日本人が折り紙に飽きたのは多分ツルが簡単すぎるせい

togetterで【世界の”Origami”に日本の折り紙が置いていかれる懸念】
というまとめが出来てて、コメントを書き込もうかと思ったところ100字やそこらじゃ済まなくなってきたので、思い余って一本書きました。

【追記 : 2014/03/25】

五首鶴 不切方形一枚頭5つの折り鶴(五首鶴)展開図作るのも大変だし動画撮ったよ
『五首鶴 作りかた 展開図』等の検索語で来て下さる方が多いので五首鶴の折り方解説書きました。折り方が知りたい方はこちらへどうぞ~。

togetter >> 世界の”Origami”に日本の折り紙が置いていかれる懸念

提言するJun MITANI氏によれば

(1)日本での折紙は子供たちの遊びと認識され、研究と言うと違和感を持たれます。世界では純粋な研究対象として取り組んでいる研究者が多くいます。(中略)日本人の名前はあまり出てきません。

(2)アメリカ国立科学財団は昨年度に「Origami Design For The Integration Of Self-assembling Systems …」という折紙に関するファンドを立ち上げ、15のプロジェクトがスタートしました。(中略)日本にはこのようなファンドは私の知る限りありません。

以下、日本のお家芸であった折り紙が今後は欧米主流になるのではないか という懸念について具体論を述べておられます。

私は格別熱心な折り紙ファンじゃないんですけど、折り鶴大戦争をほぼリアルタイムで知ってるくらいには折り紙好きですし、その頃から前後して欧米のほうが盛りあがってる印象を持ってました。本当に好きな方はさぞ焦燥感が強いでしょうね。

【TED:ロバート・ラングが全く新しい時代の折り紙を折る】

日本人がときめきを忘れてしまった折り紙

日本が誇る折り紙の傑作として、折り鶴に異論を唱える方はまずいないでしょう。これは平面を立体にするという点で本当に素晴らしいものですよね。大人になるまで全く折り紙を知らない外国人に鶴を見せれば

「なにこれ?どうなってんの?え…すごくない?マジすごくない?ヒャッハー!!」…ってなるんであって

子供の頃から折り鶴に親しみすぎてる日本人は折り紙に対する感受性が低くなってるんじゃないかという気はしています。

ピアノ曲の「ねこふんじゃった」が、割とテクニカルな曲でありながら、つまらないものと一蹴されがちな傾向とも似ているような。

アートか子供の手遊びか…いいえ折り紙は基礎工学です

国内外の折り紙 好事家に数学寄りの人が極めて多いなんてことを引くまでもなく、折り紙には幾何学の魅力がたっぷり詰まってます。

宇宙ヨットのイカロスや氷結のアルミ缶にミウラ折りが採用されたのは有名ですね。今や多くの工業製品に折り紙の概念や手法が取り入れられていますから折り紙が軽視されることは日本の数学や工学の底が削られることに繋がる…だからその対策を、とお考えであれば私もそうであろうと思う。

でもやはり、コメントを寄せた皆さんが仰るように自然発生的な子供の手遊びという部分も大事にしたい。

子供の折り紙の残念な現状

じゃぁ折り紙人口の裾野を広げるため具体的な活動を、という話に及ぶとやっぱり難しくて、独学しようにもいま「一通り折ってオリジナリティを出せるまでに技を磨ける教本」ってまず見当たらないんじゃないかと思います。

手軽な価格で手に入って「興味の赴くままに作ってみる」ことが可能なほど豊富な作例が示されているのは「日本のおりがみ事典」くらいしか思いつきません。

【memo】

ちなみに、おち自身が本の購買動機を値段で決めてるわけではありません。「必要かどうかも判らないものに大金を払う人は少ない」という一般論です。

だけど、この400ページにも及ぶ作品を全部折っても自分の好きなものを折る基礎力はほとんど身につかないと思う。少なくとも私にはその力がありません。それくらい、平面を立体に変える手法は多様で複雑なんだと思います。

ところで、昔はサンリオが児童向けの折り紙本を出していて、ページ数は少ないながらも巻末に連羽鶴が紹介されるなど発展的な内容も含む良書だったと記憶しています。

この巻末欄、脇に添えられたキティちゃんがまったり微笑むだけで折り方の説明はほぼゼロ…という無慈悲な構成だったんですが、見よう見まねで折れてしまうところが鶴の偉大なところでした。

おかげさまで鶴に限っては割と自由な形に折ることが出来ますけど今そういう編集をしたら不親切な本って言われちゃうんでしょうね。

折紙は図形を理解する優れた遊び

個人的に「勉強に役立つからこれを遊べ」ってやり方は好きじゃないんです。

でも単純な事実として折り紙遊びは図形への理解が深まるし、工業製品に発展出来そうな分野はいくらでもありそう(=金になる(^^; )だし、何より面白いんだからもう少し復権しても良いのになってのが雑感です。

状況の改善にはやはり良書の充実を求めたいところですけど折り紙本って図を用意するのがすごく大変でしょうから電子書籍で豊富な写真と動画つき、なんてのが出たら面白いかも?

あとはやはり造形コンテスト開いて競争でしょうか?裾野広げるのも頂点究めるのも文化の不可分な両輪だと思ってます。

不切方形1枚 鶴人

…というわけで、鶴しか折れないおちさんが通りますよ。

鶴人間

切れ目のない正方形の紙一枚で作る作品を不切方形一枚ものと言います。途中カタカナにすると厨二オーラがやばいですね。しかも切ってないですし。

『ある程度複雑な作品になると折り図が模式図に表せない』例としてご紹介します。職場のコピー紙で作ったので処理が雑ですが、ご容赦下さい。

勘のいい方はおわかりでしょう、五首鶴の亜型です。折り方については複数の方法が紹介されていて、見比べると混乱すること間違いないので是非皆さんもご覧になることをおすすめします。

おおまかな折り方を図示したので興味がある方はチャレンジしてみて下さい。リクエストあれば詳細手順やりますよ。(^^

不切方形一枚鶴人(五首鶴亜型)制作メモ

まず、こういう状態に折り目をつけます。

変形鶴の折癖

そうしたら、真ん中をつまんで

5首鶴の折り方

よいしょ…よいしょ…。

5首鶴の折り方途中5首鶴の基本形まであとちょっと

ハイ、こんな風になりました!(キリッ)

で、右上写真で手のひらの中にある部分が邪魔になるので左下のように折り込み、

5首鶴の背中を織り込む5首鶴の基本形

さらに角を折り広げてお馴染みっぽい形にします。

鶴人間~

後は先端を処理して完成。

図形と角度の関係といった基本的な性質から工学的な物性に至るまで、様々な要素で切り取れる奥深さを伝えるのは難しい事だと思います。

なんか、中級者の受け皿がないまま廃れていくものが多くてとても残念に思います。

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水引細工も同じように記述が難しくて廃れた文化ですが、ロープワークの場合は折り紙よりも根が深いかも知れません。

日本のおりがみ事典
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昭和雑貨など、若干ネタ古めなのが難点ですけど工作好きな人に聞かれたらこれ勧めてます。ほかに良い本あったら教えて下さい。

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著者の前川淳さんはこの世界の第一人者ですね。とりあえず、市販サイズの折り紙ではまず折れません。