2015年9月12日に都内で行われた『四つの夢-深海ドリーム第二夢 海談 kai-dan 朱野帰子×高井研-』なる謎イベントを見に行ってきたメモでござる。
深海マザーさん主催の深海セッション第二弾です。まさか次があるとは夢にも思いませんでしたが、相変わらず会の概要が見えません。助けてママン。
ただ、JAMSTECが舞台の小説「海に降る」を高井先生はじめJAMSTEC研究者の皆さんがどう読んだか。あるいはプロットの段階でどう関わったのか、という部分に興味があったので観覧することにしました。
深海ドリーム 海談 概要
【アートディレクション的には全編こういう感じ】
登壇者紹介
まずは登壇者のご紹介から。深海好きならお馴染みの皆さまがたでございます。
- 朱野帰子
- 小説家(『海に降る』ほか)
- 高井研
- JAMSTEC 地殻内生物圏研究分野長 微生物地球学者
- Chong Chen
- JAMSTEC研究員 貝類学者
- MC宇山亮
- 熱水噴出孔生物群集に偏ったアーティスト
あ、間違えた。よく考えたら招聘されてるのは高井先生じゃなくて『深海アトランティス連邦大統領首席補佐官ドクター・ケン・タッカイ』でしたね。
大人の事情と厨二病のはざま的な設定というか、JAMSTECを代表する意見ではないです多分とか、そういう感じでよろしくお願いします is 何。
深海ドリーム 第二夢 式次第
雑感だし話が入り組んでたのでタイムラインぐちゃぐちゃですけど、会の流れはこんな感じ。
- 第一部
- 朱野帰子
- 小説「海に降る」ができるまでのあれこれ
- 第二部
- 朱野×ケン・タッカイ
- 小説「海に降る」から現在までの原作者とモデル研究所のあれこれ
- 第三部
- ケン・タッカイ
- 「海に降る」を楽しむための科学&社会背景
- 第四部
- 朱野帰子×高井研
- 一夜限りのゆるゆる対談
なお、真ん中に貝類学者Chong Chen氏によるサイエンストークが入ってます。前回のレポで混ぜたら危険なのを悟ったので、今回は要素を分けました。
スケーリーフットの名前が決まるまで15年もかかった衝撃の理由
第一部:小説「海に降る」ができるまでのあれこれ
【Heavyにニヨまれるかえる子せんせい】
朱野先生とJAMSTECの直接的な出会いは2008年頃、ひょんなことから知ったJAMSTECのメルマガに登録したことが始まりのようです。
調査船の洋上から質問を募集してたので、何気なくメールを送ってみたら普通に個人的に返信されてきて驚いたとのこと。「一般人との距離が近い」「変な組織」と思ったそうです。
ワ~カ~ル~。
私おち研を始める前はそんなに深海の話を書くキャラじゃなかったんですけど、たまーにネットにJAMSTECの話を書くと一切告知してないような日記まで大体読まれて ∩(´;ヮ;`)∩ ってなっておりましたよね。
当時はJAMSTECって言っても本当に「は?」って感じだったので、深海イベントで顔見知りがいる現況とか未だに不思議な気分です。もっとも言うほど熱心なファンではないんですけど、JAMSTEC通り越してODPグッズ(IODPじゃないやで…)を持ってるくらいには孤独に拝見しておりました。
第二部:小説「海に降る」から現在までの原作者とモデル研究所のあれこれ
【「海に降る」校正中のゲラ】
朱野先生がJAMSTECの取材で言われたという「あなたの好きに書きなさい、どうせ間違ってたって関係者にしか判らないんだ」って話が格好良すぎて痺れるわ。
関係者の方は実際『海に降る』をどう読んだんでしょうね。
でも一般の深海好き目線で見れば綿密に取材してることは十分すぎるほど伝わってくるし、ドキュメンタリーとエンタメの絶妙なバランス感覚が魅力です。
情熱と言う名の力業でねじ込んで形にしていて、プロに対して失礼かも知れないけど巧いなーっていうのが初回の読後感でした。
【 関連記事 】
「海に降る」の膨大な取材量を礼讃する話。おまけ章は朱野先生に「それ物語に入れるか悩んだ話!」って喜んでもらえたので、決して自サイト宣伝まとめじゃないんやで。(反語)
第三部:「海に降る」を楽しむための科学&社会背景
単行本発売の2012年から3年以上が過ぎて、社会を取り巻く環境は本当に変わったと思います。
高井先生も2009年頃から紐付き予算が増えて研究手法の改善が求められるようになった(そして実際すごい速度で効率化が進んでいる)という話をしてました。同時に、外野からは推し量れない姿勢の変化もありそうです。
だとすれば2015年のいま映像化されるにあたってリアリティを左右するのは、「キャスト」や「しんかい6500の実機を使った4K映像」って部分じゃなくて、研究者を取り巻く空気感の演出かも知れません。
人間ドラマって実は時代を経てもそれほど古さが出ませんから、やっぱ視聴者として気になるのは職業観をどう汲み取ってるのかなってところでしょうか。
もちろん原作を知らないで見る場合はまたフォーカルポイントが変わってくるんですけど、高井&朱野両先生の撮影のこぼれ話を拾う限りでは、実際このラインから見るのは面白そうだと思いました。
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質疑応答あれこれ
途中の質疑応答コーナーにて、小さい人(年長さん)からの質問が可愛かったのでご紹介しておきます。
「しんかい6500にのるにはどうしたらいいですか」
- 小さい人
- 「しんかい6500にのるには どうしたらいいですか?」
- 高井先生
- 「研究者として乗りたいの?ちゅーかね、パイロットの方が良いよ。真ん中の窓から外がよく見えるの!」
- 小さい人
- 「あの…けんきゅうしゃがいいです…」
- 高井先生
- 「君ねぇ、そしたら京都大学入って!じゃなきゃ東大かオックスフォード。で、僕のところに来なさい。ね?」
- 小さい人
- 「はい…がんばります…」
会場に満ち溢れる「えげつねぇー!」という声なき声、明らかに身の置き所に困っているお母さん、ニヨニヨするドクター・ケンタカイ。
おちさん会場全体が見渡せる位置に座ってたんですけど、実のところ勝者は小さい人でしたよね。意味が判ってたのか判ってないのか判んないけど、彼は逃げなかった。
「高井先生は何故むやみやたらと人に喧嘩を売るのか」
ハハハ。
「別に喧嘩なんか売ってない」
「学派の垣根を越えて本音を聞くため」
「学者は最後は自分一人。成果を出さなければならないが、ゆえに基準は非常にクリア。だからやっていけるし、そうじゃなければ向いてない。そういうもの。」
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朱野&高井先生を繋いだ窓口の一つ。 |
その他モロモロ
最後にMCの宇山さんより、「手元のカードに感想書い貰えると励みになる」というようなアナウンスがありました。
あー、そういえば前もこんなカードありましたね。あのときは何を書いたっけなぁ…。なんてニコニコしながら手を動かしていると、壇上からマイク越しに響くなる声のありけり。
高井先生「前回おちさんのがいっちばんムカついたわ!!」
わたくし「ファッ!?」(⊙ω⊙)
えーと、基本的に「お慕い申しております」的なことしか書いてないと思うのですが?
都合の悪いことばっか忘れやがって、人のこと金の亡者みたいに書いただろう!
何かの間違いですよ。
本当だっつーの!周りにも散々文句言われたし、今度証拠に持ってくからな!
(゜Д゜)
やー、世界のドクター・ケンタカイは一般聴衆からのメッセージカードを本人以上に精読し、親しい方とコメントを共有し、必要に応じてすぐ取り出せる状態で保管してくださっているのですね。
(・∀・){イイハナシダナ~!
みんなもっとお気に入りの研究所とか科学館にばんばんファンレターとか書いたら良いんじゃないですかね。
出版社だと作家宛にファンレター○通きたら連載が1号伸びるとか言うじゃないですか。そういう感じで任期が延びたり科研費がちょっと増えたり、みたいなっ。
【 お詫び 】
帰宅後に写真フォルダ探したら見つかりました。確かに「金と野望がとぐろを巻いてるダーク=ケン=タッカイ」みたいなこと書いてました。海寄り深くお詫び申し上げます。
( ˘ω˘){でもあれ、最大級の賛辞ですヨ?
おわりに
ドリームの副題は「kai-dan」だったわけですが、「会談」なのか「怪談」なのか、はたまた未来への「階段」なのかはそれぞれの心の中にあるって感じで稿を閉じたいと思います。
\これにて解団/
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スケーリーフットの名前が決まるまで15年もかかった衝撃の理由
今回のアカデミック部門。実は全部持ってったのChenさんだと思う。
前回の深海ドリーム。テレビカメラ入ってるのにgdgd進行でハラハラしましたが、ピンポイントに胸熱でした。
四つの夢-深海ドリーム第二夢 海談 kai-dan 朱野帰子×高井研-|愛とチムニーの日々
【2015-08-14】 高井先生の正確なdisりを教わったのでセリフ回しを直しました。
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