先週末(2015/04/18)JAMSTEC横浜研究所にて行われた、「深海探査船しんかい6500による潜航パブリックビューイングを見てきたれぽ」第二弾です。
中継合間に開かれた西澤研究員のセミナーで語られた、「太古の深海ではアルカリ性の白い熱水が湧いて縞状鉄鋼床を作っただろう」という内容に、思わず
( ゚д゚ )<ガタッ
…ってなったよね!
原始海のホワイトスモーカーが当時の環境を一変させた
深海熱水といえば「ブラックスモーカー」と呼ばれる黒い噴出物のイメージですが、原始海の熱水噴出孔からは白い煙が噴き上げていた
…という話は以前からJAMSTECのあれこれ情報で伺っていました。
しかしその熱水がアルカリ性であること、しかもストロマトライト(≒シアノバクテリア)以前の縞状鉄鋼床を作った要因だったと聞いて超びっくり。話の重要性が全然判ってませんでしたよね…。(((( ;゚Д゚)))
びっくりしすぎてggったけど、事実上JAMSTECのプレスリリースしか引っかかりません。
え…ちょっと世のサイエンスライターは何をしてるの。それって原始地球の謎を紐解く大問題でしょ!
原始地球のあらすじと縞状鉄鋼床の成因
話が複雑なので要点を整理してみます。
原始海の誕生
【via Nasa】
マグマが渦巻いてた太古の熱い地球。それが冷えるに従い、大気中の水蒸気が雨となって冷却が進み40億年ほど前に海が誕生。その頃の雨は二酸化炭素などを大量に溶かし込んでいて酸性だった。
熱水噴出孔
【via Wikipedia (PD)】
海底で地熱によって暖められた熱水が湧いて出てくる深海温泉。気圧が高いことから水温は百度を軽く超え、重金属や硫化物などを大量に含む。
縞状鉄鋼床
【via 縞状鉄鉱床 – Wikipedia(CC by-sa2.5)】
38億年~19億年前の地層より多産される鉄分主体の堆積層。数cm刻みでチャート(ケイ酸塩鉱物)と酸化鉄のシマシマを作る。世界的な埋蔵鉄鉱石の大部分を占める重要な鉱物。特に27億年ほど前に発生したシアノバクテリアが酸素を供給する以前の縞状鉄鋼は成因がはっきりしなかった。
しかし光合成生物がいなくても縞状鉄鋼は出来る!…というのが今回の骨子です。
「なーんだ、岩の生い立ちか」って思った そこのあなた! m9(・言・)
この岩は当時の環境を知る証人なんです。最古の生命活動と表裏一体をなす状況証拠と言う点で重要だと言えるでしょう。
原始地球の海底熱水はアルカリ性だった
その縞状鉄鋼床。シアノバクテリアの発生以降は、光合成によって作られた酸素で鉄が沈殿したと知られてますが、それ以前の段階ではアルカリ環境下で生まれたのだそうです。
そもそも酸性である炭酸水がアルカリになるのは高温高圧で岩石と接したのが原因だとか。いや、確かに岩は意外と水に溶けるんですけども「炭酸から炭酸塩鉱物が出来て」ってどう言うことよ。
でも実際、炭酸濃度が高いとpH跳ね上がるんですって。ほへー。…と言うことは、原始地球にも中性の海を含む多様な環境が存在したことになるじゃないですか。深海すげーな。
岩石は水に溶ける
…とは言うものの、局所的に言えば中性に近い水は存在したのでしょう。
例えば強酸性が売りの温泉地において原泉がpH1だったとしても、4~5Km下流まで行けば ほとんど中和されちゃいます。もちろん地下水などで薄まる構造もあるんですけど、原泉からわずかな距離でも周囲の岩石を溶かし込んでどんどん変化していきますね。
水の体積が増えると中和が止まる
でも中和が進む前に池や湖へ発達したらどうなるでしょう?水の分量に比して表面積がどんどん小さくなりますから、降水量に比して岩石の供給が追いつかなくなってしまいます。
ひとたび酸性の海が広がってしまえば、そう大きく性質が変わることはないでしょう。
そこにきて深海アルカリ温泉バーン!酸化鉄どーん!シリカ溶脱ブハー!ですよ!
【JAMSTEC広報誌Blue Earth 106号12ページより】
現代の海 | 原始の海 | |
---|---|---|
海水の性質 | 中性で酸素あり | 酸性で酸素なし |
チムニー噴出物 | 硫化物(黒い・酸性) | シリカ(白い・アルカリ) |
熱水以外の沈殿物 | 生物由来のシリカ | 海水由来の酸化鉄 |
やばい、環境激変キタよ!パラダイムシフトめっちゃ盛り上がるでしょ。(・∀・)
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ホワイトスモーカー論文誕生の経緯が胸熱。 |
古い縞状鉄鋼床は深海熱水由来?
全体の流れとしては
原始地球で酸性雨が降る →
深海熱水がアルカリ性に →
その影響で岩石から大量にシリカが供給されて →
同時に海中の鉄イオンが酸化。
うん、そこまでは何とかOKです。でも、どうもひっかかるんだよね…とTwitterに流したところ
高井先生から凸リプ来たよー!:;(∩´﹏`∩);:
@02320_ochi 常識に囚われている研究者は信じられないでしょうねえ。論文は良く引用されていますけど。
http://t.co/2qr0bOAFbu
一応ブルーアースの特集。
http://t.co/RaW1rVS724
— 高井研 (@1031kentakai) 2015, 4月 23
リンク先は本件の論文です。私も検索でこの論文にたどり着いたので周辺テキスト含め一通り読みました。光合成生物以前の酸化鉄に裏付けがついたとか本当目からウロコですよ。
でも、それで大規模な縞状層が出来たって言われると…どうなんだろう?縞状鉄鋼層って割と明確な互層を作りますし…。(´・ω・`)
これで
こんなふうになるだろうか…?
@02320_ochi チャート=熱水間近、酸化鉄=熱水ちょい離れ、で沈殿として、熱水噴出孔(活動域)の場所とか混ざり方が系時的に変化することによって、チャート・鉄・チャートになるんではと考えていますが、ホントにそうか?という厳しい批判者を黙らせるための実例を探しています。
— 高井研 (@1031kentakai) 2015, 4月 23
あ~なるほど…。熱水噴出孔は数ヶ月スパンで育ったり移動したりするんでした。そうなると続報に乞うご期待って感じですね~。(・∀・)
そんなこんなで気分は完全に「続報待機モード」に移ったので、「今回は感想記事書くのやーめた!」って思ったら当日ご一緒した朱野先生から
@02320_ochi 私はおち研の翻訳コンニャク待ちです…
— 朱野帰子 (@kaerukoakeno) 2015, 4月 23
ぐふっ…。_:(´ཀ`」 ∠):_
初期生命と二酸化炭素の相関関係
【2015/04/28 本章追記】
おまけに本稿公開後にも添削いただきましたよね…。
@02320_ochi @kaerukoakeno ほぼ及第点な理解で、結構なお点前でしたわよ。ほほほ。「30-20億年前のどこか、大気中の二酸化炭素濃度の減少がある特異点を超えた時、地球史上最大の後戻り出来ない環境大逆転が起きた。その時、歴史は動いた」まで書ければ黒帯。
— 高井研 (@1031kentakai) 2015, 4月 27
(´○ Д ○`)。○(例の論文に「炭酸濃度が高い時しか炭酸塩化しない」ってあったから書かなかったんですけど…。)
じゃぁ質問です!海中の二酸化炭素濃度が下がってチムニーがブラックスモーカー化したとして、そのとき光合成細菌が増えなかったら結局のところ二酸化炭素はそれほど減らないんじゃないですか!?
@02320_ochi (ア)光合成生物が減らす。(イ)大陸が減らす。(ウ)深海熱水が減らす。(エ)勝手に減る。の4択問題。ウチは(ウ)に全額ドン!(ア)&(イ)も実際はめちゃ効いてますが、それが無くてもいずれは(ウ)の作用によりそうなったはずという立場なのだ。とりあえず。
— 高井研 (@1031kentakai) 2015, 4月 27
えっ、何で!?
@02320_ochi 永遠に減らすわけではなくて、どこかで平衡に達すると思います。太古は深海熱水がシンク、現在はソースになっています。この間をフラフラする感じ。
— 高井研 (@1031kentakai) 2015, 4月 27
注:シンク=貯蔵庫 ソース=生産工場 主語は二酸化炭素
あ…なるほど。
でも「熱水に全額ドン!」なの怪しいなー。
光合成細菌がいなくても「どのみち硫黄細菌が固定するんじゃ!古細菌なめとんのか!」って展開かと思ってましたよね。なんかまだ初期生命誕生に関わる重大な隠し球がある気がするけど、それだけに続報が楽しみでーす。
|∀・){高井先生どうもありがとうございましたー。
参考:Precambrian Ecosystem Laboratory Achievements
参考:縞状鉄鉱層から何がわかるか
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祝ドラマ化~!\(*´∀`*)/ |
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