東京お台場の「日本科学未来館(通称・未来館)が開館15周年を迎え、常設展示が大幅に刷新されました。
「オープン以来の大幅リニューアル!」という触れ込みですけど、箱としての基本的な間取りは変わってません。もちろん展示はガラッと変わったんですが、本質的な思想はあまり変わらない印象を受けるというか。いろんな意味で未来館らしいという感じがします。
ただ、注目すべきは防災関連の展示です。地震や火山噴火をはじめとする、自然災害を掘り下げた点は元地学徒として声を大にして叫びたい。
火山記念館など一部の施設を除いて、未来館くらいの規模で自然災害を常設展示する科学館はちょっと珍しいのではないかと思います。
地震学や防災学をわずかばかりでも学んだ者として、胸が一杯になりました。
「100億人でサバイバル」
リニューアルした未来館6つの新展示の中でもひときわ目を引いたのが、ハザードを可視化する展示「100億人でサバイバル」です。
近未来の地球を舞台に、地震・火山噴火・感染症の拡大などが猛威をふるう様子が機械仕掛けで作り込まれています。災害が起こるたびに人を模したドミノ風パネルがバタバタ倒れていく表現は正直「思いきったな」という感じ。
さらに経済活動の方向性で分けたと思われる二つの文化圏があり、その間を病原菌が行き来するという要素もありました。印象としては以前からあった「インターネット物理モデル」のカタカタ感に近いです。
ハザードを示す赤い玉、宇宙から享受する太陽熱、人間活動による二酸化炭素が複雑に絡み合って社会が成り立ってるのだということが実感できるでしょう。
一つ難を言えば、太陽熱と二酸化炭素が人間社会に与える影響が判りにくかった気がしました。
よくよく観察していると、からくりとしては連動していたので「時間あたりのエネルギー量」を見せちゃっても良かったんじゃないかな。スリットに歯車1つ足せば実現できそうです。
いずれにせよ噴火や地震の驚異を多角的に感じられる良展示でした。自然災害には大小の波があること、一気に来ると壊滅的な被害が起こりうること、そのためには何を備えるべきかを考えさせられます。
映像で見る災害史
周囲のついたてには穴があいていて、のぞき穴形式で過去の映像資料などが閲覧できます。ちょっと地味な展示形式を取ってるのはトラウマ対策でしょうか。
津波などの映像には一応配慮がありますが、見たらいろいろ思い出しちゃいそうな人は注意書きに気をつけながら見て下さい。
リアルタイム感震計と災害データベース
奥の一角に、過去の災害データを再生できるモニタがあります。そこに熊本地震2つのデータが両方とも入ってました。
それぞれの地震波が示す伝播の過程は全く性質が異なっていて、思わず見入ってしまいます。特に地震発生のマイナス時間から表示されるのが目を引きました。
災害発生から一週間と待たずに整備されたその背景を想像するだに、毛利館長を初めとする未来館スタッフの本気が伝わってきます。
海に面したお台場という立地も含めて、多くの人に見て欲しいですね。
未来館ドームシアター「9次元からきた男」
超弦理論によって支えられる世界観をストーリー仕立てにした3D映像作品。サスペンス調のストーリーは、ドームシアター特有の暗さと相まって不穏な感じが漂います。
想定観客は「Newton誌の物理特集であらすじが追える」くらい。「CERN、KEK、クォーク、4次元」あたりの単語に反応できれば大丈夫だと思います。素粒子論に興味がある人にとっては知識の繋がりを感じる筋書きでしたし、もっと詳しい人が観たら違う発見もありそうです。
そういう意味ではかなりエッジな内容なので、予備知識ゼロだと割と戸惑うかも知れません。
4次元以上の表現については割と雰囲気重視だったので、正直なことを言えば、もうちょっと脳内積分する感じのイメージ映像が入ってても良かったように思います。私たちのグループは終演後にあれこれ感想を言い合ってましたが、全体的には面食らった感じの人が多かったように見えました。
ただ、関係者のコメントを見てると「映像のダイナミックさを感じてくれればそれで良い」みたいです。全く予備知識がなくても映像の迫力と浮遊感のある後味は感じられるような造りでした。
味わい的にはフランス映画みたいな雰囲気もありました。座席はそれほど数がないので、事前にWeb予約しておくのがオススメです。
9次元からきた男|日本科学未来館
未来館にある超弦理論モチーフを探そう
【本章追記:2016/06/28】「9次元からきた男」とセットで、未来館に散りばめられた関連もチーフを探すのもオススメです。
未来館7階のレストラン「Miraikan Kitchen」にもコラボメニューがあって、「9次元からきた男そうめん(正式なメニュー名は忘れた)」が私的にかなりツボでした。
あと忘れちゃいけないのが「超ひも」の除き穴ですね。
未来館広しといえども、関連展示って多分これだけなんじゃないかなぁ。扱いとしては超地味なので、ほとんどの人が気付かずスルーしてると思います。カミオカンデ展示のところにあります(…って書いても見過ごされるレベルだけど)。
もっとも、私自身も閉じた弦と開いた弦の違いについて正直ちゃんと判ってないです。
とりあえず、カラビ-ヤウ空間を模した「ボール状の何か」を作ったらストレス発散ニギニギとか知育玩具にでもなりそうだなと思いました。(⊙Д⊙)
オーボール フレックシーループ |
その他の新展示
未来館の象徴とも言えるジオコスモス周辺も、地味に色々変わってました。タッチパネルで切り替わるデータ集が小粒ながら結構面白かったです。
生のデータをいろいろ眺めてると、物理としてのグローブと経済圏としてのグローブの時間軸のずれを感じたりできます。
「細胞たち」
今までASIMOシアターだったところが少し移動して、再生医療に関する展示に変わってました。とりわけ幹細胞を取り上げており、こちらもタイムリーな話題です。
奥のパネル展示は自由に閲覧できますが、時間があれば手前のアトラクションから順に見ると展示内容への感じ方が変わるかも知れません。
再生医療に関する具体的な問題点をショートストーリーで示しているのですが、絶妙な設定で賛否を考えさせる仕組みです。
ただ、映像に飽きて途中でブースが無人になってもリセットできないっぽいのが残念。離席したらどんどん次の人と入れ替わるようにすれば待ち時間がかなり短縮すると思うので、ぜひ改善して頂きたいところです。
Miraikanノート
展示と連動したスマホアプリも用意されてるので、未来館でどの展示から見たら良いか迷ってしまう人には良いガイドになりそうです。
ただマルチリンガル対応ということもあってデータサイズが相当あります。実を言うと私は試してないので使った人はどんな感じか教えて下さい。(^^;
Miraikanノート | 日本科学未来館 (Miraikan)
企画展GAME ON
ちなみに企画展であるGAME ON展は、稀少ロットの実機が見られるなどして楽しめました。
オールドゲームファンと言うほど詳しくないんですけど、歳の割には騒ぐやで。
解説少なめで残念
現存数の少ない筐体とか裏話てんこ盛りの展示もいろいろあったのに、解説がほとんどなくて割と残念。出来ることなら詳しい人と行くと良いです。
ただし図録は読み応えのある内容でした。企画展いってなくても読み物として楽しめると思います。
ゲームってなんでおもしろい? |
おわりに
未来館に行こう行こうと思ってずいぶん前からチケットを押さえてたんですけど、まさかの「リニューアル記念・常設展無料キャンペーン」に突っ込む形で遊びに行くことになりました。(^^;
土曜と言うこともあって超絶芋洗いだろうなぁと思ったのに、中高生の団体を多めに見かける程度で思いっきり普通に回れましたよね。嬉しくもあり悲しくもあり。
常設展のオススメはもちろん「100億人でサバイバル」ですが、以前の展示を知ってる人だとより楽しめる部分も多かったように思います。
初めてさんも常連さんも是非!(・∀・)/
【 更新履歴等 】
2016/04/30 初稿発表
2016/06/28 9次元関連展示の追記と写真を足しました
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