JAMSTECが誇る地球深部探査船「ちきゅう」就航10周年記念となる一般公開@横浜港を見てきましたれぽ。
2015/11/21・22日の両日開催、関東では10年ぶりとなる一般公開に800人の一般公開枠が数日で埋まる人気でございました。
元海洋系地学徒としては通常のJAMSTEC一般公開以上に血が騒ぐよね。
岸壁から「ちきゅう」外観とブリッジまで
今回は受付と本会場が離れていて、赤レンガ倉庫近くの空き地からシャトルバスでのピストン輸送でした。
道々の隙間から目に飛び込んでくる、全長210mとなる「ちきゅう」の圧倒的スケール感。デリック(櫓)の高さが海抜121m、船底から数えると30階ほどのビルが飲み込まれるサイズです。とにかくでかい。
(・∀・){うみきりんと並ぶ姿をとくと見よ
隣に停泊してたのが貨物タンカーだったこともあり、正直スケール感は麻痺してます。ただ、大型船は浅い港に入れないので、必然的に停泊できる港が限られるんです。タグボートとか走ってたら良かったんですけど。
タラップから別世界
とにかくタラップが揺れない。びくともしません。JAMSTECが持ってる他の全長100mくらいの船も結構揺れるし、70mくらいのフェリーだと遠目に判るくらい ぐぉんぐぉん揺れるもんですが、意味不明の安定感です。「ちきゅう」すごい。
「ちきゅう」船内の通路が広い
船内に足を踏み入れた途端、廊下が広くてびびります。巾90cmかな。ちょっとした客船くらいあります。階段もすごく広くて(船にしては)勾配が緩いです。大きな機材を運搬するからでしょう。
あと廊下の各所に子ども達の塗り絵が飾られていて和みました。身内の作品なら居室内に飾るだろうし、一般公開で集めた絵なのでしょう。普段から飾られてるのかな。だとすると船暮らしのご苦労が偲ばれますね。
「ちきゅう」ブリッジの計器類
タラップから船内に入って最初の見どころが操舵室です。船内の機材はいちいち無駄がなくて美しい。
掲示物を磁石で船体に貼り付けることとか、海図広げる机の端にスリット入ってるのとか、ほんと合理的だと思います。
レーダーが船の前後に分かれてたのは船の中央に巨大な櫓を持つ「ちきゅう」ならでは。
船舶専用の特殊機材はもちろん、細かいところも面白いです。入力がトラックボールだけどコロコロつきの比較的新しい型だったり、プリンタは市販品だけどA3対応で図面用だろうなーとか、お約束の神棚がLEDロウソクだったり。
あと管理用コンピュータが偶数月と奇数月で切り替える隔月運用でした。大型システムでメインとサブシステムで運用をすると、いざトラブルが起きたときにサブが起動しないってこともあるんですが、この辺もすごく合理的。
ひとしきり機材を見た後は、やっぱり目線の高さに驚かされます。フェリーなんかの感覚と全然違う。完全にビルです。
ドリルフロアと「ちきゅう」名物のデリック
奥のドリルフロアは立ち入り禁止でしたが、遠巻きに見てるだけでカッコイイ。事前のプレス取材では奥まで入れたようですね。ニコ生で画面越しに見られたのでとりあえず満足です。
この巨大な設備で「ボーリングコア」と呼ばれる地層サンプルを掘削します。学生時代、まさにこういう海底コアサンプルの分析をやってたのでテンションMAXやで…。(´ω`*)
職員さんが抱え込んでる透明パイプが写真奥の方まで続いてます。10m以上ありましたけど、この長さを2~3時間で掘るということです。早っ!
緊急用シャワー等
変なものを浴びたとき用に、エマージェンシーシャワーが設置されてます。揮発性成分を検知したとき用のディテクターも見られました。
コアに可燃性ガスが含まれることもあるので一部のスイッチ類は耐爆仕様。喫煙所も結構離れたところにありました。
「ちきゅう」船内ラボ
掘り出されたサンプルは時間と共に劣化するので、速攻で分析室に運び込まれます。
コアサンプル用CTスキャナ
海底と地上では気圧などの環境が全然違うので、記録は時間との闘いです。サンプルが新鮮なうちにCTなどの非破壊検査へ。
コア半裁機。ここで雑に切ると地層がコンタミ(試料汚染)しちゃいます。半裁コアからの切り出し合宿に参加したことありますが、ちょっと混ざると数万年単位で推定年代がずれちゃうので声を掛け合いながら慎重に作業したものです。
酸素に触れてはいけない試料を扱うグローブボックスや、様々な波長でサンプルを分析する機器がずらり。1フロアでこれだけの設備が使える研究所は大学でも珍しいのでは。
電子天秤
個人的に「ちきゅう」のグローバル感が出まくってたと思うのが電子天秤です。
厳密なことを言うと、移動する船上では正確にものの重さを測ることが出来ません。単に揺れるからではなく、緯度やジオイド(≒地形や水深)によって刻々と重力が変わるからです。
体重60Kgの人でいうと、地球のどこにいるかで重さが400gくらい変わります。天秤だと質量ベースなのでそのゆらぎがありません。髪の毛一本の重さまで正確に測れるそうです。
船外設備
その他「ちきゅう」内で気になった設備いろいろ。
噴出防止装置
予期せず出てきた石油やガスを封鎖するための装置です。石油の流出を防ぐのはもちろん、大量の気泡が船の下に出てくるだけでも航行に支障が出ます。極めて重要な安全装置です。大きな力を要するため、油圧駆動になってるようです。
はー、カッコイイ。
ところでダンパー(大型空気ボンベ)ルームに置いてあった自転車。寄港したときの買い出し用かと思ってましたが、まさか船内用?(^^;
【追記】寄港したときの買い出し用だそうです。船内では使用禁止とのこと。
ティザーパイプ
ティザーパイプは白の印象があったんですけど内側は赤茶でしたね。以前、横須賀本部の一般公開で配ってた「ちきゅう」の風船の紐もこんな色だったなーとか思いながら見てました。
ティザーパイプの重さは1mあたりおよそ1トン。これを何千mも繋ぐことになるので、デリックへの負荷を減らすためティザーパイプには浮力体が巻かれてます。
下船後
下船後も物販などいろいろありました。
帰りのお土産はBlueEarth(JAMSTEC広報誌)特集号。掲載されてた記事の半分くらいは再掲だったので実は一通り読んでるんですけど、割と好きな回ばかりが収録されてたので思わず買ってしまいました。(´ㅂ`*)
Exploring Lab. 1/700 地球深部探査船 「ちきゅう」 |
ブルゾンの刺繍が「海洋科学技術センター」
運営の皆さんと言えば、お揃いブルゾンの刺繍がJAMSTECと海洋科学技術センター入り交じってました。海洋科学技術センターとはJAMSTECの前身で、2004年に改組してます。
もちろん「海洋科学技術センター」名義のブルゾンを着てるのは少し年配の職員さんです。横須賀本部などの一般公開では比較的若い職員さんが見学者対応してることが多いように思うので、海洋科学技術センターのブルゾンを着てる方がそこここにいて「おぉ」って感じでした。
「ちきゅう」見学の金銭的価値
天気が良くて最高の「ちきゅう」見学日和ですね。最終見学者人数は何人ぐらいになるだろうか。見学した後に、例えば「どれぐらい拝観料金を払ってもモト取れた感がありますか」というアンケートとってほしいなあ。そういう経済効果試算みたいな仕事をコチョコチョとやっているブラックなワシ。
— 高井研 (@1031kentakai) 2015, 11月 21
出口に賽銭箱おいといたら皆なんぼかずつ入れたと思いますョ。(´ω`*)
【追記:2015/11/24】試しにTwitterでアンケート取ってみました。
【1031先生代理アンケート:ちきゅう見学者に聞きました】下船したところに賽銭箱が置いてあったらか金を入れたと思う Yes/No #JAMSTEC
— おち (@02320_ochi) 2015, 11月 23
賛成24票:反対4票ですか。私の分を入れたら25票。得票数28票は少ないように見えてグループ数ベースなら参加者の1割程度は行ってるかも知れません(多分)。総キャパ800人で、ざっくり眺めた実感だとお一人様グループはそれほど多くないように見えました。見学してない人が多少混ざってたとしても5%行ってればスクリーニングテストとしては悪くないですよね。
支払額がいくらかは判らないけど、お土産のピンバッヂを配るところで「研究費支援の感謝の気持ちとしてお配りしてます」って物販で処理すれば面倒がなさそうです。いや、そもそも独法って寄付OKでしたっけ。
いずれにせよお金払いたくない4人は満足度が低かったことになるわけで、船内ツアーガイドして欲しかったのかなーとか思いました、まる。
「ちきゅう」一般公開いってきましたれぽ
そんなこんなで たっぷり2時間以上見ましたが、陸にあがっても全く平衡感覚が狂ってませんでした。大型船だからか船体保持のDPSシステムのおかげか聞けば良かった。どっちにしろ普通の船とは別次元の乗り物でしたね。
受付と本会場が結構離れてた(のと、現地集合だと家からチャリで行ける)ので最初「会場受付でよくね?」って思ったんですが、会場に着いてみて納得でした。ピストン輸送が押し出し見学になって人の流れが比較的スムーズ。現地受付だと収集つかなかったかも知れません。運営の皆さんGJです。
私が行ったのは22日ですけど、スカッと晴れ渡った21日組のほうが撮影日和でめっちゃ裏山。でも貴重な機材をたっぷり見せて頂いてちょう楽しかったです。ほんとありがとうございました!
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