ブラックサンタクロース(黒サンタ)が来る「悪い子」の条件

ブラックサンタ(クネヒト・ループレヒト)とは、ドイツに伝わるクリスマスの伝承です。悪い子に意地悪や連れ去ることから恐怖の存在とされてますが、実は極めて善人だと思います。

ブラックサンタクロース(黒サンタ)が来る「悪い子」の条件

クリスマスに現れるという「ブラックサンタクロース(黒いサンタクロース)」をご存じでしょうか。

悪い子を見つけてはやってきて、お仕置きや嫌なプレゼントをして回る悪魔的な存在だと伝えられています。

悪い子にジャガイモや炭や動物の内臓を贈る黒サンタは果たして何者なのか

「怖い」「気持ち悪い」「意味分かんない」などと悪者扱いされがちな黒サンタですけど、時代背景を考えたら超いい人にしか見えません

そんなわけで本日のテーマは「ブラックサンタクロースが善人」であるという前提で、「悪い子」の条件および「意地悪なプレゼント」について考えてみたいと思います。

もくじ

黒いサンタクロース/ブラックサンタクロースの正体
黒サンタの「悪行」いろいろ
黒サンタのジャガイモは本当に『嫌なプレゼント』か
黒サンタが言う「悪い子」とは
黒サンタは何故子ども達を連れ去ったのか
ブラックサンタクロースについて考察してみた

黒いサンタクロース/ブラックサンタクロースの正体

サンタと黒サンタ
聖ニコラウスと従者(クネヒト・ループレヒト?)

Bludenz, Bregenz, Lindau 116 Lindau by Allie_Caulfield, on Flickr (CC-BY2.0)

黒いサンタクロース、あるいはブラックサンタクロースの名はクネヒト・ループレヒト(Knecht Ruprecht)と伝えられています。直訳すると「しもべのループレヒト」。

中世ドイツにおいて、悪い行いをする子供たちに数々の仕打ちを与えたとされる存在です。あるときは普通のサンタクロースと共に、またあるときは単独で現れたのだとか。

その正体はサンタクロースのモデルである聖ニコラウスの従者…ということになってますが、これは後世になってでっちあげられたストーリーという説が一般的です。

クネヒト・ループレヒトと生前の聖ニコラウスとの間に直接の関係はないようですね。では一体彼は何者なのでしょう?

黒サンタの「悪行」いろいろ

ブラックサンタはどのように「良い子」と「悪い子」を判定したのでしょうか。

まず黒サンタが子供達に出会って問うたのは、何よりも神への信仰心だったようです。そこで信心がないと認定した「悪い子」には以下のような「非道な」振る舞いをしました。

  • 灰袋で叩く
  • 石炭やジャガイモを贈る
  • 部屋の中に動物の内臓をばらまく
  • 担いだ白い袋に子供を詰め込んで連れ去る

黒サンタについて書かれているサイトをいくつか比較してみたところ『子供が悪いからお仕置きをした』という点はどうやら一貫しているようです。

多数決で考えれば『お仕置き説』が有力と言うことになるんですけど、あえてここで『黒サンタ慈悲あり説』を唱えてみたいと思います。

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黒サンタのジャガイモは本当に『嫌なプレゼント』か

クリスマスのおもちゃ

ブラックサンタが行ったというお仕置きやプレゼントについて考えてみましょう。

プレゼントとしての石炭やジャガイモ

おもちゃの代わりが石炭やジャガイモって、そんなにイヤでしょうか?

もちろん子供にとっておもちゃは魅力的でしょうが、最低限の衣食が足りなければ遊ぶ余裕もないのでは。

今のように貨幣経済が発達してない時代の話です。略奪されたならいざ知らず、生活必需品である燃料と主食(舞台はドイツです)を貰って迷惑に思う人がいるなんて到底考えられません。

現代においてEUきっての富豪国であるドイツは、かつてとても貧しい国でした。同じくドイツで編まれた『ヘンゼルとグレーテル』も、元は口減らしを目的とした子棄ての話です。

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洋の東西を問わず、衝撃的な内容を含む昔語りは多いのです。凄惨な歴史を繰り返さないための知恵だから。

ジャガイモは救荒植物

ドイツといえばジャガイモのイメージが強いかも知れませんが、そもそもアンデス原産のジャガイモがヨーロッパにやってきたのは大航海時代のスペイン侵攻以降の話です。それ以前のヨーロッパにジャガイモは存在しませんでした。

そのドイツで何故ジャガイモが主食の地位を得たかというと、度重なる飢饉の結果です。小麦も育たないような「やせ地」でも育つジャガイモは救荒植物として非常に重宝されました。そもそも生きていくことそのものが大変な土地だったはずなのです。

そしてさらに「芋や石炭」を「正月の餅代」と置き換えたらどうでしょう?

「正月の餅代」とは、今で言う年末ボーナスです。雇用者が使用人に対して年越し準備をさせるために渡した給付金に相当します。つまりブラックサンタの存在は、芋や石炭の配給は歳末助け合い運動のようなものと考えられないでしょうか。

黒サンタがモツを贈る意味

また、重度の栄養失調を起こした人の場合はジャガイモなどの炭水化物を差し入れてもあまり回復しそうにありません。

そんなとき、ビタミンやミネラルの豊富な内臓料理には高い効果がありそうです。血の一滴まで食い尽くす術を知ってるドイツ人が内臓を邪険にするとも思えません。

わざわざ屋内まで持ちこむ理由は、クマや野犬が臭いを嗅ぎつけてこないようにという配慮ではないでしょうか。

昔のことですし密閉容器などありません。木箱かなんかに「どちゃっ」と内臓が積まれることを想像すると、現代的な感覚では気持ち悪いと思ってしまいますが、贈り物としてそんなに悪い物ではないような気もします。

黒サンタが言う「悪い子」とは

よしんば芋や石炭のプレゼントを好意的に解釈したとしても、子供を連れ去る行為は確かにひどいかも知れません。しかし神の祝福を受けてない子ども達ならどうでしょう?

黒サンタが定義する『良い子』とは、『神に忠義があるかどうか』でした。別に『親から見て聞き分けがいいかどうか』なんて聞いちゃいません。

この文脈で言う『悪い子』は、『日曜礼拝にも来ないような子』とおそらく同義です。

もちろん、現代の概念で考えれば信教の自由はある程度認められます。信心がない者は教会など行かなければよろしい。でも中世において教会を避けて通れば村八分の可能性さえありました。

この前提で教会に行かない・行けない者がいるとしたら最貧困層の人間である可能性が非常に高い。教会は多くのボランティア活動を指揮していましたが、同時にその原資は信者の献金に負ってたからです。

大筋では『各自が払える範囲の額を寄進すれば良い』という主旨なんでしょうが、教会によっては半ば強制的に徴収したり、献金額の多寡を競う面もあったことは聖書の記述からも伺えます。もちろん全ての教会がそうだったとは言いませんが、この状況で足が遠のく人は少なくなかったでしょう。

現代の生活保護問題などにも通じる哀しい話です。

おそらく、それを気の毒に思った人はきっと当時もいたんです。でも彼らに関わると自分たちの社会的安定性を失う恐れがある。いじめられてる人間を擁護すると、しばしば標的が変わるからです。

だから匿名で救いの手をさしのべた。それをブラックサンタクロースと呼ぶ事は出来ないでしょうか。

灰袋をぶつける意味

草木灰

教会に通うことさえ出来ない人々は、当然身なりも不潔だったでしょう。寄生虫や病原菌を保有してても何ら不自然じゃありません。

そして草木灰は古くから畑などの消毒薬として使われました。今でも途上国では怪我の殺菌目的で使われるようです。だとすれば、灰袋で叩きつける行為も一定の防疫効果を見込んでのことかも知れない。

黒サンタは何故子ども達を連れ去ったのか

そして問題は、物質的支援では生活が改善しない家庭の処遇です。

たとえば家庭内暴力や育児放棄が起きてる現場だったらどうか。そこで子供を強制的に保護したとして、果たしてそれは本当に悪なのでしょうか。

また、相手の骨が折れるほどの暴力をふるっておきながら「愛している」と繰り返す人がいる。もしそういう場から子供を救い出したとして、残された家族が略奪されたと言い続けたら?

しかも「連れ去った側」は正義の信条として多くを語ることがない。つまり時と共に意義は次第に風化していく。そして「略奪された側」は、されたことの意味に気づかず「愛する家族が奪われた」という事実を永遠に訴え続けることでしょう。

確信を得て迷いのない行動をとる者と、それを理解しない者が不意に対峙した場合、後者が前者に抱く最も強い感情は「恐怖」です。

かくして、「被害者」サイドの物語だけが伝えられて今に至ったのだとしたら。

ブラックサンタクロースについて考察してみた

サンタさん

黒サンタについて伝え聞く断片は「悪い子を恐怖に陥れる恐ろしい存在」といった内容のものが多いです。しかし単なるお仕置きだとすると、黒サンタの行動に辻褄が合わないことが多々あって気になっていました。

あくまで「子ども達のため」という視点に立つと腑に落ちることが多かったので、一つの解釈として置いておきます。

ブラックサンタクロースが仕えたのは聖ニコラウスだったかも知れないし、民衆の中にいる神そのものだったかも知れませんね。

備考と注釈

本稿を書くに当たり「ブラックサンタ」と「クネヒト・ループレヒト」で検索した上位数サイトの項目を参照しました。また、予備知識として新約聖書の内容等も含みます。

なおWikipediaは各国語版で内容が異なるため、日本語・英語・ドイツ語版も比較しました。(英・独版に関しては流し読みにつき誤認あればご指摘願います。)

ちなみに通常こういう民話は本国版の記述が突出して充実してるものなんですが、雑感として全部似たり寄ったりの内容でした。つまり当のドイツ人さえ原義を失いつつある可能性についても指摘しておきます。

たとえば現在ドイツの市民劇団で子役をやってるような子は裕福で肥満気味の子が多いので、ヘンゼルとグレーテルなどの演目にリアリティがなくなってると聞いています。(以前、村上龍さんが主催するJMMのコラムでヨーロッパ在住の方が言ってました)

蛇足ながら、Wikipediaという言葉を持ち出したのは大多数の認識を追尾する意味も含みますので、よろしくご理解下さい。

もっとも、ここでの論述は全て状況証拠による私の推論です。歴史的背景を踏まえた誠意および妥当性あふれるご意見に関しては真摯に対応いたしますので疑問などございましたらお気軽にお寄せ下さい。ただしその逆はあり得ません。

それではまた!

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【 更新履歴等 】

2015/12/22 読みやすいよう章の入れ替えと写真を足しました。
旧題 もし黒いサンタクロース(ブラックサンタ)が善人だとしたら…