「凍った煙」越しに光を見たら世界が何色に見えるか実験してみた

新素材として注目される「エアロゲル」について調べました。微細構造によりレイリー散乱を起こすようです。

「凍った煙」越しに光を見たら世界が何色に見えるか実験してみた

皆さん、エアロゲルってご存じですか?「ゲル中の溶媒を特殊な方法で気体に置換した多孔質な物質」の総称です。

…って、何のことやらですけど寒天状の物体から水分だけ綺麗さっぱり取り除いたものを想像してください。

科学界的な異名としては色や質感から「凍った煙」などと呼ばれるようです。

発泡スチロール同様に中身がスカスカであることから「軽くて断熱性に優れている」程度の認識だったんですけど、最近になって思わぬ性質を備えていることを知りました。

エアロゲルでレイリー散乱が起きる


【ゆーくぼさんの高エネルギー加速器研究機構 一般公開れぽより】

へー。散乱で光源が赤く見えるのって、大気と同じような性質があるってことですよね。…っていうか、蛍光灯がここまで赤くなるの意味わかんないです。どんだけ微細構造なの。

【 memo 】

空が青く見えたり夕日が赤く見えたりするのは、大気中の粒子によるレイリー散乱現象によるもの。
レイリー散乱とは非常に小さな粒子で満たされた空間を光が通過するとき、波長の短い青色を中心に拡散すること。波長の長い赤色は粒子を回避する確率が高いので長い距離を通過するときも観測者まで届きやすいです。

エアロゲルにも色々種類があるようですが、「触るとぽろぽろ崩れる」のであれば素材はシリカということでしょうか。

エアロゲルで有名なのはシリカゲル

エアロゲルの断熱性
Aerogelflower filtered(PD)

…というわけで、何のかんの書いてきたエアロゲルの筆頭は乾燥剤としてお馴染みのシリカゲルでした。つまりシリカゲルを通せば手軽に夕日が拝めるのかな?
(注:近年注目を浴びてるタイプのエアロゲルとは密度などが異なります。)

シリカゲルで太陽光を透かしてみた

乾燥剤であるシリカゲルを透過光(左)と反射光(右)で撮影してみました。
透過光と反射光で見たシリカゲル

透過させたやつはポリエチレン袋に入ってるので厳密に言うと左右で条件が違うんですけど、ご家庭実験につきご容赦下さい。
自然光に透かせたシリカゲル

Rが赤、Gが緑、Bが青、それぞれ光の三原色の成分を256段階で表現したものです。
シリカゲルの色見本
同じくらいの明度の点を取り出してみると透過光の方が赤みが強いことが判りますね。

ちょっとわかりにくいので赤色成分だけを同程度に強調してみた画像がこちら。
赤を強調したシリカゲル
結構違うものですよね。

ナノセルロース系ゲルでも試してみた

面白くなって他にも試そうと思ったんですけど、その辺のスーパーで買えるような素材じゃないのでいきなり違う物質になりましたですよ。

ホテイ デザートナタデココ 3035g

みんな大好きナタデココ、小難しく言うと「ナノセルロース系ハイドロゲル」です。砂糖水吸ってますけど多分似たようなものでしょう。←え?

ナタデココで太陽光を透過してみた

…というわけで ものは試しに撮ってみました。
セルロース系ハイドロゲルであるところのナタデココ
どちらも太陽光下の同条件で撮影したもの。左が透過光で右が反射光です。

ナタデココの色をピックアップ
同様にそれぞれの点をピックアップすると透過光の方が赤みが強いですね。

ナタデココ色見本
もちろん全ての点がこの色ではありませんが、色成分比の全体傾向は変わりません。
ナタデココ画像の色バランスを変更したもの

PVAでもレイリー散乱する!

(2014/09/22追記)
光学と気象に詳しい池田圭一(@keii_iiek)さんから興味深い話を教えて頂いたので追記~。

ホットボンドやグルーガンと呼ばれる工作用の熱可塑性樹脂でもレイリー散乱するそうです。

グルーガンでレイリー散乱

実際に試してみたら、この通りハッキリ色が出ますね。(・∀・)
元のグルースティックは、やや白濁してるものの無色透明な製品を使いました。

主成分はエチレン酢酸ビニルコポリマー。サンダルやおもちゃ、ビニール管など日用品としても非常に身近な素材です。

身近…なんですが、ワタクシ化学の素養が全くないため分子構造からの考察が一切出来ません。ヘタレで申し訳ない…。(^^;{ど…どなたか解説を…。

内部構造が均質なほど安定して拡散するという理解で良いでしょうか…?(^^;

小型グルーガンG4HS型 スイッチ付き高温タイプ
これ用の糊。

ゲル状の物体で光を透過すると赤くなる(と思う)まとめ

…そんなわけで、微細構造に光を通すと確かに赤みが強く出るようです。シリカゲルはもちろん、ナタデココまで赤くなったの見て「おお!」て思いましたよね。

ただ、「ナノコロイドによる短波長の散乱」と「溶媒による長波長の吸収」どっちが強く出るか計算しようがない※1ので、この実験には果たして意味があったのか、全く判らないところまでが今日のハイライトです!(・∀・)

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【 備考 】

余談ですけど、コピペ系サイトで『新型電池に期待の新素材』として紹介されてるエアロゲルって伝導性の高い炭素系エアロゲルのことですよね。添えられてる写真の多くがシリカエアロゲルと思われる物質で「うへー」って思いました。あの手の人たちの突飛な行動力には本当に感心させられます。


※水による減衰が「3m厚で55%減」らしいので雑感では散乱の方が大きいように思うのですが、如何でしょう?

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