「タダより安い物はない」と思う人は貰ったものを平気で捨てる

「本当に大事なものはタダなんだ」って言う人もいますね。

「タダより安い物はない」と思う人は貰ったものを平気で捨てる

試飲販売してる店で、他の客を押しのけてまで受け取ろうとする男がいた。

「タダより高い物はない」と考える人は何気ないサービスさえ警戒したりするけれど、こういう人は「タダより安いものはない」と考えているのかも。

この男に対する個人的な恨みは特にないんですが、顧客モデルとして色々と考えさせられたのでメモ置いときます。

とある迷惑な試食行動

輸入食材店のカルディコーヒーファームで買い物をしていたときのこと。コーヒーの試飲テーブルに息せき切って割り込んでくる一人の男がいた。サラリーマン風の背広姿で50歳前後だったと思う。

「ここのコーヒーが好きで、いろんな駅で見かけるたびに入っちゃうんですよ」

男は神経質そうな顔に似合わず明るい声で売り子の女性に話しかけ、感謝の言葉と紙コップを受け取ると満面の笑顔を見せていた。

企業方針なのだろう、カルディはあまり購買欲がなさそうな客にも気さくにコーヒーをふるまう傾向がある。常連客なら無理に割って入らなくても順当に試飲できることは知っているはずなのだけど。

そして男は湯気の向こうでこう続ける。「ここのコーヒー美味しいですよね。…まぁ買い物したことはほとんどないんですけど。」

…は?

確かにこの店は冷やかし客にも優しいんだけど、それにしたってタダ飲みメインでしょっちゅうたかりに来てることをわざわざ告白しないでも。ひとしきり自分語りした男は満足したのか、屈託のない笑顔で紙コップを売り子さんに差し戻すと再び人混みの向こうに消えて行った。

つーか、もはや客ですらねぇし。

…とは言うものの、ここまではまだいい。試食が品質を確認する行為である以上、買わずに去る客は他にもいる。しかし私は見てしまったのだ。目にもとまらぬ速さでゴミ箱に吸い込まれていく紙コップから、琥珀色の液体が珠となり宙を舞うその瞬間を。

うわぁぁ!タダ飲みしといて残しやがったぁぁぁぁぁ!!(((( ;゚Д゚)))

はじめて口にした味が好みに合わなかったならやむを得ない。しかしあの男は言ったのだ。この店のコーヒーが好きでよく来るのだと。それに紙コップとは言っても試飲用のごく小径の容器で、ほんの一口分しか入ってなかった。残す理由が見当たらない。

商品は気に入ってるけど店に金を落とす気は毛頭ない、タダで貰えるから何度でも来るし、タダだから捨てても惜しくない…そういう理解でよろしいでしょうか…。(´・ω・`)

試食販売と返礼心理

試食販売という販促方法は、品質を知ってもらうという本来の趣旨以上に、好意に対する返礼効果が期待できる。「貰いものにはお返しをしないと…」と考える人にヒットしやすい。

悪く言えば、「タダより高い物はない」というやつだ。

タダより高い物はない

【只より高い物はない】
ただで物をもらうと、お礼に金がかかったり頼みを聞かなくてはならなかったりで、結局は高いものにつくということ。(明鏡国語辞典)

もちろんお返しを強要すると押し売りになってしまうので、実際に売買が成立するかは買い手の判断に任される。この返礼行動は状況や双方の関係性によっても変わるので、成約率はケースバイケースだろう。

タダより安い物はない?

ここで「無料のサービス」を文字通り無料と考えてみる。本来、何らかのコストがかかっているはずのサービス価値を完全にゼロとみなす。

すると、サービスを受けることによる心理的な負担が発生しなくなる

相手の交渉カードを踏み倒すまでもなく、コストの対価を払う必然性そのものが消える。何なら本人の目の前で捨ててしまえる。相手が無償で提供している以上、互いにとって大した価値がないはずだから。

真の対価

この出来事の意味を何日か考え続けていたら「そんなありふれた出来事を何故いつまでも気にしてるの?」と言われてしまったのだけど、考えれば考えるほどこのコーヒー男の行動は不可解だ。

飲み干せもしないコーヒーを、なぜわざわざ受け取りに来たのだろう?実は本部から接客態度のチェックに来た覆面調査員だったりして。うーん、でもそれならレジや陳列係にもしれっと難題をふっかけるからな…。

会社にしろ家事にしろ、一度捕まえた労働力をしゃぶり尽くそうとする人間はどこにでもいるんだけど、このコーヒー男は店側の価値創出に寄与してない点で他の事例と一線を画す。

結局この男の行動原理がよく判らないまま、ふと「カルディは会社と違って女の子が笑顔で飲み物くれてお話しできる上にキャバクラと違ってタダだからサイコー!」というフレーズが頭をよぎったのだけど、あまり考えたくない選択肢なので無かったことにしようと思う。

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