ローマ神話のメルクリウスは水星の神様です。
今日は水星の西方最大離角につき明け方の観望適期だったのですが【注:公開時情報】、残念ながら春霞に埋もれて見ることが出来ませんでした。
さて。水星と言えばマーキュリー、マーキュリーと言えば水銀ですよ。
皆さんは水星が かつて水銀星と呼ばれていたことをご存じでしょうか?
水星と水銀 ふたつのマーキュリー
水星と水銀を和英辞書で引くと、同じ綴りの単語が出てきます。
- mercury
- 【化学】水銀 (金属元素: Hg)
- (気圧計・温度計の)水銀柱
- Mercury
- 【天文】 水星
- 【ローマ神話】 メルクリウス,マーキュリー
一般名詞のとき水銀、固有名詞のとき水星またはメルクリウスと使い分けます。
これら二つのマーキュリーは実に多くの共通点持ってます。それらを改めて一つずつ確認していきましょう。
水銀の特徴
水銀は、良く知られているように常温常圧で液状をなす銀色の金属です。
水銀鉱物 辰砂
自然水銀の多くは辰砂(しんしゃ)という鉱物の形で存在してます。硫化水銀(II)(HgS)という化合物を特徴成分に持つこの石は、別名・賢者の石とも呼ばれ、鮮やかな朱色が目を引く鉱物です。
【左:辰砂・賢者の石 via Andel(PD) 】【右:ドロマイト中に結晶した辰砂 via JJ Harrison(CC BY-SA 3.0)】
水銀化合物の赤色
いわゆるメタリックシルバーの単体水銀とは似ても似つかぬ色をしていますが、赤色を示す水銀化合物は少なくありません。例えば、かつてどこの家庭でも常備されていた消毒用のマーキュロクロム液も含水銀薬で、独特の赤色をしていました。
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「マーキュロ」が水銀を表してます。通称赤チン。(C20H8Br2HgNa2O6)未だに流通してるんですね。ちょっと びっくり。 |
水星の特徴
次に太陽系で最も内側を回る惑星、水星について考えます。
水星の古名 辰星
一方、古来より存在の知られていた水星は かつて辰星と呼ばれていました。中国に端を発するこの思想は、東アジアの広い地域で今もその名残が残っています。
赤い水星
太陽に最も近い位置を回る水星は、本来白く反射する星でありながら時に赤みを帯びたように見えることがあります。これは低空にあるときの太陽や月が赤く見えることでお馴染みのレイリー散乱現象に由来します。
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天体のMercuryと元素mercuryの相似性
水星と水銀。本来全く違うものである二つのモチーフが、いくつもの共通点を持っているのは何故なのでしょう。
水星 | 水銀 | |
---|---|---|
英名 | Mercury | mercury |
漢字名 | 辰星 | 辰砂(原石・化合物名) |
色 | 白~赤 | 赤(硫化水銀(II)) |
…というよりも、元は同じ概念だったのです。かつて水星の「水」は「水銀」のことを指していました。
しかしながら文献を手書きで写すしかなかった時代、うっかり誰かが「銀」の字を抜かして書いてしまったんですね。以来この「太陽に最も近いところを回る灼熱の星」は、なぜか水の星として伝えられるようになってしまったのでした。
自分もあまり字が綺麗なほうではないので、水星の話を見聞きするたびに気をつけなければいけないな、と思います。
おわりに
…というところで本日エイプリールフールでございました。
水星の「水」が指してるのはやっぱり水銀Hgではなく「水(water)」ですので、そこんとこよろしくお願い申し上げます。
列記したうち本当のこと
…とはいえ、これらは丸ごとでっち上げた話ではなく、実際に水星と水銀は多くの共通点を持ってます。以下に挙げたのは本当の話。
間違えやすいポイント
共通点が偶然か必然かは原義を辿ると見えてきます。
ここでメルクリウスや水銀は(龍をモチーフにした)ウロボロスの環とも通じてるので、シルクロードを介して両者が関連づけられた可能性もゼロではありません。しかし「より妥当な説」として水と水銀は別物と考えるのが自然でしょう。
まー、とにかくネタが地味でしたね。でもガチ理系勢に喋ったら結構引っかかったので周囲に物好きが多い人は試してみて下さい。
メルクリウスは口八丁
ちなみにメルクリウスはオリュンポス十二神に数えられる立派な出自ながら、天界きっての大嘘つきとしても有名です。占星術では錬金術と結びつけられることも多い存在ですね。
この辺も4月1日にふさわしい人選(?)と言えるでしょう。
あと、今日が水星の西方最大離角ってのも本当【注:公開時情報】ですから、これから2~3日 明け方の東の空で張ってれば、本物の水星を見られますよん。
それではまた。(^^
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