義理チョコの倍返しは年利46万%

ホワイトデーの理論武装にでもお使いくだしあ

義理チョコの倍返しは年利46万%

真心を報酬とする通貨体系において、バレンタインデーの花束やチョコレートは愛情の振出に用いられる小切手としての役割を果たす。むき出しの愛情に比べて携帯しやすく、贈答品における裏書禁止の原則により盗難されても被害が少ない。

本来、贈答品とは信用によって価値が保証される不換紙幣に近いものであった。しかし金本位制のサブセットとして派生したチョコレート経済は、再帰的に為替を通じて金と兌換だかん可能な性質を持つ。

この資本価値のねじれを利用すれば、名目貨幣の流通調整によりシニョリッジ(seigniorage:通貨発行益)を享受することが出来るだろう。このとき発生する過剰供給通貨が、世に言う義理チョコの正体である。

真心本位制

金について考えよう

真心本位制とは、貨幣価値を真心や愛情に求める経済体系である。

電子マネーなどと同じく信用経済の一種だが、不定形の愛情は交換価値の基本単位となる平価を定めるのが難しい。そこで、経済圏を一般化する際は間接的に金本位制の枠組みを利用する。これを金為替本位制になぞらえて真心為替本位制と呼ぶことにしよう。

しかし日米修好通商条約による幕末の通貨交渉を例に取るまでもなく、為替レートの不均衡は資本流出の危機を招く。金為替本位制が近現代の植民地経済を搾取したのと同様に、貨幣経済の影響下に置かれた真心活動もまた多大な犠牲を強いられることとなったわけだ。

用途による義理チョコの分類

話をバレンタインデーに戻そう。義理チョコは用途に応じてざっくり3種類に大別される。

ひとつは本命チョコの攪乱を目的として、同輩に広くばらまかれる目くらましチョコ。主に未成年の間で取引される。

もう一つは、日ごろの謝意を伝えるための感謝チョコ。こちらは親しい友人や家族なども対象として広く行われるようになった。

そして最後が、プレゼントと称して暗に報酬を期待する贈賄型のチョコである。

義理チョコによる経済波及効果

義理チョコが社会に与える影響は状況よってだいぶ異なる。

たとえば目くらましチョコや感謝チョコは経済波及性において比較的インパクトが小さい。渡す理由が明確な上に、所有権が移った瞬間に贈答品としての役割を終えるからだ。

だが贈賄型チョコは違う。受け取った瞬間に契約が開始される。この種の義理チョコは贈与に見せかけた負債である。

そもそも日ごろの感謝を込めてチョコを贈るのであれば、渡した瞬間の真心貸借はゼロにバランスするはずだ。チョコの移転によって受け取った側に返済義務が発生するのであれば、この二人の関係性はもともとゼロである。

一か月後の倍返しは年率46万%

義理チョコの見返りとして「ホワイトデーに倍返しね!」などと要求する場面を見かけることがある。

しかし悪名高いトイチの利率でも、倍に膨れ上がるのは単利の場合で3か月も先のことだ。(トイチとは「返済が10日遅れるにつき利子1割」の意。)悪質なケースを想定して複利運用したとしても、1か月後の残高は元金込みで133%、つまり3割増しに過ぎない。

それでいて単利のトイチは年率365%だし、複利に至っては年率3142%にもなる。利息制限法による少額貸付の上限金利が年20%、出資法による個人間融資の上限が最大年率109.5%であることから鑑みても、年300%やら3000%と言った要求は明らかに違法である。

ついでなので一か月後の貸付残高が2倍になる場合も考える。これは10日で26%の複利に相当する。ちなみにその利率で継続した場合の年利は単純計算で460813%だ。…っていうか、46万%って何。

複利周期を一か月にした場合

ただし、これは10日ごとに利子が発生する超絶悪徳パターンなので、一か月あたり倍付にしたほうがやや良心的だろう。このときの年利は409600%となり、元本100円だとして1年後の支払いが何と5万円も軽減される。

つまり100円の義理チョコがきっかけで1年後に37万9千円(税抜)の婚約指輪が釣れてしまうことになる。チョロい。

過払い金の請求はお早めに

ただし、違法契約はそれ自体が無効である。中でも、一方的に義理チョコを押し付けて見返りを求められた場合は特に注意を要する。

仮に法外な利息を要求されて応じてしまった場合は過払い金の請求が可能だ。過払い金の請求期限は最後に取引した日から10年である。それを超えると時効になるので気を付けてほしい。

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