはあった」「ノートもラボにそれとなく置いてあった」との指摘を受けたのでお詫びして訂正いたします。
ウッウッ…。
JAMSTEC一般公開の楽しみ方いろいろ
当日は朝からあいにくの雨模様…と言いたいところですが、正直なところ内心ラッキー!去年の一般公開は身動き取れないほどの盛況ぶりで、何を見るのも大変だったので。雨脚もそんなに酷くなかったし、個人的には良いコンディションだったと思います。
…にも関わらず、一日ではとても全部見きれませんでしたけどね。ポイント絞って優先順位決めておくのオススメします。
しんかい6500をはじめとする探査船の実機が是非見たいとか、研究の最前線を知りたいとか、テーマで展示を拾うと自然と見る場所も決まってくるでしょうし。
毎年定番の実験で時間調整
あと毎年定番になってる実験や展示がいくつかあるので、リピート前提で計画を練ると良いのかもしれません。
ここ数年開催されてる定番イベントってこの辺でしょうか。他にもしんかい6500の実機展示や各棟の設備展示、子供向けワークショップなども毎年恒例行事です。(…とは言うものの次年度も開催される保証はないので事前にチェ区して下さい。)
しっかし、セミナー中心に回りたかったら事前にタイムスケジュール見ておかないとダメですね。今年もノープランで突っ込んだので色々見そびれて失敗でした。
あーもー、来年こそは!><
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